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アナリストの視点(ファンド)

拡大するファンドラップ、コスト面で優位に立ったのは?

2017-03-23

 「ファンドラップ」の市場拡大が続いている。「ファンドラップ」とは、銀行や証券会社が提供する投資一任運用サービスの一つ。投資家と金融機関が投資一任契約を結んだ後、投資家のリスクに対する考え方や投資目的などを踏まえて、金融機関の専門家が投資家の希望に沿った複数の投信を組み合わせて資産を運用するサービスである。金融機関は定期的に運用報告書を提供し、資産配分の見直しによるポートフォリオの組み替えも行うなど、きめの細かいサービスを提供する。

 なお、類似したものとして、「ラップ口座」と「ラップ型ファンド」がある。「ラップ口座」は、「ファンドラップ」と同じく、投資家が金融機関と投資一任契約を結び、投資対象、投資時期、投資判断など運用・管理にかかるサービスを一括して受けられるサービス。ラップ口座のうち投資信託で運用するのが「ファンドラップ」である。「ラップ型ファンド」は、複数の資産に分散投資するバランス型ファンド(公募投信)の一種で、積極的にリターンを狙う「成長型」やリスクを抑えた「安定型」など複数のコースがある。

ファンドラップ専用ファンドの残高は直近5年で約15倍に

 日本投資顧問業協会の調査によると、ファンドラップの契約件数と契約資産残高は、2013年から2015年にかけて大幅に増加。2016年も増加が続き、同年9月末時点で、契約件数は52万8,046件、契約金額は6兆197億円となった。約5年前の11年3月末時点と比べると、契約件数は12倍、契約資産額は10倍超に拡大している。また、モーニングスターの調べでも、ファンドラップ専用ファンドの2017年2月末時点の残高は、5兆3,887億円と約5年前の11年末時点(3,629億円)の約15倍となった(図表1)。

図表1:ファンドラップ専用ファンドの本数・残高推移

図表1:ファンドラップ専用ファンドの本数・残高推移

※ 2017年は2月末時点
出所:モーニングスター作成

「一任契約」であるだけに事前のコスト確認は必須

 ファンドラップは、運用を行うために必要な権限を金融機関に委任し、投資判断の全部を一任する。事前に投資の目的や方針を確認する機会があるほか、金融機関から定期的に運用報告を受けるものの、基本的には一任サービスである。投資家からすれば、専門家に任せることから、リスクは比較的少なく、時間面を含めた労力も少なくて済むという魅力がある。しかし、一任契約であっても、投資を決定する前に、運用成績に直結するコストには目を光らせるべきであろう。

 そこで、国内の大手証券、準大手証券、銀行、信託銀行の主だったファンドラップ商品のコストを比較してみたい。サービスによって最低投資金額が異なるため、500万円を投資した場合で比較した。ファンドラップは開示されている情報が限定されていることから、まず、各社がWeb上でおおむね水準を明示している、投資顧問料や取引等管理手数料などの「コスト(1)」を比較し、その後に、組入れファンドが確認できた商品について、投資対象となる投資信託への投資に係る「コスト(2)」(信託報酬等)を取り挙げた。このほかにも、投資対象となる投資信託の監査報酬や有価証券等の売買に係る手数料、資産を外国で保管する場合の費用などのほか、信託財産留保額がかかることもあるが、情報が限定的であるため、今回は比較対象外とした。以下の図表2は、このうち「コスト(1)」の一覧表である。

図表2:国内主要各社の主なファンドラップ商品のコスト(コスト(1))

社名 サービス名 コスト(1)(投資顧問報酬、取引等管理手数料など・税込)
アイザワ証券 アイザワファンドラップ 年率最大(※)1.620%
いちよし証券 ドリーム・コレクション
(標準コース)
年率最大(※)1.9872%
SMBC日興証券 日興ファンドラップ
(日興ファンドラップ一任型)
年率1.296%
大和証券 ダイワファンドラップ 年率1.512%
東海東京証券 東海東京ファンドラップ 年率最大(※)1.62000%
野村証券 野村ファンドラップ
(バリュー・プログラム)
年率最大(※)1.7064%
みずほ証券 みずほファンドラップ
(ファーストステップ)
年率最大(※)1.620%
みずほファンドラップ
(マイ・ゴール)
年率最大(※)1.620%
三井住友銀行 SMBCファンドラップ 年率最大(※)1.512%
三井住友信託銀行 三井住友信託ファンドラップ 年率最大(※)1.512%
三菱UFJ信託銀行 三菱UFJ信託ファンドラップ 年率1.512%
水戸証券 水戸ファンドラップ 年率最大(※)2.160%
りそな銀行 りそなファンドラップ
(スダンダードコース)
年率最大(※)1.2960%
りそなファンドラップ
(プレミアムコース)
同上

出所:モーニングスター作成
(※)「最大値」であり、実際のコストは低くなる可能性がある。

 投資顧問料や取引等管理手数料などの「コスト(1)」を低い順に並べると、以下となる(図表3)。

図表3:投資顧問報酬などの比較

社名 サービス名 コース コスト(1)(税込)
りそな銀行 りそなファンドラップ スダンダードコース 年率最大(※)1.2960%
プレミアムコース 同上
SMBC日興証券 日興ファンドラップ 日興ファンドラップ一任型 年率1.296%
大和証券 ダイワファンドラップ   年率1.512%
三井住友信託銀行 三井住友信託ファンドラップ   年率最大(※)1.512%
三菱UFJ信託銀行 三菱UFJ信託ファンドラップ   年率1.512%
三井住友銀行 SMBCファンドラップ   年率最大(※)1.512%
みずほ証券 みずほファンドラップ ファーストステップ 年率最大(※)1.620%
マイ・ゴール 同上
アイザワ証券 アイザワファンドラップ   年率最大(※)1.620%
東海東京証券 東海東京ファンドラップ   年率最大(※)1.62000%
野村証券 野村ファンドラップ バリュー・プログラム 年率最大(※)1.7064%
いちよし証券 ドリーム・コレクション 標準コース 年率最大(※)1.9872%
水戸証券 水戸ファンドラップ   年率最大(※)2.160%

出所:モーニングスター作成
(※)「最大値」であり、実際のコストは低くなる可能性がある。

 投資顧問料や取引等管理手数料などの「コスト(1)」については、りそな銀行の「りそなファンドラップ」とSMBC日興証券の「日興ファンドラップ」が年率(最大・税込)1.2960%で並んだ。内訳は、りそなファンドラップが投資顧問報酬、日興ファンドラップがファンドラップ手数料(年率0.972%・税込)と投資一任報酬(年率0.324%・税込)である。ここでは、多くの場合、最大値が開示されているだけで、実際にかかるコストは低くなる可能性が高い。さらに、実績に応じた報酬を支払う実績報酬併用制によりリターンに応じたコストを負担する制度もある。

 次に、組入れファンドが確認できた商品のうちコストの低い順に上位3社の「コスト(2)」を取り挙げると、以下となる(図表4)。

図表4:信託報酬の比較

社名 サービス名 コスト(2):信託報酬等(年率・税込)
りそな銀行 りそなファンドラップ 0.629%
三井住友銀行 SMBCファンドラップ 0.852%
大和証券 ダイワファンドラップ 0.993%

出所:モーニングスター作成
※ 組入れファンドが確認できた商品につき、各ファンドの信託報酬等の単純平均を算出。17年2月末時点。

 ここでも、「りそなファンドラップ」が優位となった。以上のことから、現時点におけるコスト面からの分析では、「りそなファンドラップ」に比較優位性が認められる。なお、「りそなファンドラップ」は、りそな銀行、埼玉りそな銀行、近畿大阪銀行が今年の2月6日から取り扱いを開始した新しいサービスである。ファンドラップは一般的にサービスが手厚い分、コストが高くなりがちだが、「りそなファンドラップ」はコストを抑え、他商品との差別化を図ったといえよう。

 「貯蓄から投資へ」とのスローガンが掲げられて久しいが、日本の個人金融資産の預貯金に占める割合は高く、依然として途上にあるといえる。ただ、低金利が続いていることから、投資家自身による資産運用は避けて通れないものとなるであろう。その点、金融機関の専門家から自身の投資方針に合ったポートフォリオを提案してもらえ、さらに利益の確定や損失の限定なども含めた運用も任せられるファンドラップは、分散投資効果による低リスクという面も含めて、投資家にとって安心感のあるサービスである。ファンドラップの市場拡大は今後も続くと見込まれる。コスト面に対する意識を高めることが求められよう。

(武石 謙作)

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