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アナリストの視点(ファンド)

アクティブ最後の砦「アロケーション」さえも揺らすパッシブの止まらぬ勢い

2016-04-28

パッシブ化進む米国でも、アロケーションのパッシブ比率は5%以下だが

 これまで株式や債券ファンドを中心に進んできた「パッシブ化(※1)」の勢いが、アロケーション(バランス型)にも影響を及ぼす気配が見えはじめた。2016年3月末時点におけるETFを含めた米国籍ファンド(※2)全体の純資産残高は約14兆ドル(約16百兆円)となっているが、USカテゴリー(大分類)別シェアでは、第1位の米国株は42%、第2位の課税債券は21%、第3位のグローバル株式は16%となっており、第4位のアロケーションの8%を加えると、4カテゴリーで全体の9割弱を占める。

(※1)パッシブファンドへの資金流入が続くことで、全体に占めるアクティブファンドの比率が低下する一方で、パッシブファンドの比率が上昇する現象
(※2)米国籍オープンエンドファンド(ETF含む、MMF等除く)、以下、この文章内、図表で同一

 その4カテゴリーについて、パッシブファンド比率(※3)をみると、2016年3月末時点では米国株式が42%、海外株式が36%、課税債券が27%となっているものの、アロケーションは5%にとどまる(図表1参照)。5年前との比較でも、米国株式が13%上昇したほか、海外株式、課税債券はいずれも9%以上上昇したのに対し、アロケーションは2%しか上昇していない。

(※3)全ファンドにおけるパッシブファンドの比率、純資産残高ベース、以下、この文章内、図表で同一

図表1:米国籍ファンドのカテゴリー別パッシブとアクティブの比率

図表1:米国籍ファンドのカテゴリー別パッシブとアクティブの比率

※ 2016年3月末時点
※ カテゴリー=USカテゴリー(大分類)
出所:モーニングスター作成

第1Qには、期間、金額ともに「金融危機」時相当の流出を記録

 これまでは株式や債券ほどはパッシブ比率が上昇していないアロケーションだが、実は足元では「アクティブ離れ」が急速に進んでいる。アロケーションのうち、アクティブファンドの累計純資金流出入額(Q<四半期>ベース)では、2016年第1Q(1−3月期)は147億ドルの流出超過と、集計可能な1993年以降では過去5番目の流出規模となった(図表2参照)。2015年第3Q(7−9月期)は過去4番目、同第4Q(10−12月期)は過去2番目の流出規模となっており、流出超過は3Q連続、かつ累計額は484億ドルに達する。

 ちなみに、過去にアロケーションのアクティブファンドが3Q以上連続で流出超過となったのは、ITバブル崩壊前後(2000年第4Qまでの10Q連続)、世界的な金融危機直下(2009年第1Qまでの3Q連続)の2度しかない。いずれの時期も、特定の業界の株価しか上昇しない、もしくはあらゆる資産価格の急落によって、分散投資の効果さえ一時的には疑問視された時期だ。また、その期間中の累計額も、前者が427億ドル、後者が491億ドルとなっており、今回は既にITバブル崩壊前後を上回り、金融危機時と概ね同水準で、2016年第2Q(4−6月期)の動向によっては過去最高を更新する可能性もある。

図表2:米国籍アロケーションファンドの純資金流出入額の推移(Qベース)

図表2:米国籍アロケーションファンドの純資金流出入額の推移(Qベース)

※ アロケーションファンド=USカテゴリー「アロケーション」に属するファンド
※ 期間:2006年第2Qから2016年第1Q
出所:モーニングスター作成

パッシブの残高は20年で57倍に拡大も、「ゴール」はまだまだ先か

 アロケーションのパッシブ比率が大きく上昇しなかったもう一つの理由として、株式や債券のように同一カテゴリー内でのアクティブからパッシブへの大きな資金シフトが起きていない点があげられる。実際に、アロケーションの累計純資金流出入額(Qベース)をみると、前述したようにアクティブファンドは2016年第1Qまでの3Qの全てで100億ドルを超える記録的な流出超過となったものの、同時期のパッシブファンドは、2Qで流入超過、1Qで流出超過となったが、金額はいずれも±3億ドル以内にとどまる。また、2016年3月末時点におけるアロケーションファンド全体の純資産額ランキングでみても、パッシブファンドで上位40位内にランクインしたのは、バンガードが運用する第10位の「Vanguard Balanced Index Fund」だけだ。

 今後もアロケーションのアクティブファンドから資金流出が続くようであれば、アロケーションのパッシブ比率の上昇には直接は寄与しにくいものの、ETFなどのパッシブファンドを通じて、全体のパッシブ比率を押し上げていくことなると推測される。米国ではファンドを購入する際に、約8割の個人投資家が何かしらの形でファイナンシャルアドバイザーを利用しており、ETFを含めたパッシブファンドを中心に投資家ごとに独自の低コストのポートフォリオを組成するという形が定着しつつあるためだ。では、アロケーションさえも巻き込んで一段と進むパッシブ比率の上昇に限界はあるのだろうか。2016年3月末時点の米国籍パッシブファンドの残高は約5兆ドルと、過去20年間で既に57倍に拡大。同月末時点のパッシブ比率は33%と、過去20年で29%も上昇している(図表3参照)。

図表3:米国籍ファンド全体のパッシブ比率の推移

図表3:米国籍ファンド全体のパッシブ比率の推移

※ 期間:1993年2月〜2016年3月の各月末時点
出所:モーニングスター作成

 ハイピッチで進むパッシブ比率の上昇に対しては、「行き過ぎ」や「短期的な人気の過熱」であり、早々に鈍化するとの見方も根強いが、足元でも2016年3月までは11ヵ月連続でアクティブファンドは流出超過、パッシブファンドは流入超過となっており、その勢いに陰りはみられない。また、そもそも「パッシブ化」がこれ以上進むと、市場の価格形成機能が低下するなどの批判もあるが、少なくとも投資家の立場の側がそうした点を重視、もしくは配慮して、自らの投資スタンスを決定・変更するとは考え難い。むしろ、一度でも低コストに慣れ親しんだ消費者(ファンドの場合は投資家)が改めて高コストを許容するには心理的なハードルがかなり上がるという点においては、ファンドも他の商品と異ならないと考えるべきで、コストも運用成績も「中間的」なファンドに対する投資家の目線は一層厳しくなるだろう。さらに、今後はアクティブ対パッシブでどちらが優位かといった単純な図式だけではなく、低コストの限界の追及、パッシブの新たな活用方法、新商品の開発などへと競争の場がシフトし、それらが米国だけでなく他国へも波及することが予想される中、ファンドを調査・評価する側もそうした変化への対応力が問われていくことになる。

(吉田 誠)

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