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アナリストの視点(ファンド)

“アクティブVSパッシブ”新手法で検証、コストが明暗

2015-09-24

 市場で注目を集めた9月17日のFOMC(米連邦公開市場委員会)では利上げが見送られ、今後は10月30日の日銀金融政策決定会合での決定に焦点が移りそうだ。ETF(上場投資信託)の買い増しなど追加金融緩和への期待は根強い。日本株が再び上昇基調に転じるきっかけとなる可能性もあり、国内株式ファンドへの投資を検討している方も多いだろう。

 ファンド選びで重要となるのが、ベンチマークを上回る運用成績を目指すアクティブファンドを選ぶのか、ベンチマークへの連動を目指すパッシブファンドを選ぶのかだ。アクティブファンドはパッシブファンドに比べて信託報酬が高く、コストがパフォーマンスの押し下げ要因となることから、長期で見ればベンチマークに劣後しやすいという見方もある。今回、米モーニングスターが6月に発表した新たな分析手法を参考に、国内株式アクティブファンドの相対パフォーマンスを検証した。

ベンチマークではなく、パッシブファンドの平均リターンと比較

 検証結果を紹介する前に、米モーニングスターが「アクティブ/パッシブバロメーター」と題したレポートで発表した分析手法について説明する。これは、米国籍のオープンエンドファンド(ETF含む)を対象に、パッシブファンドの平均リターンに対して、どのくらいのアクティブファンドが上回ったかを「サクセスレート」という指標として数値化したものだ(図表1)。サクセスレートは「勝率」と言い換えることもできるが、この数値が高い方が、パッシブファンドの平均リターンに勝ったアクティブファンドの数が多いことになる。

図表1:「サクセスレート」の計算方法

図表1:「サクセスレート」の計算方法

出所:モーニングスター作成

 一般的にアクティブファンドの優劣を決める際は、米国はS&P500種株価指数、日本はTOPIX(東証株価指数)などのベンチマークを用いるが、サクセスレートの特徴はこうしたベンチマークではなく、パッシブファンドの平均リターンを用いる点だ。これは、信託報酬がかかるアクティブファンドと信託報酬がかからないベンチマークを比較するよりも、実際に存在し、コスト負担があるパッシブファンドの平均リターンを比較した方が、実態に近いという考えに基づく。

 また、サクセスレート計算の際に、ユニバースとして償還済みファンドを含んでいる点もポイントとなる。償還したファンドには、パフォーマンス低迷で純資産残高が伸びず、存続できなかったファンドが多く含まれる可能性が高い。したがって、償還済みファンドを除いて集計すると、運用がうまくいき存続したファンドのみが対象となり、結果がアクティブファンドにとってよく見えやすくなる。こうした「サバイバーシップバイアス」と呼ばれるバイアスを排除するため、サクセスレートはユニバースに償還済みファンドを含み、償還済みファンドはパッシブファンドの平均リターンを下回ったとみなして算出している。

アクティブのサクセスレートは全期間で20〜30%台、低コストなら30〜60%台に改善

 日本でのサクセスレート算出においては、モーニングスターカテゴリー「国内株式・大型ブレンド」に属するファンドのうち、投信協会の分類でアクティブ運用型に分類されるファンドを対象とした。一方、パッシブファンドのリターン平均は、米国の算出方法に厳密に従えば「国内株式・大型ブレンド」に属するパッシブファンド全体の平均を使用すべきだが、今回は簡易的に、同カテゴリーに属するファンドのうち投信協会の分類でTOPIX連動型に分類されるファンド(ETF含む)の平均値を使用した。

 算出結果をまとめたのが図表2だ。過去1年、3年、5年、10年の全期間のパフォーマンスで、サクセスレートは20%〜30%台にとどまり、短期・長期にかかわらずアクティブファンドは劣勢となっている。本来、アクティブファンドは特に上昇相場で超過収益を獲得することが期待されるが、2012年11月以降のアベノミクスによる日本株活況にもかかわらず、過去1年や3年だけをみてもパッシブが優位だ。償還済みファンドの数が特に長期で見た場合に多いことも無視できない。特に過去5年においては、5年前に276本あったファンドのうち約2割に相当する50本が2015年8月末時点で償還済みとなっており、パッシブファンドに勝つ以前に存続すらできない状況。全ての期間でこうした償還済みファンドの存在がサクセスレートの低下要因となっている。

図表2:「国内株式・大型ブレンド」に属するアクティブファンドのサクセスレート

  対象ファンド数(カッコ内は償還済みファンドの数) 対象ファンド全体のサクセスレート 低コストファンドのサクセスレート 高コストファンドのサクセスレート
1年 205(9) 26% 39% 13%
3年 221(25) 33% 43% 21%
5年 276(50) 39% 44% 33%
10年 203(32) 32% 62% 25%

※ 国内公募追加型株式投信(通貨選択型ファンド除く、ETF、確定拠出年金専用、ラップ口座専用ファンド、償還済みファンド含む)のうち、モーニングスターカテゴリー「国内株式・大型ブレンド」に属するアクティブファンドが対象
※ パフォーマンスは税引前分配金再投資ベース
※ 2015年8月末時点
出所:モーニングスター作成

 また、対象ファンドのうち、低コスト上位25%のアクティブファンドを「低コストファンドグループ」、高コスト上位25%のアクティブファンドを「高コストファンドグループ」として、それぞれのグループ内でサクセスレートを見たところ、全ての期間で低コストファンドグループのサクセスレートが全体のサクセスレートを上回る一方、高コストファンドグループのサクセスレートは全体のサクセスレートを下回っており、コストの高低で明暗が分かれた。要するに、全体としてアクティブファンドは劣勢となったものの、低コストのアクティブファンドを選ぶことにより、パッシブファンドに勝つ可能性が高くなるということだ。例えば、1年のサクセスレートを見ると、低コストファンドは39%と、全体を上回り、高コストファンドに比べて3倍も高い。また、10年のサクセスレートは低コストファンドが62%と、高コストファンドの2.5倍、全体の2倍近くなっており、長期で特に低コストであることの優位性が発揮されている。

 なお、今回はアクティブファンドのリターンを、TOPIX連動型ファンドの平均リターンと比べたが、同平均はすべての期間で、TOPIX自体を上回っている。例えば、過去10年ではTOPIXのリターン(年率)が1.92%にとどまるのに対して、TOPIX連動型ファンドの平均リターン(同)は3.35%となった。コストがかかる分、TOPIX連動型ファンドの平均リターンは押し下げられるが、一方で、TOPIXが配当を含まないのに対してTOPIX連動型ファンドは配当要因でベンチマークより上ブレする傾向がある。つまり、単純にTOPIXをベンチマークとして比較するよりも、TOPIX連動型ファンドの平均リターンと比べる方がアクティブファンドにとって上回ることは難しくなっている。

米国でもパッシブ優位、低コストのアクティブ優位は変わらず

 米国の結果(2014年12月末基準)を見ても、「米国株式・大型ブレンド」のサクセスレートは過去1年、3年、5年、10年がそれぞれ32.7%、35.6%、25.1%、21.6%となっており、日本と同様に、すべての期間でアクティブファンドがパッシブファンドに劣後する傾向が見られた。さらに、10年のサクセスレートは低コストファンドグループが29.7%、高コストファンドグループが9.9%と、こちらも同じく低コストファンドの優位性が目立っている。日米ともに、ファンド選びにおけるコストの重要性が改めて示されたと言えよう。

(坂本 浩明)

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