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アナリストの視点(ファンド)

登場から10年、通貨選択型ファンドの現状(2)−運用成績と分配金水準に注目−

2018-06-21

純資産額がピーク時の半分以下になった理由は?

 前回では通貨選択型ファンドの収益の仕組や主要なヘッジ通貨などを確認し、通貨選択型ファンドの純資産額が2018年5月末時点で約5.1兆円と、ピーク時に比べて半分以下になっていることが分かった。2014年まで6年連続で1兆円以上の流入超過となったので、2015年以降の流出超過の規模はそれほど大きくないと思われる中、通貨選択型ファンドの運用成績と分配金水準が純資産額減少の要因になっていないか分析してみたい。

リスクは相対的に高いなか、リターンは類似ファンド分類平均を下回る傾向

 2018年5月末時点における通貨選択型ファンドの純資産額シェアと5年トータルリターン(年率)の関係をみると、第1位の類似ファンド分類「国際債券・ハイイールド債(為替ヘッジなし)」は1.82%、第2位の「国内大型ブレンド」では8.17%、第3位の「国際株式・グローバル・含む日本(為替ヘッジなし)」では3.46%、第4位の「国際債券・エマージング・複数国(為替ヘッジなし)」では1.79%、第5位の「国内REIT」では6.99%となる。第4位の「国際債券・エマージング・複数国(為替ヘッジなし)」を除く4分類において、通貨選択型ファンドのトータルリターンが類似ファンド分類平均を下回り、特に「国際株式・グローバル・含む日本(為替ヘッジなし)」では4.12%下回っている(図表1)。一方、同月末時点の過去5年間の標準偏差(基準価額変動リスク、年率)は、「国内大型ブレンド」では通貨選択型ファンドが類似ファンド分類平均を6.26%上回るなど、いずれの分類においても通貨選択型ファンドの標準偏差が高い。つまり、主要な通貨選択型ファンドは、トータルリターンが平均より低く、標準偏差が高い傾向にあり、運用の効率性では劣後する傾向が強い。

図表1:類似ファンド分類平均に対する通貨選択型ファンドの
トータルリターンと標準偏差(過去5年間、年率)

図表1:類似ファンド分類平均に対する通貨選択型ファンドのトータルリターンと標準偏差(過去5年間、年率)

※ 国内公募追加型株式投信(確定拠出年金及びファンドラップ専用、ETF等含む)
※ (F)=為替ヘッジなし、(H)=為替ヘッジあり
※ 2018年5月末時点
出所:モーニングスター作成

ブラジルレアルコースは過去5年間のトータルリターンで8割のファンドが下位50%内

 通貨選択型ファンドは高金利通貨で為替ヘッジを行うことで高い利回りを獲得することが人気を集める原動力となっていたが、新興国通貨の対円での為替推移をみると、ブラジルレアルは5年前(2013年5月末時点)に比べて約40%下落、トルコリラは50%以上下落しているため、該当する通貨コースのファンドにとっては逆に収益を押し下げる要因となった。実際に、ブラジルレアルコースの約8割のファンドが、過去5年間のトータルリターン(年率)の%ランク(※1)で下位50%内にとどまった。主要ヘッジ通貨別の平均%ランクをみると、ブラジルレアルコースが下位31.5%にとどまっており、トルコリラコースが下位1.6%、メキシコペソも下位12.1%にとどまるなど、日本円で為替ヘッジを行う日本円コース(下位39.0%)のファンドよりも新興国通貨コースにおける劣後が目立つ(図表2)。

※1 %ランクは類似ファンド分類内における相対比較で、数値が低いほど運用成績が上位に位置する

 過去1年間でみると、2018年5月末時点でブラジルレアルとトルコリラコースは8割以上のファンドがマイナスのリターンとなっているなか、ブラジルレアルコースは95本のうち70本が下位10%内、トルコリラコースでは42本中2本を除く全てのファンドが下位5%内に入った。ヘッジ通貨の高金利に注目が集まりやすいが、当該通貨が下落すると短期的にも中期的にも原資産から得られるリターンを大きく損ねてしまうことがある点は注意が必要だ。

図表2:主要ヘッジ通貨別の過去5年間のトータルリターンの平均%ランク

図表2:主要ヘッジ通貨別の過去5年間のトータルリターンの平均%ランク

※ 国内公募追加型株式投信(確定拠出年金及びファンドラップ専用、ETF等含む)のうち、通貨選択型ファンド
※ %ランクは類似ファンド分類内における相対比較で、数値が低いほど運用成績が上位に位置する
※ 2018年5月末時点
出所:モーニングスター作成

通貨選択型ファンドの年間分配金総額は毎月決算型ファンド全体の4割以上

 次に、通貨選択型が人気を集めた理由の一つとされる高水準の分配金についてはどうだろうか。2018年5月末時点で毎月決算型ファンド(確定拠出年金及びファンドラップ専用、ETF等含む)1,447本のうち515本(約3割)が通貨選択型ファンドとなるが、過去1年間の分配金額総額(税引前)の840,100円のうち44.1%が通貨選択型ファンドから支払われている。ただし、各年5月末時点の推移をみると、2014年に54.8%、2015年52.6%、2016年51.0%、2017年46.9%と減少傾向にある点は興味深い(図3)。2015年5月末に関しては、年間分配金総額の上位10ファンドのうち8本が通貨選択型ファンドとなっており、第1位の「りそなアジア・ハイ・イールド債券Fアジア」が3,550円、第2位の「日本株225・ブラジルレアルコース」が3,350円となっていたが、2018年5月末時点では前者が580円、後者が1,200円といずれも半分以下の水準になっている。また、2018年5月末時点では年間分配金総額の上位10位ファンドのうち、REIT型が5本を占めており、通貨選択型ファンドに減配するファンドが目立つ中、主役が交代した。

図表3:毎月決算型ファンドの年間分配金総額のうち通貨選択ファンドの比率

図表3:毎月決算型ファンドの年間分配金総額のうち通貨選択ファンドの比率

※ 国内公募追加型株式投信(確定拠出年金及びファンドラップ専用、ETF等含む)
※ 各年5月末時点における毎月決算型ファンド(償還ファンドを除く)の年間分配金を対象に集計
出所:モーニングスター作成

 今回は通貨選択型ファンドの純資産額減少の要因について、運用成績と分配金水準を中心に分析してみた。通貨選択型ファンドの多くが短期的にも中期的にも平均以下のパフォーマンスとなっている点は純資産額減少の要因として言えるだろう。また、今でも高水準の分配金が支払われているなか、減配の傾向などを考えると分配金水準によって新たな投資家が集まる可能性は以前に比べて低いと言え、分配金水準だけに注目して投資する投資家を集めることも容易ではなくなってきているため、今後も純資産額が伸びない可能性は高いと考えられる。3年以上続いている純資金流出超過から、流入超過へ転じる余地は少ないとみられるなか、今後も純資金流出傾向が続いた場合、運用パフォーマンスにも悪影響が及び、更なる純資金流出と純資産額減少を招く悪循環に陥る可能性がある点には注視していきたい。

(高智恩)

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