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アナリストの視点(ファンド)

2017年米優秀ファンドマネジャーにみる投資術

2018-01-25

 米モーニングスターは24日、「ファンドマネジャー・オブ・ザ・イヤー2017」の受賞ファンドマネジャーを発表した(図表1参照)。同賞は2017年のパフォーマンスが優れているだけでなく、中長期の運用実績、定性的な面も加味して決定される。定性評価であるモーニングスターアナリストレーティング(※)でGoldまたはSilverが付与されたファンドの運用者が対象となる。

 受賞ファンドマネジャーの運用ファンドは、米国株式部門がフィデリティ・インベストメンツ社の「Fidelity® Growth Company」、国際株式部門がコーズウェイ社の「Causeway International Value Instl」、債券部門がプルデンシャル・ファンズ社の「Prudential Total Return Bond Z」、アロケーション/オルタナティブ部門がティー・ロウ・プライス社の「T. Rowe Price Capital Appreciation」となっている。

 2017年における受賞ファンドマネジャーの運用戦略を振り返り、アクティブファンドとして優れたパフォーマンスを達成した要因をみてみよう。

(※)モーニングスターアナリストレーティング
米国モーニングスターでは主要なファンドについて、将来的な長期のパフォーマンスに対する相対的な優劣の判断項目として、運用プロセス、運用成績、運用・調査体制、会社全体、コストの5項目について3段階評価(上から順にPositive、Neutral、Negative)、5項目をふまえた総合評価としての5段階評価(上から順にGold、Silver、Bronze、Neutral、Negative)を実施・公開している。

図表1:米モーニングスター・ファンドマネジャー・オブ・ザ・イヤー2017受賞ファンドの一覧

部門 ファンド名 モーニングスター
カテゴリー
モーニングスターアナリスト
レーティング
モーニングスター
レーティング
1年トータル
リターン(%)
1年トータル
リターン
%ランク(%)
10年トータルリターン
(年率・%)
10年トータルリターン
%ランク(%)
米国株式 Fidelity® Growth Company 米国株式大型グロース Silver ★★★★★ 36.76 5 11.44 4
国際株式 Causeway International Value Instl 外国株式大型バリュー Gold ★★★★ 27.18 13 3.32 9
債券 Prudential Total Return Bond Z 中期債 Silver ★★★★★ 6.62 2 5.99 1
アロケーション/
オルタナティブ
T. Rowe Price Capital Appreciation アロケーション(株式50%〜70%) Gold ★★★★★ 15.38 22 9.00 1

※ 2017年12月末時点
出所:モーニングスター作成

米国株式部門:時価総額に縛られず投資機会を追求

 米国株式部門で受賞したのは「Fidelity® Growth Company」を運用するSteven Wymer氏だ。当ファンドは過去1年間のトータルリターンが36.76%、10年間のトータルリターン(年率)が11.44%と、それぞれカテゴリー平均を9.09%、3.13%上回った(図表2参照)。売上高の成長、競争優位性がある商品を重視した戦略を用い、テクノロジーやヘルスケアセクターの比率が多くなる傾向がある。急成長するハイテク企業4社、いわゆるFANG(フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、ネットフリックス、アルファベット(グーグル))のような大型株だけでなく、より時価総額の小さな銘柄にも投資。2017年に株価が82%上昇したエヌビディアは、2008年に当ファンドが最初に投資した時は中型株であり、時価総額にかかわらず投資機会を追求する自由度の高いファンド運用となっている。

 なお、当ファンドは2006年以降、中小型株の運用に影響がでないよう、新規投資家による申し込み受付を停止しており、既存投資家の利益を重視した運用を行っている点も評価ポイントだ。

図表2:「Fidelity® Growth Company」の期間別トータルリターン

図表2:「Fidelity® Growth Company」の期間別トータルリターン

※ 2017年12月末時点
出所:モーニングスター作成

国際株式部門:逆張りスタンス、長期投資が奏功

 国際株式部門で受賞したのは「Causeway International Value Instl」を運用するSarah Ketterer氏とHarry Hartford氏(及び運用チーム)だ。当ファンドは過去1年間のトータルリターンが27.18%、10年間のトータルリターン(年率)が3.32%と、それぞれカテゴリー平均を5.10%、1.96%上回った(図表3参照)。当ファンドは割安株の長期投資を特徴として、業績分析と数量分析により50〜60に銘柄を絞り込む。

 2017年に奏功したのは逆張りのスタンスだ。排気ガス問題があったフォルクスワーゲンに積極投資し、同銘柄の株価は2017年に40%以上上昇した。同じくパフォーマンスに貢献したオランダの化学メーカーであるアクゾノーベルは10年以上保有するなど、粘り強い投資が優れたパフォーマンスにつながっている。

図表3:「Causeway International Value Instl」の期間別トータルリターン

図表3:「Causeway International Value Instl」の期間別トータルリターン

※ 2017年12月末時点
出所:モーニングスター作成

債券部門:徹底したリスク管理、調査・分析を可能にする充実した陣容

 債券部門で受賞したのは「Prudential Total Return Bond Z」を運用するMichael Collins氏、Robert Tipp氏、Richard Piccirillo氏、Gregory Peters氏の4名だ。当ファンドは過去1年間のトータルリターンが6.62%、10年間のトータルリターン(年率)が5.99%と、それぞれカテゴリー平均を2.91%、1.94%上回った(図表4参照)。4名いずれも運用経験年数は20年以上と、経験豊富なメンバーにより運用される。CIO(最高投資責任者)のMike Lillard氏は、CIO就任前はリスク管理責任者として務めており、同氏の存在が当ファンドの優れたリスク管理に大きく寄与している。定量・リスク分析の専門家が50名と、リス管理体制も優れる。

 社債を中心に証券化商品などにも分散投資を行う。2017年は銘柄選定、種別配分、デュレーション、イールドカーブ全てがパフォーマンスに寄与。80人以上のクレジットアナリストを擁するなど、優れたパフォーマンスの背景には充実した陣容がある。

図表4:「Prudential Total Return Bond Z」の期間別トータルリターン

図表4:「Prudential Total Return Bond Z」の期間別トータルリターン

※ 2017年12月末時点
出所:モーニングスター作成

アロケーション/オルタナティブ部門:株式、債券いずれも銘柄選択で成功

 アロケーション/オルタナティブ部門で受賞したのは「T. Rowe Price Capital Appreciation」を運用するDavid Giroux氏だ。当ファンドは過去1年間のトータルリターンが15.38%、10年間のトータルリターン(年率)が9.00%と、それぞれカテゴリー平均を2.16%、3.47%上回った(図表5参照)。David Giroux氏は2012年も「ファンドマネジャー・オブ・ザ・イヤー」を受賞している。

 過去10年間で見ると、ポートフォリオのうち、株式、債券いずれにおいても銘柄選択が優れたパフォーマンスにつながっている。過去10年間で株式部分がS&P500の倍近くのリターンを達成し、債券部分がBloomberg Barclays U.S. Aggregate Bond指数を年率で1.50%上回った。株式部分は、2017年はヘルスケアセクターのアボット・ラボラトリーズやパーキンエルマーがパフォーマンスに貢献。債券部分では、ハイ・イールド債、特にBB格が割安との判断から積極投資したことが寄与した。なお、当ファンドも2014年6月以降、新規投資家による申し込み受付を停止している。

図表5:「T. Rowe Price Capital Appreciation」の期間別トータルリターン

記事タイトル

※ 2017年12月末時点
出所:モーニングスター作成

(坂本 浩明)

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