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アナリストの視点(ファンド)

不安定な政治が続く欧州の投信市場の動向は…

2018-07-05

 2018年にはいってから、欧州の主要国での政局不安が続く。イタリアでは、3月の総選挙後に進められていた新政権樹立の動きが5月下旬に一旦とん挫した。スペインでは、5月下旬に与党幹部らの汚職事件をきっかけに、ラホイ首相への不信任決議案が提出されていた。6月になると、とん挫していたイタリア新政権が樹立、スペインでもすでに提出されていた不信任決議案が可決したことで、新たにサンチェス氏が首相に就任した。これにより、欧州の政局は落ち着きを取り戻したかと思いきや、危機回避はしたものの、移民政策を巡る対立からドイツが連立政権崩壊の可能性に直面していた。

リスク回避に債券!ではなく、バランス型?

 そんな不安定な状況が続く欧州の投信市場はどのような様相を呈しているのか、純資金流出入額の動向から見ていきたい。2018年5月末時点の欧州籍ファンド(ETF、MMF、ファンド・オブ・ファンズの重複除く、以下、文中、図表同様)は、142億ユーロの流出超過となり、2016年11月以来18カ月ぶりに純資金流出に転じた。その内訳は、アクティブファンドが133億ユーロと18カ月ぶりの流出超過、パッシブファンドが9億ユーロと2015年3月以来38カ月ぶりの流出超過となった。アクティブファンドに限定して大分類別に見ていくと、流入トップは「バランス」が50億ユーロ、第2位は「オルタナティブ」が28億ユーロとなる一方、流出トップは「債券」が160億ユーロ、第2位は「株式」が56億ユーロとなった(図表1参照)。

図表1:2018年5月末時点の大分類別欧州籍アクティブファンドの純資金流出入額

図表1:2018年5月末時点の大分類別欧州籍アクティブファンドの純資金流出入額

出所:モーニングスター作成

 リスク回避のために債券ファンドへ資金が集まると思いきや、意外にも流出額が最も多くなり、最も資金を集めたのはバランスファンドとなった。年初来(2018年1月〜5月)での累計資金流出入額では、2018年5月末時点で流出第2位だった「株式」が累計では流入第2位となっている点に違いはあるが、累計の流入トップは「バランス」の503億ユーロ、流出トップは「債券」の2,715万ユーロとなり、2018年5月末時点と同じ傾向が見てとれる。

データから見えてくる投資家のリスクオンの姿勢

 さて、年初来の累計流出額がトップだった「債券」について、より細かい資産カテゴリーで見ていくと、流入額上位には第1位に「新興国債券」の129億ユーロ、第2位に「その他債券」の55億ユーロ、第3位に「欧州債券」の41億ユーロが続く。ただし、「その他債券」や「欧州債券」の内訳を見ると、スウェーデン、ポーランド、デンマークといった国々の債券に資金が集まる一方で、政局不安が続く国々の債券は流出超過となっている。また、流出額上位には第1位に「ハイイールド債」が215億ユーロ、第2位に「米国債券」が50億ユーロ、第3位に「英国債券」の13億ユーロが入った。今後も続く米国の政策金利の引き上げを見込んだ動きが反映されたのだろう。

図表2:「債券」に属する欧州籍アクティブファンドの資産カテゴリー別純資金流出入額上位

図表2:「債券」に属する欧州籍アクティブファンドの資産カテゴリー別純資金流出入額上位

※ 期間:2018年1月から5月まで
出所:モーニングスター作成

 最後に、年初来の累計流入額がトップだった「バランス」について見ていく。バランスファンドは、株式資産と債券資産及び現金の比率に応じてより細かい資産カテゴリーに分かれている。流入額第1位は相場環境に応じて機動的に資産配分を変更する「Flexible Allocation」(※1)が151億ユーロ、第2位は「Cautious Allocation」(※2)が135億ユーロ、第3位は「Moderate Allocation」(※3)が126億ユーロの流入超過となった。「Flexible Allocation」と「Cautious Allocation」は、欧州籍アクティブファンド全体でも流入額第1位と第2位にランクインしており、投資家の注目度の高さがうかがえる。

※1. Flexible Allocation=株式資産が20%〜80%、債券資産及び現金が20%〜80%の範囲内で機動的に変更
※2. Cautious Allocation=株式資産:20%〜50%、債券資産及び現金:50%〜80%
※3. Moderate Allocation=株式資産:50%〜70%、債券及び現金:全体−株式資産

図表3:「バランス」に属する欧州籍アクティブファンドの資産カテゴリー別純資金流入額上位

図表3:「バランス」に属する欧州籍アクティブファンドの資産カテゴリー別純資金流入額上位

※ 期間:2018年1月から5月まで
出所:モーニングスター作成

 バランスファンドについては、株式資産が半分もしくはそれ以上を占める資産カテゴリーが流入上位に並んでいるほか、債券ファンド全体では流出超過となるものの、資産カテゴリー別では新興国債券が最も資金を集めるなど、欧州の政局不安をものともせずにリスクオンの姿勢をとる投資家が多いようだ。

(平井 綾香)

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