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アナリストの視点(ファンド)

低迷J−REIT、カギ握る「毎月決算」

2017-07-27

 J−REIT(不動産投資信託)に投資する投信(以下、国内REITファンド)のパフォーマンスが低迷している。モーニングスターカテゴリーごとに投信のリターンを指数化したモーニングスターインデックスで見ると、2017年6月末時点で国内REITファンドの年初来リターンは▲6.60%となり、国内外株式・債券・REITの6資産中で最も低くなっている(図表1)。同期間、各国・地域のREITのリターンは米国REIT(FTSE/NAREITオール・エクイティREIT指数、ドルベース)が2.86%、欧州REIT(FTSE EPRA/NAREIT先進国欧州REIT指数、ユーロベース)が▲0.30%となる中、東証REIT指数は▲8.70%と下落幅が際立っており、J−REIT独自の要因が下押し圧力となっている可能性が高い。

図表1:国内外株式・債券・REITの年初来リターン

図1:国内外株式・債券・REITの年初来リターン

※ モーニングスターインデックス(単純)に基づく。国内株式=「国内大型ブレンド」、国際株式=「国際株式・グローバル・除く日本(為替ヘッジなし)」、国際REIT=「国際REIT・グローバル・除く日本(為替ヘッジなし)」、国際債券=「国際債券・グローバル・除く日本(為替ヘッジなし)」、国内債券=「国内債券・中長期債」、国内REIT=「国内REIT」
※ 2017年6月末時点
出所:モーニングスター作成

 主なJ−REITの下落要因として挙げられるのが、投信経由でのJ−REIT購入が減少していることだ。投資部門別のREIT保有金額(2017年2月末時点)によると、J−REITの時価総額約12兆円のうち、「投資信託分」の保有金額は約4.3兆円、比率で35.9%を占め、「外国法人等」の24.5%を大きく上回りトップとなっており、その影響力は無視できないものとなっている。

国内REITファンド、6月に過去最大の純資金流出

 実際、国内REITファンドの純資金流出入額推移とJ−REITのパフォーマンスを見ると、国内REITファンドが2017年6月まで3カ月連続で純資金流出となる中、東証REIT指数も下落基調を強め、6月末には1年4カ月ぶりにフシ目の1,700ポイントを割り込んだ(図表2)。国内REITファンドは過去5年間、概ね資金流入傾向が続いてきたものの、2017年6月の純資金流出額は324億円と、過去最大となっており、今後流出傾向を強めるか注目される。なお、2017年7月については26日までのモーニングスターの推計値で見ると、39億円の純資金流出と前月から流出規模は縮小したものの、歯止めは掛っていない。

図表2:国内REITファンドの純資金流出入額と東証REIT指数の推移

図2:国内REIT投信の純資金流出入額と東証REIT指数の推移

※ 純資金流出入額は、国内公募追加型株式投信(確定拠出年金専用、ファンドラップ専用、ETF含む)のうち、モーニングスターカテゴリー「国内REIT」に属するファンドが対象
※ 期間:2012年6月〜2017年6月
出所:モーニングスター作成

 足元の資金流出傾向の背景として挙げられるのが、金融庁が過度に分配金を支払う投信を問題視しており、REITもその対象となっていることだ。中長期での個人投資家の資産形成において分配頻度が高すぎる場合、複利効果を活かしにくいとの考えがある。過去最大の純資金流出となった2017年6月のフローを決算頻度別に見ると、年1回決算型は43億円の純資金流入となるなど分配頻度の低い投信では流入であるのに対して、毎月決算型は408億円の純資金流出と対照的な結果となっている。なお、個別ファンドベースで見ても、純資金流出額トップ10のうち9ファンドが毎月決算型であり、やはり高分配タイプを中心に資金が流出していることが分かる。

残高で6割以上を占める毎月決算、流出余地は大きい

 高分配タイプへの風当たりが厳しくなる中、今後も国内REITファンドは資金が流入しにくい状況が続く可能性がある。国内REITファンドの純資産額は2017年6月末時点で3兆6,357億円となっているが、決算頻度別に見ると毎月決算型の比率が67%と大半を占めており、他の決算頻度のファンドに比べ資金が流出する余地は依然として大きいと言えよう(図表3)。ちなみに毎月決算型の比率は国内投信市場全体(確定拠出年金専用、ファンドラップ専用、ETF含む)で見ても同月末時点で38%であり、国内REITファンドは相対的に見ても毎月決算型の比率が高くなっている。

図表3:国内REITファンドの決算頻度別純資産額シェア

図3:国内REIT投信の決算頻度別純資産額シェア

※ 2017年6月末時点
出所:モーニングスター作成

 また、分配金利回り(「直近過去1年間分配金実績値(税込)÷直近基準価額」で計算)の観点で見ても、国内REITファンドのトップ20は利回りが10%以上と高水準であり、中でも上位4ファンドは通貨選択型で20〜40%台の高利回りとなっている(図表4)。東証REIT指数構成銘柄の平均分配金利回りが3%台後半、国内REITファンドの長期(10年間)の平均リターン(年率)が約2%であることを考えると、10%を超える分配金利回りのファンドは高分配への批判が高まる中で資金流出圧力がいっそう強まりそうだ。

 分配金利回りトップ20のファンドは本数ベースでは国内REITファンド全123本のうち2割に満たないものの、純資産額ベースでは20本の合計が1兆7,129億円と、全体の約半分を占めており、影響力は大きい。資金流出が加速すれば投信経由でのREIT購入がさらに細り、REITのパフォーマンスがさらに低迷、それがさらなる資金流出を招くという悪循環が想定される。

図表4:国内REITファンドの分配金利回り上位20ファンド

図4:国内REIT投信の分配金利回り上位20ファンド

※ 分配金利回りは「直近過去1年間分配金実績値(税込)÷直近基準価額」で計算
出所:モーニングスター作成

(坂本 浩明)

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