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アナリストの視点(ファンド)

“高リスク・低リターン”ファンドに注意、実際の儲けも低迷

2018-09-20

 国内投信市場で高リスクファンドのシェアが拡大している。国内公募追加型株式投信(確定拠出年金専用、ファンドラップ専用、ETFなど除く)のうち、モーニングスターの「リスクメジャー」が付与されているファンドを対象に、リスクメジャー別の純資産額比率を2018年8月末時点と10年前で比較すると、「4(やや高い)」が11.2%から32.2%へ、「5(高い)」が3.2%から9.8%へいずれも上昇する一方、「2(やや低い)」が32.4%から14.7%へ大きく低下するなど、全体としてはリスクが高めのファンドがシェアを高めた格好となっている。

 リスクメジャーは、ファンドの値動きの大きさを示すリスク(標準偏差)が、全ファンド内でどの水準にあるかを「1(低い)」から「5(高い)」までの5段階で示した指標となる。投資家がファンドを選ぶ際、どのくらいのリスク水準にあるのか把握するのに活用できる。特に投資初心者にとって「5(高い)」のファンドはリスクが高すぎる可能性があり、相場の下落局面で想定以上に損失が拡大することも考えられるため、注意が必要だ。

 「5(高い)」のファンドについて、モーニングスターカテゴリー別の純資産額比率を見ると(図表1)、第1位が「国際株式・インド(為替ヘッジなし)」で29.9%と圧倒的に高いほか、第4位が「国際株式・中国(為替ヘッジなし)」で5.0%、第6位が「国際株式・エマージング・複数国(為替ヘッジなし)」となるなど、一般的な「新興国=ハイリスク」のイメージ通りの結果となっている。一方で、第2位が「国内大型ブレンド」で17.0%と高いが、これは対象ファンド76本のうち通貨選択型ファンドが75本とほぼ全てとなっており、日本株に為替のリスクが上乗せされた影響と言える。また、第3位の「国際株式・北米(為替ヘッジなし)」については、ヘルスケア、IT、エネルギーといったテーマ型ファンドが目立っている。

図表1:リスクメジャー「5(高い)」のファンドのカテゴリー別純資産額比率

図表1:リスクメジャー「5(高い)」のファンドのカテゴリー別純資産額比率

※ (F)は為替ヘッジなし
※ 2018年8月末時点
出所:モーニングスター作成

 リスクメジャー別に2018年8月末までの過去10年間(年率)のリスクとトータルリターン平均の関係を見ると(図表2)、「1(低い)」から「4(やや高い)」まではリスクが高まるにつれてリターンが高まっているものの、「5(高い)」についてはリスクが27.67%に対してトータルリターンは2.75%と、“高リスク・低リターン”となっている。同期間のシャープレシオの平均で見ても0.11と低水準だ。「5(高い)」の中でも、「国内小型グロース」に属する「DIAM 新興市場日本株ファンド」がシャープレシオ1.25と高くなるなど良好なパフォーマンスのファンドもある一方で、「国際株式・ブラジル(為替ヘッジなし)」など総じて新興国株式のカテゴリーがトータルリターンの平均を押し下げており、リスクに見合ったリターンが得られていない。

図表2:リスクメジャー別のリスク・トータルリターン平均(過去10年間・年率)

図表2:リスクメジャー別のリスク・トータルリターン平均(過去10年間・年率)

※ 2018年8月末時点
出所:モーニングスター作成

投資家の“実際の儲け”を見ると…

 最後に、「インベスターリターン」を使用し、リスクメジャー別の投資家の“実際の儲け”を測定した。インベスターリターンは、ファンドを保有する投資家の平均的な損益を示し、投資家が高値づかみをしている、または安値で売却しているケースにおいて低くなる傾向があり、逆のケースでは高くなる傾向がある。ファンドを売買せず継続保有した場合のリターンであるトータルリターンと比べて、インベスターリターンが上回っていれば投資家が良いタイミングでファンドを売買できたことを示す。

 2018年8月末までの過去10年間(年率)のインベスターリターン平均を計算したところ(図表3参照)、「1(低い)」から「4(やや高い)」まではリスクが高まるにつれてインベスターリターンも高まっているものの、「5(高い)」については0.20%と、最も高い「4(やや高い)」の3.33%に比べて大幅に低い水準にとどまっている。また、「5(高い)」についてはトータルリターンとの比較でも、インベスターリターンが2.55%下回っており、投資家が良いタイミングでファンドを買えていないことを示している。

 値動きが大きいファンドの方が投資タイミングを図るのが難しく、売買せずに買い持ちした方が長期では良好なリターンが得られることが示唆されている。投資経験が豊富で価格変動をよほど好む投資家でない限り、リスクが高すぎるファンドへの投資は慎重になった方がよいだろう。

図表3:リスクメジャー別のトータルリターンとインベスターリターン平均(過去10年間・年率)

図表3:リスクメジャー別のトータルリターンとインベスターリターン平均(過去10年間・年率)

※ 2018年8月末時点
出所:モーニングスター作成

(坂本 浩明)

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