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アナリストの視点(ファンド)

プロが決める資産配分でも上昇から急落までをうまく乗り切ったのは2割程度

2015-09-10

8月は国内外の株式を中心に9割超のカテゴリーが下落

 8月のファンドの月間騰落率をモーニングスターインデックスでみると、全ファンド平均で5.73%の下落となった。カテゴリー別でみると、ブル・ベア型を除く68カテゴリーのうち、上昇したのはヘッジありのオセアニア債、国内債券の中長期債及び短期債の3カテゴリーのみ。その他の65カテゴリーで下落しており、中国やブラジルなどの新興国株式の4カテゴリーが2ケタを超える下落となったほか、国内大型ブレンドも8%超の下落となった。下落率トップ10は全て株式が占めており、国内外の株価の下落と新興国通貨を中心とした通貨安・円高が全体のリターンを押し下げた(図表1参照)。

図表1:モーニングスターインデックスの月間騰落率ランキング(下位)

図表1:モーニングスターインデックスの月間騰落率ランキング(下位)

※ 2015年8月末時点
※ モーニングスターインデックス(単純)に基づく、図表記載の名称は略称
出所:モーニングスター作成

調整の値幅としては十分も、年内に再下落の可能性残す

 8月の5.73%は、集計可能な2000年以降では過去11番目の下落率の高さとなった。当該期間内に、全ファンドの月間の平均下落率が10%を超えたのは2008年の9月と10月しかなく、9%超の下落も同年1月のみ。月間で全ファンド平均が10%程度下落するのは、多くの資産の急落に円高が重なる百年に一度の危機下での異常事態といえ、2015年8月の6%に迫る下落率は月間の「値幅」としてはかなりの水準といえる。

 一方で、その理由や背景は様々とはいえ、月間で5%以上下落した月は、集計可能な187ヵ月中18ヵ月もあった(図表2参照)。つまり、単純計算では1年に1回以上の頻度で5%程度の下落は起きていることになり、価格が下落するたびに過剰に反応するのは適切とは言い難い。なお、過去には2ヵ月連続で5%以上下落したケースは4度、翌月は持ち直したものの翌々月に再度5%以上下落したケースも3度あり、今回も8月の急落後に速やかにV字回復を達成できるかは不透明で、本格回復には時間を要する可能性がある。

図表2:全ファンド平均の月間騰落率ランキング(下位)

図表2:全ファンド平均の月間騰落率ランキング(下位)

※ 期間(2000年2月〜2015年8月)
※ 全ファンド平均=モーニングスターオールインデックス(単純)
出所:モーニングスター作成

相場環境が急変しても、運用期間が長いほど良好な運用成績

 では、8月のような急落局面でファンドはうまく対応できたのだろうか。今後も1年に1度程度の頻度で起こるとすれば、急落局面下での対応が長期の運用成績に与える影響も大きいと考えられ、今回はプロが資産配分等を決定するバランス型についてみてみた。2015年8月末時点では約570本のバランス型(※1)が設定されているが、その中から、①同月末時点における純資産額が10億円以上、②同月末までの過去1ヵ月間のトータルリターン%ランク(※2)が50%以内、③同1年間の%ランクが50%以内の3つの条件に基づいて抽出した。②と③は、2015年8月末時点でのバランス型の平均トータルリターンは過去1ヵ月間では4%の下落となっているものの、過去1年間では5%の上昇となっており、急落局面での短期的な対応(結果)だけでなく、上昇局面でも相対的に概ね平均以上の運用成績を維持できたかをみるために条件として加えている。

(※1)国内公募追加型株式投信(確定拠出年金及びファンドラップ専用、ETF等除く)のうち、2015年8月末時点のモーニングスターカテゴリーで「安定」、「安定成長」、「バランス」、「成長」に属するファンド
(※2)カテゴリー内でのファンドのトータルリターンが上位から何%に位置しているかを示すもの、たとえば、あるファンドのトータルリターンが10本中4位であれば%ランクは40%となる

図表3:相対的に優れた運用成績を維持したバランス型の運用期間

図表3:相対的に優れた運用成績を維持したバランス型の運用期間

※ 上記文中内の条件を満たすファンドの本数
出所:モーニングスター作成

 実際に、上記の3つの条件を満たすファンドを抽出してみると、2015年8月末時点では72本と、運用期間が1年以上、かつ、純資産額が10億円以上のファンドの中でも2割強にとどまった。その内訳を運用期間別でみると、10年以上が38本、5年以上が25本と、運用期間が5年以上のファンドが全体の9割弱を占めている(図表3参照)。一方、近年、設定が相次いだリスクコントロール型やフレキシブルアロケーション(機動的に投資比率を変更)型などで3つの条件を満たすファンドはほとんどなかった。前者では、常に下振れを意識して抑制することで上振れも抑えられている、後者では相場環境に応じた適切な資産配分を実施できなかった可能性などが考えられる。

 一期間のデータで全てを表しているとはいえないものの、定められた基本配分比率を堅持するファンドや、これまでの波乱局面を乗り切ってきた長期の運用実績を有するファンドの方が優れた運用成績を収めている点は注目される。バランス型は、リスクコントロール型などの登場で2015年8月まで15ヵ月連続の資金流入超過と、人気が復活傾向にあるものの、ファンドが示しているコンセプトが本当に実践されているか、相対的に劣後していないかなどの点について、ファンドごとの差異が出やすい急落局面の時こそ改めて確認してみる必要がある。

(吉田 誠)

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