fund_beginer fund_search fund_look



アナリストの視点(ファンド)

ラップ型ファンド“戦国時代”―人気と実力は?

2015-11-12

 中国の景気減速や米国の利上げ接近などをめぐり金融市場の先行き不透明感が高まる中、リスク分散の手段として「ラップ型ファンド」が投資家の関心を集めている。ラップ型ファンドとは複数の資産に分散投資するバランス型ファンドの一種で、積極的にリターンを狙う「成長型」やリスクを抑えた「安定型」など複数のコースが用意されているのが一般的だ。最低投資額が数百万円と高額な富裕層向けの「ラップ口座」のように投資家1人1人のニーズに合わせた運用を行うといった柔軟性はないものの、ファンドなので少額から自分のリスク許容度にあったポートフォリオを選ぶことができる。運用会社各社が相次ぎラップ型ファンドを設定し“戦国時代”の様相を呈する中、どのような傾向が見られるのか。資金動向やパフォーマンスなどについてQ&A形式でまとめた(なお、以下ではモーニングスターカテゴリーでバランス型ファンドのうち、ファンド名または愛称に「ラップ」を含むファンドをラップ型ファンドとみなしている)。

Q:どのくらいの資金が流入しているのか?

A:ラップ型ファンドの純資金流出入動向を見ると、2013年2月以降、33カ月連続で流入超過を継続している(図表1)。特に2014年後半から流入基調が強まり、2015年3月にはピークとなる866億円の流入超過を記録。足元ではやや鈍化しているものの、それでも200億円弱の流入超過をキープしている。本数も増加傾向にあり、2015年10月末時点で54本と、1年前に比べて3倍以上に急増した。もっとも、純資産総額は同月末末時点で9,472億円と、バランス型ファンド全体の約18%にとどまる。また、純資産額上位3ファンド「コア投資戦略ファンド(成長型)、「コア投資戦略ファンド(安定型)」、「スマート・クオリティ・オープン(安定型)」でラップ型ファンド全体の半分を占めており、一部のファンドに人気が集中する傾向がある。

図表1:ラップ型ファンドの純資金流出入額と本数の推移

図表1:ラップ型ファンドの純資金流出入額と本数の推移

※ 国内公募追加型株式投信(ETF、確定拠出年金専用、ラップ口座専用ファンド除く)のうち、ラップ型ファンドが対象
※ 2015年10月は推計値
出所:モーニングスター作成

Q:成長や安定など、どのようなタイプが人気なのか?

A:ラップ型ファンドは一般的に、投資家のリスク許容度に応じてコースが選べる点が特徴だが、バランス型ファンド全体と比べると、相対的にリスクを抑えたファンドのシェアが高くなっている。モーニングスターではバランス型ファンドをリスク資産の組み入れ比率(株式とREITの合計比率)に応じて4つのカテゴリーで分類している(「成長」はリスク資産の組み入れ比率が75%以上、「バランス」は同比率が50%以上75%未満、「安定成長」は同比率が25%以上50%未満、「安定」は同比率が25%未満)。図表2を見ると、4カテゴリーの合計では、全体では最もリスクが低い「安定」の純資産総額シェアが16%にとどまるのに対して、ラップ型ファンドでは同カテゴリーのシェアは33%と、倍近くとなっており、「安定成長」の42%に次いで高い。一般的なバランス型ファンドに比べて、ラップ型ファンドは安全志向の投資家を中心に人気を集めていると言える。

図表2:バランス型ファンド全体とラップ型ファンドのカテゴリー別純資産総額シェア

図表2:バランス型ファンド全体とラップ型ファンドのカテゴリー別純資産総額シェア

※ 2015年10月末時点
出所:モーニングスター作成

Q:肝心のパフォーマンスは?

A:ラップ型ファンドの約7割が設定から1年未満(2015年10月末時点)と、中長期のパフォーマンスを判断するのは時期尚早だが、直近の世界同時株安で実際に分散効果が発揮されたのかについて関心は高いと思われる。そこで、参考として直近3カ月(2105年7月末〜10月末)のラップ型ファンドのトータルリターンの平均を、バランス型ファンド全体の平均と比べたのが図表3だ。

図表3:バランス型ファンド全体とラップ型ファンドの平均リターン(2015年7月末〜10月末)

図表3:バランス型ファンド全体とラップ型ファンドの平均リターン(2015年7月末〜10月末)

※ バランス型ファンド全体の平均リターンはモーニングスターインデックス(単純)に基づく
出所:モーニングスター作成

 世界の株式市場は8月、9月に急速に下落した後、10月は大幅に反発しており、下げ相場だけでなく上げ相場のパフォーマンスも考慮するため、同期間で測定した。カテゴリー別で見ると、ラップ型ファンドはリスク資産の比率が低めの「安定」と「安定成長」でそれぞれバランス型ファンド全体の平均より1.35%、1.25%いずれも下落率を低くとどめており、直近の波乱相場では、投資家の期待に応えたと言えそうだ。一方で、「バランス」では目立った差が見られず、「成長」に至ってはバランス型ファンド全体の平均に劣後している。

 なお、ラップ型ファンドの信託報酬等(税込)は1.61%と、バランス型ファンド全体の信託報酬等を0.11%上回っており、やや割高だ。コストに見合ったパフォーマンスを達成しているのか見極めるようにしたい。

(坂本 浩明)

「アナリストの視点」よく読まれている記事(過去1週間)

アナリストの視点はRSSでも配信しています

バックナンバー