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アナリストの視点(ファンド)

ETFの役割は主要資産の「補完」から分散投資の「主役」に変化

2017-06-08

世界のETFは第1四半期に過去最高となる約21兆円資金流入超過

 世界のETF(Exchange Trade Funds、上場投資信託)の純資金流出入額の推移をみると、2017年第1四半期(1−3月期)は1,895億ドル(約21兆円)の流入超過となり、集計可能な2008年以降で四半期ベースでは過去最高の流入超過額となった。国(地域)別では、中国、韓国、香港などでは流出超過となったものの、米国が1,337億ドルの流入超過と、2009年第2四半期から32四半期連続、かつ過去最高の流入超過額となったことが寄与した。このような継続的な資金流入により、世界のETFの純資産残高は2017年3月末時点では3.9兆ドルと、1年前との比較では約3割の増加、金融危機前の2008年3月末時点との比較では約5倍に拡大している(図表1参照)。

図表1:世界のETFの純資産残高推移(四半期ベース)

図表1:世界のETFの純資産残高推移(四半期ベース)

※ 期間:2008年第1四半期〜2017年第1四半期
※ 純資産残高は各四半期の月末の合計値
出所:モーニングスター作成

株式ETFの主役は新興国から、米国、先進国へと交代

 純資産残高が大幅に拡大する中、投資家がETFに求める役割も変化している。当初はETFに対して、流動性の乏しい非伝統的資産への投資手段の一つとして期待する向きもあったが、商品市況の低迷などを受けたコモディティETFは、2013年は過去最高となる204億ドルの流出超過を記録した第2四半期を含め、全ての四半期で流出超過となった。2014年第1四半期以降も、13四半期中6四半期で流出超過となるなど、人気が低迷している。

 また、流動性の乏しさという点では共通する新興国株ETFも、2012年第2四半期には過去最高となる295億ドルの流入超過となったほか、2012年にかけては米国株ETFや先進国株ETFを上回る資金流入となる四半期が目立ったものの、2013年以降は一転して資金流出が目立つ(図表2参照)。一方で、米国株ETFと複数の先進国株に分散投資するETFが過去最高の資金流入額を記録したのは、前者が2016年第4四半期の899億ドル、後者が2017年第1四半期の244億ドルと、直近での資金流入が目立つ。つまり、以前は流動性の乏しい資産に投資を行う「補完的」な役割を期待されていたETFだが、低コストで流動性が高い投資商品としての認知度が高まる中で、主要資産を中心に分散投資を行う「主役」としての役割を担うように変化してきている。

図表2:世界の株式ETFの純資金流出入額推移(種類別、四半期ベース)

図表2:世界の株式ETFの純資金流出入額推移(種類別、四半期ベース)

※ 期間:2008年第1四半期〜2017年第1四半期
※ 純資金流出入額は各四半期の累計額で、モーニングスター推計値
出所:モーニングスター作成

ETF内での債券の占有率は8%から17%に上昇

 変化は債券にも表れている。ETF全体に占める比率を2008年3月末時点と2017年3月末時点を比較すると、株式は82%から76%、コモディティは5%から3%へといずれも低下したのに対し、債券は8%から17%へと大きく上昇している(図表3参照)。債券ETFの純資産残高は、2008年3月末時点の635億ドルから、2017年3月末時点の6,772億ドルへと10倍以上に拡大しているが、その間の累計流入超過額は6千億ドルを超えており、純資産残高の増加には債券の価格の値上がり益等はほとんど寄与していない。ちなみに、同期間では株式ETFの純資産残高は0.6兆円から3.0兆円へと約5倍に拡大したが、累計流入超過額は1.7兆円にとどまり、純資産残高の増加には値上がり益等が2割程度寄与している。

図表3:世界のETFの分類別比率推移(四半期ベース)

図表3:世界のETFの分類別比率推移(四半期ベース)

※ 期間:2008年第1四半期〜2017年第1四半期
※ 分類別比率は各四半期の月末の純資産残高合計値に基づく
出所:モーニングスター作成

 債券を含めたETFが人気を集める理由として、コストの低さが挙げられることが多い。実際に、純資産残高ベースで世界の債券ETFの7割を占める米国籍の保有コスト(エクスペンスレシオ、日本の信託報酬に類似)をみると、2016年12月末時点の単純平均はアクティブの0.93%に対し、ETFは0.31%と、3分の1にとどまる。ただし、債券ETFの人気の高まりとともに、ハイイールド債や短期債を主要投資対象とするものや、スマートベータ型など様々な種類が相次いで設定されたため、債券ETFの保有コストは徐々に上昇。2016年12月末時点ではインデックスファンド平均の0.29%を初めて上回り、コスト面での単純比較では、対パッシブファンドでは必ずしも優位とはいえない状況だ(図表4参照)。

図表4:米国籍債券ファンドの保有コスト比較(年末時点)

図表4:米国籍債券ファンドの保有コスト比較(年末時点)

※ 期間:2007年〜2016年
※ コストは各年末時点のアニュアルエクスペンスレシオの単純平均
出所:モーニングスター作成

 一方で、2017年3月末時点における米国籍債券ETFの純資産残高トップ10をみると、ランクインした全てのファンドが(1)2009年以前に設定、(2)スマートベータ以外、(3)日次平均出来高50万株以上(直近3カ月)の3つの条件を満たしており、その上位10ファンドだけで米国籍債券ETFの純資産残高全体の5割弱を占める。投資家は、選択肢が増加する中でも、単純なコスト比較や連動指数対象指数の目新しさなどだけで判断しているわけではなく、選別したうえで資金を投じており、今後も同様の傾向での資金流入が続く可能性が高い。

(吉田 誠)

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