fund_beginer fund_search fund_look



アナリストの視点(ファンド)

繰上償還だけではない―“少なすぎる”残高に注意

2018-11-30

 国内投信の本数が拡大する一方、純資産残高が低い小規模ファンドの比率が高止まりしている。国内公募追加型株式投信(確定拠出年金専用、ファンドラップ専用、ETF含む)の本数は2018年10月末時点で5,530本と、5年前の4,192本から大幅に拡大。そうした中で、純資産残高が「10億円未満」のファンドが占める比率は本数ベースで40%、「10億円以上50億円未満」のファンドの比率は30%と、併せて7割を占めており、5年前からほぼ横ばいとなっている(図表1参照)。

図表1:純資産残高の水準別本数比率

図表1:純資産残高の水準別本数比率

※ 国内公募追加型株式投信(確定拠出年金専用、ファンドラップ専用、ETF含む)が対象
出所:モーニングスター作成

 2018年からスタートしたつみたてNISA(少額投資非課税制度)において、アクティブファンドにおける対象商品の条件の一つとして純資産残高が50億円以上と定められるなど、長期で安定した運用を行うためには一定以上の規模があることが望ましい。一般的に純資産残高が少なすぎる場合には繰り上げ償還となる可能性もあり、想定していないタイミングで投資を止めなければならないといったデメリットが挙げられるが、それ以外にパフォーマンス面での影響も考えられる。

残高とレーティングの関係を見ると?

 パフォーマンス面での影響を見るため、2018年10月末時点で国内投信全体を対象に純資産残高が最も高いファンドから低いファンドまでを並べ、上位1〜10%など10のランク(%ランク)に分けた上で、モーニングスターレーティングの平均に差が見られるかを確認した(図表2)。レーティングはカテゴリー内でのリスク調整後リターンに基づき1ツ星〜5ツ星の5段階で付与され、5ツ星が最も高いパフォーマンスとなる。

 図表2を見ると、純資産残高が最大となる上位1〜10%のグループのレーティング平均が3.3と、最も高い結果となり、%ランクが低下するほど概ねレーティング平均も低下、残高が最下位のグループとなる91〜100%のレーティング平均は2.7と最低水準となっている。ちなみに、%ランクが91〜100%のグループに入るのは純資産残高が1.26億円以下のファンドで非常に小規模だが、408本ものファンドが該当している。

 純資産残高が少ないことが低パフォーマンスにつながる背景としては、資金流出の影響などで意図した運用ができなくなっている場合があるほか、残高が伸び悩む中で運用においての注力度合いが低くなり、その結果として運用成績が低迷していることも考えられる。

図表2:純資産残高の%ランク別モーニングスターレーティング平均

図表2:純資産残高の%ランク別モーニングスターレーティング平均

※ 国内公募追加型株式投信(確定拠出年金専用、ファンドラップ専用、ETF含む)のうち、モーニングスターレーティングが付与されているファンドが対象
※ 2018年10月末時点
出所:モーニングスター作成

残高が少ないほど高コスト

 もう一つ、直接的に純資産残高とパフォーマンスを結び付ける要因ではないものの、間接的に影響している要因と考えられるのがコストだ。図表2と同様に純資産残高の%ランク別に信託報酬等(税込)と購入時手数料(税込)の平均を見たものが図表3となる。信託報酬等(税込)と購入時手数料(税込)の平均は、純資産残高上位1〜10%のグループがそれぞれ1.18%、2.16%となっているのに対して、91〜100%のグループはそれぞれ1.54%、2.68%とより高い水準となっており、概ね残高が低いほど高コストの関係が見られる。

図表3:純資産残高の%ランク別コスト平均

図表3:純資産残高の%ランク別コスト平均

※ 国内公募追加型株式投信(確定拠出年金専用、ファンドラップ専用、ETF含む)のうち、モーニングスターレーティングが付与されているファンドが対象
※ 購入時手数料は目論見書記載の最大値(ETFは該当データがないため平均値算出の上では考慮せず)
※ 2018年10月末時点
出所:モーニングスター作成

 純資産残高が低水準のファンドほど信託報酬等と購入時手数料が高い傾向にあるのは、コストが高すぎるファンドを投資家が敬遠していることが背景にあると考えられる。高すぎるコストが資金流出を通じて残高の減少を招き、結果的にパフォーマンスの低下にもつながるという関係になっている可能性がある。

 当然ながら「残高が高水準であることイコール良いファンド」ではなく、ファンド選びにおいてはパフォーマンスやコストなど総合的に考慮する必要があるが、残高が少なすぎるファンドについてはデメリットが多く、投資には慎重になるべきだろう。

(坂本 浩明)

「アナリストの視点」よく読まれている記事(過去1週間)

アナリストの視点はRSSでも配信しています

バックナンバー