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アナリストの視点(ファンド)

登場から10年、通貨選択型ファンドの現状 −止まらない資金流出?−

2018-06-14

通貨選択型ファンドとは?

 通貨選択型ファンドとは、投資対象資産(原資産)の通貨を円以外の別の通貨に為替ヘッジを行うファンドである。一般的なファンドでは、投資対象資産の値上がりもしくは値下がりがファンドのリターンに影響するが、通貨選択型ファンドにおいては、図表1のように、ヘッジプレミアムと対円での為替差益がさらに狙える仕組みとなる。例えば、米ドル建て債券(原資産)に投資し、ブラジルレアルに為替ヘッジを行う通貨選択型ファンドでは、米国の金利よりブラジルの金利が高い場合にはヘッジプレミアムを得られることがリターンのプラス要因となるが、米国の金利が高い場合は、ヘッジコストとなり、マイナス要因となる。また、対円での為替も収益に影響し、ブラジルレアルに対して円安の場合には為替差益が得られるが、反対に円高の場合には為替差損が発生する。

図表1:通貨選択型ファンドの一般的な収益の仕組み

図表1:通貨選択型ファンドの一般的な収益の仕組み

出所:モーニングスター作成

5割が3年内に、9割が6年内に償還する可能性

 2018年5月末時点では、国内公募追加型株式投信(確定拠出年金及びファンドラップ専用、ETF等含む)のうち781本が通貨選択型ファンドとなっている。また、781本中10本を除く全ての通貨選択型ファンドにおいて償還期限が決まっており、意図しない時期で運用が終了してしまう可能性がある点には注意が必要だ。そのなか、2018年5月末時点で年内に償還期限を迎える22本を含めて、2021年まで(3年以内)に約半分が償還期限となり、2024年まで(6年以内)に約9割のファンドが償還期限を迎える(図表2)。

図表2:通貨選択型ファンドの償還期限

図表2:通貨選択型ファンドの償還期限

※ 国内公募追加型株式投信(確定拠出年金及びファンドラップ専用、ETF等含む)
※ 2018年5月末時点
出所:モーニングスター作成

純資産額は今でも全ファンドの約10%を占める

 通貨選択型ファンドの純資産額は、2018年5月末時点で約5.1兆円と、2013年4月のピーク時に12.3兆円だったことを考慮すると大きく減少しているものの、いまだ全ファンド(確定拠出年金及びファンドラップ専用、ETF等除く)の約10%を占める。

 そのなか、通貨選択型ファンド内で純資産額シェアが高い類似ファンド分類をみると(図表3)、第1位が「国際債券・ハイイールド債(為替ヘッジなし)」の25.8%、第2位が「国内大型ブレンド」の14.1%、第3位が「国際株式・グローバル・含む日本(為替ヘッジなし)」の12.0%、第4位が「国際債券・エマージング・複数国(為替ヘッジなし)」の7.8%、第5位が「国内REIT」の6.2%となる。「国際債券・ハイイールド債(為替ヘッジなし)」や「国際債券・エマージング・複数国(為替ヘッジなし)」など、比較的に高リスク債券に投資するファンドに多くみられるなか、通貨選択型ファンドを除いたその他ファンドにおける同分類のシェアは、それぞれ3.2%、0.9%にとどまり、特定の類似ファンド分類に集中している。「国内大型ブレンド」における通貨選択型ファンドに関しては、2012年後半に始まったアベノミクスによる国内株の上昇などを背景に急増し、2018年5月末時点で86本中60本が2013年以降の設定となっている。

図表3:類似ファンド分類別の純資産額シェア

図表3:類似ファンド分類別の純資産額シェア

※ 国内公募追加型株式投信(確定拠出年金及びファンドラップ専用、ETF等除く)
※ (F)=為替ヘッジなし、(H)=為替ヘッジあり
※ 2018年5月末時点
出所:モーニングスター作成

 ヘッジする通貨別の純資産額シェアでは、ブラジルレアルが24.1%と最も多く、米ドル19.5%、日本円17.5%、豪ドル10.8%の順となっているなか、トルコリラが5.5%、メキシコペソが1.1%を占め、新興国通貨の存在感は大きい。また、決算回数別の純資産額シェアでみると、毎月決算型が85.0%と最も高い一方、年1回決算型は5.7%にとどまっており、分配金を重視する商品設計となっていることが分かる。

新規設定は2017年で5本のみ、資金流出傾向も止まらず

 通貨選択型ファンドが本格的に登場し始めたのは、2008年のリーマンショック以降と言える。金融危機の中、一時的に分散投資の効果が発揮されなかったバランス型ファンドなどの人気が落ち込む一方で、高い水準の分配金などが魅力とされ通貨選択型ファンドの人気は急上昇した。通貨選択型ファンドの設定が急増した2009年(164本設定)以降の推移をみると、2014年以降から新規設定が急減していることが分かる(図表4)。2017年には5本のみが設定され、2018年においては、5月末現在の設定本数はゼロとなっている。毎月分配型の人気にかげりがみえる中、分配金の支払いを重視した商品設計である通貨選択型は今後も新たに設定される可能性は低い。

図表4:通貨選択型ファンドの設定推移および純資金流出入額

図表4:通貨選択型ファンドの設定推移および純資金流出入額

※ 国内公募追加型株式投信(確定拠出年金及びファンドラップ専用、ETF等含む)
※ 2018年は5月末時点で集計
出所:モーニングスター作成

 2009年以降の暦年の純資金流出入額の推移をみると、2014年までは流入超過が続き、2010年では約4.4兆円が流入するなど高い人気を集めたが、2015年以降は一貫して流出超過となっている(図表4)。2017年の1年間では約7,543億円が流出した。ただし、2014年までの6年間は毎年1兆円以上の流入超過となっていた点を考慮すると、流出超過の規模はそれほど大きくない。そのなか、純資産額がピーク時から半分以下に減少しているのは、過度な分配金の支払い、もしくはパフォーマンスの悪化が要因となっている可能性があり、その点については改めて分析を行いたい。

(高智恩)

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