fund_beginer fund_search fund_look



アナリストの視点(ファンド)

アクティブ運用10年で明暗―国内大型株、超低コストなら“勝率9割”

2018-04-12

 2018年から始まった「つみたてNISA」では、パッシブファンドだけでなくアクティブファンドにおいても対象商品の要件の一つとして信託報酬の水準が定められた。アクティブファンドのコストに対する見方が従来よりも厳しくなる背景として、パフォーマンスに与える影響がある。信託報酬とリターンの関係について、国内大型株式ファンドを対象に確認してみよう。

モーニングスター・フィーレベルで検証

 まず、資産ごとにアクティブ・パッシブに分けてコスト(信託報酬等)を20%ずつの5分位で評価する「モーニングスター・フィーレベル」を用い、コスト水準別にファンドを5つに分類した。フィーレベルカテゴリー「国内株大型・アクティブ」に属する378本を対象として、フィーレベルが最も低コストの「安い」から最も高コストの「高い」まで5段階におけるそれぞれの信託報酬等(税込み)の平均を見ると、「安い」の平均が1.03%、「高い」の平均が1.90%と、大きく差が開いている。この差はパフォーマンスの押し下げ要因となることから、特に長期でファンドを保有する場合にコストは無視できないポイントとなる。

図表1:フィーレベル別信託報酬等(税込み)平均

図表1:フィーレベル別信託報酬等(税込み)平均

※ フィーレベルカテゴリー「国内株大型・アクティブ」に属するファンドが対象
※ 2018年3月末時点
出所:モーニングスター作成

 次に、フィーレベル別に過去1年間、3年間、5年間、10年間の各期間でトータルリターンがTOPIX(配当込)を上回ったファンドの比率を「勝率」として見たところ(図表2)、過去1年間、3年間、5年間ではコストとリターンに明確な関係は見られなかった。むしろ過去5年間では、フィーレベル「高い」の勝率が41%と、「平均的」と並んで最も高くなっている。過去5年間は概ねアベノミクス相場に相当する期間となっており、大幅な株高局面ではコストの差が勝率に影響しにくかったことが分かる。

 一方、過去10年間まで期間を延ばすと、フィーレベル「安い」の勝率が77%(35本中27本がTOPIX(配当込)を上回る)と、最も高くなった。2008年のリーマン・ショックや2011年の欧州危機など下落局面も含め長期で運用する中、相場動向に関係なくパフォーマンスに影響するコストが勝率を左右する要因となっている。

 なお、フィーレベル「安い」に属するファンドは、低コスト上位20%のファンドだが、これを低コスト上位5%の“超低コスト”ファンドまで絞り込むと、12本中11本がTOPIX(配当込)を上回っており、勝率は92%とさらに高まる。逆に、フィーレベル「高い」に属するファンド(高コスト上位20%)について高コスト上位5%まで絞り込むと、TOPIX(配当込)を上回ったのは12本中2本、勝率は17%と大きく落ち込んでおり、超低コストファンドと明暗が分かれた格好だ。

図表2:フィーレベル別の対TOPIX(配当込)勝率

  トータル
リターン1年
トータル
リターン3年
トータル
リターン5年
トータル
リターン10年
安い 35% 39% 34% 77%
平均より安い 62% 38% 23% 41%
平均的 65% 42% 41% 38%
平均より高い 64% 45% 34% 30%
高い 48% 28% 41% 38%

※ フィーレベルカテゴリー「国内株大型・アクティブ」に属するファンドが対象
※ 2018年3月末時点
出所:モーニングスター作成

リスク考慮後のリターンで見ても…

 また、リスクを考慮したリターンの相対的な優劣を見るため、フィーレベル別のモーニングスターレーティグの平均を計算したところ、フィーレベル「安い」のレーティング平均は3.00と、最も高くなっている。フィーレベル「平均より安い」、「平均的」との差はわずかだが、「平均より高い」、「高い」はそれぞれレーティングの平均が2.45、2.36にとどまっており、高コストであることがパフォーマンスの押し下げ要因となっていることが分かる。ちなみに、トータルリターンで確認したのと同様に、フィーレベル「安い」の中で低コスト上位5%まで絞り込むと、レーティングの平均は3.50まで上昇する一方、フィーレベル「高い」の中で高コスト上位5%まで絞り込むと、レーティングの平均は2.11まで低下しており、コストの影響がより表れている。

図表3:フィーレベル別モーニングスターレーティング平均

図表3:フィーレベル別モーニングスターレーティング平均

※ フィーレベルカテゴリー「国内株大型・アクティブ」に属するファンドが対象
※ 2018年3月末時点
出所:モーニングスター作成

 具体的に、フィーレベルが「安い」で且つレーティングが5ツ星のファンドをまとめたのが図表4だ。いずれも過去10年間のトータルリターンはTOPIX(配当込)を上回っており、長期でのパフォーマンスは良好となっている。「年金積立Jグロース」、「利益還元成長株オープン」は同じマザーファンドに投資するファンドであるが、信託報酬等(税込み)はいずれも1%を下回る低水準であり、「年金積立Jグロース」はつみたてNISAの対象商品となっている。ファンド選びにおいて過去のパフォーマンスは参考となる情報の一つであるが、上記で見たように相対的なコストの水準も特に長期で影響が大きいことからチェックしておきたい。

図表4:フィーレベルが「安い」且つレーティングが5ツ星のファンド一覧

ファンド名 フィーレベル 信託報酬等(税込み) フィーレベルカテゴリー平均差 トータルリターン1年%ランク トータルリターン3年%ランク トータルリターン5年%ランク トータルリターン10年%ランク レーティング
年金積立Jグロース 安い 0.89 -0.64 11% 9% 5% 11% ★★★★★
利益還元成長株オープン 安い 0.89 -0.64 12% 9% 6% 12% ★★★★★
しんきん 好配当利回り株ファンド 安い 1.08 -0.44 82% 9% 23% 7% ★★★★★
日本好配当利回り株(3カ月決算型) 安い 1.08 -0.44 18% 25% 54% 15% ★★★★★
しんきん 好配当利回り株F(3カ月決算型) 安い 1.08 -0.44 76% 9% 23% 12% ★★★★★
日本好配当株オープン 安い 1.17 -0.36 10% 4% 7% 37% ★★★★★
ジャパン株式インカム(3カ月決算型) 安い 1.17 -0.36 37% 7% 27% 8% ★★★★★

※ フィーレベルカテゴリー「国内株大型・アクティブ」に属するファンドが対象
※ 2018年3月末時点
出所:モーニングスター作成

(坂本 浩明)

「アナリストの視点」よく読まれている記事(過去1週間)

アナリストの視点はRSSでも配信しています

バックナンバー