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アナリストの視点(ファンド)

ベンチマークを設定しているアクティブファンドは全体の何割?

2016-07-28

 投資信託(ファンド)の運用成績の良し悪しを計るには「ベンチマーク」と比較する方法が一般的である。例えば、日本株を投資対象とするファンドでは「TOPIX(東証株価指数)」や「日経225(日経平均株価)」といった代表的な国内株価指数をベンチマークに設定しているものも多く、月次レポートや運用報告書などでベンチマーク対比の運用成績を確認することができる。前提として、市場平均を上回るリターンを目指すアクティブファンドでは、ベンチマークに対してどの程度の超過収益を獲得できたかがポイントとなり、ベンチマークに連動したリターンを目指すインデックスファンドでは、ベンチマークに追随し、大きな乖離がなければ良しとされる。ここで”追随”と表現したのは、コストや現金保有などの要因でインデックスファンドとベンチマークの値動きは一致しないためである。インデックスファンドではその性質上、ベンチマークを設定する必要があるが、アクティブファンドでは任意であり、ファンドのタイプによってその位置づけは異なる。

アクティブファンド全体では2割強、日本株アクティブでも3割程度

 ファンドのベンチマークは目論見書で確認することができる。ベンチマークを設定しているファンドでは、「ファンドの特色」の欄などにベンチマーク名が記載されている。一方、ベンチマークを設定していないファンドでは、「年間収益率の推移」の図の注釈の欄に「※当ファンドにはベンチマークがありません。」などと記述されている。実は後者のケースが非常に多い。

 そこで、モーニングスターがアクティブファンド(注1)約4,000本を対象にベンチマークの有無を集計したところ、ベンチマークを設定しているファンドは約900本(約23%)という結果であった。また、日本株アクティブファンド(注2)約600本に限っても、約190本(約32%)に留まった(図表1)。

注1:国内公募追加型株式投資信託(確定拠出年金向け及びラップ口座専用、ETF等除く)が対象におけるアクティブファンド(投資信託協会の分類に基づく)が対象。以降、文中及び図表内でも同様。
注2:注1のうちモーニングスター大分類で国内株式型に属するファンド。以降、文中及び図表内でも同様。

図表1:アクティブファンドにおけるベンチマークの有無

図表1:アクティブファンドにおけるベンチマークの有無

※ 2016年6月末時点
出所:モーニングスター作成

 この結果を少ないと感じる読者も多いだろう。では何故、ベンチマークを設定しないファンドがあるのだろうか。よくある言い分としては、『ポートフォリオ構築プロセスにおいて銘柄ユニバースや国別・業種別・通貨別配分などに関して特定の指数を参考にしていないため、妥当なベンチマークが存在しない』というものである。と言うのも、アクティブファンドには、特定の指数の組入銘柄やその比率、業種等の配分をベースに、市場環境の見通しなどに応じて特定の銘柄や業種等の配分をオーバーウェイト(或いはアンダーウェイト、除外)することで超過収益を追求するタイプと、そうでない(前述『』内のような)タイプがあるからだ。ただし、後者のタイプでも、運用報告書内では“参考指数”を設定していたり、実務上はパフォーマンス評価やリスク管理のために社内ベンチマークを設定しているのがほとんどであり、筆者は「特殊なファンドを除き、ほぼ全てのファンドがベンチマークを設定して然るべき」と考える。

 また、ベンチマークを設定することで、指数の提供元である東京証券取引所やMSCIなどへ商標権使用料も発生する。これはETF(上場投資信託)のように既に低コスト化が進んだ商品にとっては大きな負担となりうるが、本文で述べているようなアクティブファンドにおいてはこの限りではない。余談にはなるが、インデックス運用で米国最大手のバンガードは、経費率(保有コスト)を引き下げることなどを目的に昨年より一部のETFでベンチマークを変更する試みを実施している。

勝負の前から逃げ腰でよいのか

 ただし、仮にベンチマークを設定しても、株式ファンドやリートファンドの場合に配当込み指数を用いるか否かで投資家が受ける印象が大きく変わりかねないという問題もある。私たちが普段目にするような株価指数は株価や時価総額を基に算出されるのが一般的で、構成銘柄の配当落ちが株価指数の値下がり要因となる。一方、ファンドでは保有銘柄の配当を受け取るため、基準価額の値下がり要因とならない。

 例として、TOPIXをベンチマークに設定している日本株アクティブファンド及び同指数の2016年6月末時点における過去3年間のトータルリターン(年率)を並べて比較してみた(図表2)。

図表2:「TOPIX」をベンチマークとする日本株アクティブファンドの3年リターン比較

図表2:「TOPIX」をベンチマークとする日本株アクティブファンドの3年リターン比較

※ 2016年6月末時点
※ 同時点で3年以上の運用実績を有し、TOPIXをベンチマークとする日本株アクティブファンドが対象
出所:モーニングスター作成

 一般的にアクティブファンドの多くは市場平均に勝てないと言われるが、今回の例では実に8割(86本中72本)のファンドがTOPIXに勝利した。ちなみに第1位のAファンドは新興企業の株式を主要投資対象とするファンドで、過去3年間のトータルリターン(年率)は21.82%と、TOPIXを18.63%上回った。一方、最下位のBファンドはTOPIXを1.97%下回った。ただし、これらのファンドが仮に「TOPIX(配当込み)」をベンチマークとしていた場合、勝率は5割以下(86本中41本)まで低下する。

 逆に、TOPIX(配当込み)をベンチマークに設定している日本株アクティブファンド及び同指数の2016年6月末時点における過去3年間のトータルリターン(同)を並べて比較してみた(図表3)。

図表3:「TOPIX(配当込み)」をベンチマークとする日本株アクティブファンドの3年リターン比較

図表3:「TOPIX(配当込み)」をベンチマークとする日本株アクティブファンドの3年リターン比較

※ 2016年6月末時点
※ 同時点で3年以上の運用実績を有し、TOPIX(配当込み)をベンチマークとする日本株アクティブファンドが対象
出所:モーニングスター作成

 すると、ベンチマークを上回ったファンドは4割(25本中10本)という結果であった。ただし、これらのファンドが仮に「TOPIX」をベンチマークとしていた場合、勝率は約5割以上(25本中13本)まで上昇する。そもそも「配当込み指数」をベンチマークに設定するのが少数派であることにもお気づきだろう。

 いずれの例もアベノミクス相場開始後の3年間で検証しており、「本来、上昇局面で強みを発揮するアクティブファンドの方が有利」と考える読者は、勝率そのものの数値については無視していただいて構わない。今回のケースではTOPIX(配当込み)とTOPIXのリターン差は2.06%であった。そして、モーニングスターの集計では日本株アクティブファンドの信託報酬等(監査費用等含む、税込)の平均は1.58%である(2016年6月末時点)。つまり、TOPIXをベンチマークに設定している場合、ファンドはコストを差し引いた上でも0.5%近いハンデを持っていることになる。個人投資家にも馴染みがあるなどの理由で配当”抜き”指数をベンチマークに設定し、市場平均に勝ったと運用報告しているファンドも少なくないように感じる。

(守谷 清貴)

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