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アナリストの視点(ファンド)

先進国株式と海外REITの10年アクティブ運用における最終的な勝率はわずか8%

2019-03-14

計算にあたってはパッシブのコスト負担と実際に投資可能であったかを考慮

 米国モーニングスターでは、アクティブファンドのパッシブファンドに対する「最終的な勝率」をカテゴリーごとに数値化した「アクティブ/パッシブ・バロメーター」を半年ごとに公表しているが、今回は2018年12月末基準で「日本版」を計算してみた。具体的な計算方法としては、アクティブファンドの比較対象を、ベンチマークではなく、実際に投資可能なパッシブファンドとした。例えば、『日経平均株価』や『TOPIX』などのベンチマークはコスト負担が無いため、パッシブファンドのパフォーマンスは実際に投資可能な『インデックスファンド225』や『JA TOPIXオープン』などの平均値とし、コスト負担のある『フィデリティ・日本成長株・ファンド』や『さわかみファンド』などのアクティブファンドと基準を統一した。

 また、計算対象ファンドには償還済みファンドも含め、カテゴリーなどの分類の基準は期末(直近)ではなく、期初(計算開始時)とした。例えば、今回の期初である2008年12月末時点では、モーニングスターカテゴリー「国際債券・ハイイールド債(為替ヘッジなし)」には30本以上のファンドが属していたものの、その中にはパッシブファンドは1本も無かった。つまり、当時の投資家はアクティブファンドしか選択肢が無かったのだから、後から振り返ってベンチマークやパッシブファンドとの比較は行わない。なお、これらは米国の計算方法に概ね準拠するものだが、米国ではETFを含めて計算しているものの、日本では除いて計算している点などで異なる。

アクティブの半数以上のカテゴリーで償還率が3割越え、パッシブはスマートベータの償還目立つ

 実際に、2008年12月末時点でカテゴリー内に3本以上のパッシブファンドが属していた主な12のカテゴリーについて10年後の「日本版」の計算結果をみると、「償還率」と「アクティブ・サクセス・レート」が注目される。「償還率」(※)とは、期初から期末(今回は2008年12月末から2018年12月末)までのいずれかのタイミングで償還になったファンドの比率(本数ベース)のことで、アクティブファンドでは12のカテゴリーの全てで1割を超え、うち7つのカテゴリーでは3割を超えた(図表1参照)。中でも、償還率が4割弱と最も高かった「国際債券・エマージング・複数国(為替ヘッジなし)」は、2008年12月末時点では51本のアクティブファンドに投資が可能であったが、その後の10年間で20本が償還となっている。新興国の高利回りは短期的には度々注目を集めるが、中長期的には通貨の下落や政治・経済状況の激変などを契機に人気が離散し、償還となることも少なくない。また、2008年12月末時点では、投資可能なアクティブファンドが200本以上あった「国内大型ブレンド」と「安定成長」の償還率はいずれも3割を超えている。ファンドの本数の多さは投資家に多様な選択肢を提供する反面、既にそれまでの時点で注目が高まっていたからこそ多数のファンドが設定されていた可能性がある点にも注意が必要だ。

(※)米国モーニングスターでは「サバイバーシップ・レート」として、償還になったファンドを除いた運用の継続率(「償還率」の逆数)を表記している

図表1:日本版アクティブ/パッシブ・バロメーターの「償還率」(過去10年間)

カテゴリー アクティブ パッシブ
期初本数 期中償還本数 償還率 期初本数 期中償還本数 償還率
国内大型ブレンド 265 81 30.6% 104 19 18.3%
国内債券・中長期債 42 12 28.6% 29 1 3.4%
国内REIT 28 5 17.9% 12 1 8.3%
国際株式・グローバル・除く日本(為替ヘッジなし) 73 24 32.9% 32 3 9.4%
国際株式・グローバル・含む日本(為替ヘッジなし) 100 38 38.0% 7 4 57.1%
国際株式・エマージング・複数国(為替ヘッジなし) 95 33 34.7% 4 1 25.0%
国際債券・グローバル・除く日本(為替ヘッジなし) 95 26 27.4% 34 2 5.9%
国際債券・エマージング・複数国(為替ヘッジなし) 51 20 39.2% 5 2 40.0%
国際REIT・グローバル・除く日本(為替ヘッジなし) 15 4 26.7% 3 0 0.0%
国際REIT・グローバル・含む日本(為替ヘッジなし) 25 3 12.0% 3 0 0.0%
安定成長 207 76 36.7% 21 0 0.0%
バランス 135 47 34.8% 20 1 5.0%

※ 国内公募追加型株式投信(ETF除く)
※ 期初は2008年12月末時点、期末は2018年12月末時点
※ 各ファンドが期初に属していたカテゴリー基準
出所:モーニングスター作成

 一方で、パッシブファンドの償還率は、ゼロとなった「安定成長」及び2つの海外REITを含めた計8つのカテゴリーで1割以下にとどまっており、全般的に運用の継続性は高い。ただし、償還率が5割を超えた「国際株式・グローバル・含む日本(為替ヘッジなし)」では、償還となった4本のいずれもが地球温暖化関連株指数など特殊な指数連動型となっていた。また、2008年12月末時点でカテゴリー内に属するパッシブファンドが唯一100本を超えていた「国内大型ブレンド」は、期中に償還となった19本のうち、225連動型やTOPIX連動型は8本にとどまり、その他の11本は日本の特定地域の企業や日本株の中から厳選した企業に投資を行う指数などに連動を目指すファンドだ。つまり、償還となったパッシブファンドの一角は、今で言う「スマート(ストラテジック)ベータ」型ファンドで占められていたことになるが、当初に想定していたほどのパフォーマンスや人気を集められなかった場合、意図せざるタイミングで解約・換金されてしまうリスクを含んでいる点ではアクティブファンドと異ならない。パッシブファンドはアクティブファンドに比べてコストが低い点に注目が集まりやすいが、どのような指数に連動を目指すのかは事前によく吟味する必要がある。

アクティブ・サクセス・レートはJ−REITが唯一の4割越え

 「アクティブ・サクセス・レート」とは、期中に償還となったファンドを除き、期末時点で同一のカテゴリー内に属するパッシブファンドを上回ったアクティブファンドの比率(本数ベース)のことで、期初に投資が可能であったファンドの最終的な勝率とも言え、パッシブファンドのトータルリターンの単純平均と、個々のアクティブファンドのトータルリターンを比較して算出している。そのアクティブ・サクセス・レートが、2018年12月末時点で唯一4割を超えたのが「国内REIT」だ(図表2参照)。2010年以降は日銀が断続的にJ−REITを購入するという特殊要因もあり、2018年12月末までの過去10年間ではカテゴリー内に属するパッシブファンドのトータルリターン平均が年率で11%以上のプラスとなる良好な市況環境下だったとはいえ、期中に償還になったファンドを除くと、パッシブファンド平均を上回ったアクティブファンドは12本と、下回ったファンドの11本を上回っており、アクティブファンドとしての優位性を発揮したファンドが多かった点は評価される。

図表2:日本版アクティブ/パッシブ・バロメーターの「アクティブ・サクセス・レート」(過去10年間)

図表2:日本版アクティブ/パッシブ・バロメーターの「アクティブ・サクセス・レート」(過去10年間)

※ 国内公募追加型株式投信(ETF除く)
※ 期初は2008年12月末時点、期末は2018年12月末時
※ 各ファンドが期初に属していたカテゴリー基準
出所:モーニングスター作成

 その「国内REIT」を除く11のカテゴリーでは、アクティブ・サクセス・レートはいずれも4割以下にとどまり、中でも「国際株式・グローバル・除く日本(為替ヘッジなし)」と「国際REIT・グローバル・含む日本(為替ヘッジなし)」は8%台にとどまった。2008年12月末時点では「国際株式・グローバル・除く日本(為替ヘッジなし)」には73本が属していたものの、2018年12月末時点では地球温暖化関連株や高(好)配当株式ファンドなどを含めた多くのファンドがパッシブファンドのトータルリターン平均を下回っており、同平均を上回ったのは「大和住銀 DC海外株式アクティブファンド」や「年金積立インターナショナル・グロース・ファンド」などの6本にとどまった。また、2008年12月末時点では「国際REIT・グローバル・含む日本(為替ヘッジなし)」には25本が属していたが、2018年12月末時点でパッシブファンドのトータルリターン平均を上回ったのは「ノムラ 日米REITファンド(毎月分配型)」と、2019年1月に償還された「野村 ファンドラップ世界REITBコース」の2本のみとなっている。過去10年間では両カテゴリーのパッシブファンドのトータルリターン平均はいずれも年率で2桁のプラスとなる良好な市況環境であったが、アクティブファンドとしての優位性を中長期的に発揮できたのは極めて少数のファンドにとどまっている。

(吉田 誠)

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