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アナリストの視点(ファンド)

アクティブVSパッシブ、投資家の“実際の儲け”は?

2018-03-08

 ファンドを選ぶ上で、多くの投資家は過去のパフォーマンスが良いファンドを選ぶ傾向がある。しかし優れた成績のファンドであっても、投資家がどのタイミングでファンドを買ったか売ったかによって、運用の成果は大きく変わってくる。そのような投資家の実際の儲けを知る上で役に立つのが、「インベスターリターン」と呼ばれる指標だ。

 金融庁が「フィデューシャリーデューティー(顧客本位の業務運営)」の徹底を金融機関に求める中、投資家の実際の儲けを示すインベスターリターンへの関心が以前に比べて高まっている。フィデューシャリーデューティーの成果指標(KPI)として、インベスターリターンと基準価額騰落率の差を挙げる運用会社もあり、金融庁が考えるKPIの好事例の一つとして取り上げられるなど注目されている。

高値づかみをしている投資家が多いと…

 インベスターリターンは、ファンドを保有する投資家の平均的な損益を示す。投資家は必ずしも一度買ったファンドを保有し続けるとは限らない。むしろ、相場の変動に合わせて売買しており、例えば良好なパフォーマンスに注目して買ったところが天井だったという場合や、値下がりが怖くて売ったところが底だったという場合も多いはずだ。インベスターリターンは多くの投資家が高値づかみをしている、または安値で売却しているケースにおいて低くなる傾向があり、逆のケースでは高くなる傾向がある。つまり、インベスターリターンを見れば、ファンドを保有している投資家の売買がうまくいっているかどうかを把握することができる。ファンドを売買せず継続保有した場合のリターンである「トータルリターン」と比べて、インベスターリターンが上回っていれば投資家が良いタイミングでファンドを売買できたことを示す。

 しかし、ファンドの買い時、売り時を見極めるのは簡単ではない。まさかの展開となった2016年の米大統領選挙を引き合いに出すまでもなく、相場の先行きは運用のプロでも予想が難しいと言われる。それならば、あえて相場を予想することをせず、時間を分散して投資する、いわゆる積立投資をすることでタイミングを大きく外すことなく、運用することが可能となる。

アクティブVSパッシブでは?

 それではインベスターリターンの実際のデータを用いて、長期で見るとどのくらいファンドで売買がうまくいっているかを見てみよう。一般向けファンドとして国内公募追加型株式投信(確定拠出年金専用、ファンドラップ専用、ETF除く)を対象に2018年2月末までの過去10年間の運用実績がある1,172本を対象に集計した。ベンチマークを上回るパフォーマンスを目指す「アクティブファンド」と、ベンチマークへの連動を目指す「パッシブファンド」に分けてトータルリターンとインベスターリターンの平均を計算したところ、アクティブファンドではインベスターリターンの平均が1.07%(年率)と、トータルリターンの平均を2.83%下回る一方、パッシブファンドではインベスターリターンの平均が4.35%(年率)と、トータルリターンの平均を0.03%上回った。パッシブファンドは市場平均並みを目指す運用で、値動きが分かりやすいことから投資初心者に向いており、積立投資で利用されやすい点がインベスターリターンを高める結果につながっている。また、パッシブファンドはファンドの保有期間中にかかるコストである信託報酬が安いだけでなく、購入時の販売手数料が無料(ノーロード)のファンドも多く、この点からも積立投資に適していると言える。

図表1:一般向けファンドのアクティブ・パッシブ別、インベスターリターン平均と
トータルリターン平均の比較(過去10年間)

図表1:一般向けファンドのアクティブ・パッシブ別、インベスターリターン平均とトータルリターン平均の比較(過去10年間)

※ 国内公募追加型株式投信(確定拠出年金専用、ファンドラップ専用、ETF等除く)が対象
※ リターンは年率
※ 2018年2月末時点
出所:モーニングスター作成

確定拠出年金専用ファンドで見ると?

 次に、積立投資がインベスターリターンを高める例として、確定拠出年金専用ファンドを見てみよう。確定拠出年金では毎月の掛け金を自動的に積み立てるため、ファンドのインベスターリターンはトータルリターンよりも高くなる傾向がある。実際に、2018年2月末までの過去10年間の運用実績がある確定拠出年金専用ファンド294本を対象に同期間のインベスターリターンとトータルリターンの平均を比較したところ、アクティブファンドではインベスターリターンの平均が5.56%(年率)と、トータルリターンの平均を1.77%上回り、パッシブファンドでもインベスターリターンの平均が5.72%(年率)と、トータルリターンの平均を1.68%上回っており、いずれもインベスターリターンが良好となっている。なお、確定拠出年金専用ファンドは積立投資が前提のため、アクティブ・パッシブの差は大きく出ておらず、いずれも一般向けファンドに比べて高い水準となっている。

図表2:確定拠出年金専用ファンドのアクティブ・パッシブ別、インベスターリターン平均と
トータルリターン平均の比較(過去10年間)

図表2:確定拠出年金専用ファンドのアクティブ・パッシブ別、インベスターリターン平均とトータルリターン平均の比較(過去10年間)

※ 国内公募追加型株式投信(確定拠出年金専用)が対象
※ リターンは年率
※ 2018年2月末時点
出所:モーニングスター作成

 モーニングスターのサイトではファンドごとに期間別のインベスターリターンを掲載しており、トータルリターンとの比較ができるようになっている。短期のインベスターリターンは、一時的な資金流入の動向に左右される可能性があるため、比較の際はできるだけ3年以上の中長期でトータルリターンを上回っているかを参照するようにしたい。

(坂本 浩明)

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