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アナリストの視点(ファンド)

先進国株が百万円・10年で約1万円のコスト負担で投資可能に、パッシブ人気高まるも「高コスト」では長期リターンに影響大

2019-06-13

6月からは日本を除く先進国株式2ファンドの税抜信託報酬が0.1%以下に

 5月には、ニッセイアセットが「購入・換金手数料なし」シリーズのうち、6本の信託報酬の引き下げを6月27日から実施すると発表。中でも、2019年5月末時点の純資産額が1,166億円と、同シリーズの純資産額の6割以上を占める「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」の信託報酬(税抜、以下このレポート内全て同じ)が0.1090%から0.0999%へと引き下げられるのが目立つ。その後も6月には、三菱UFJ国際投信が25日から「eMAXIS Slim先進国株式インデックス」の信託報酬を従来の0.1090%から0.0999%への引き下げを発表しており、6月中には信託報酬が0.10%以下で投資をできる先進国株式ファンドが2本登場することになる。この2ファンドの信託報酬の引き下げは2つの点で注目される。

 第1に、ETFを除いた「一般的な投資家が購入可能なファンドとしては初」の信託報酬が0.10%未満になるという点だ。モーニングスターの調べでは、2019年5月末時点においてETFを含めた公募の追加型株式投信は5,500本以上あるが、その中で信託報酬が最も低いのが「iシェアーズ・コア TOPIX ETF」の0.06%。同ファンド含めて信託報酬が0.10%未満のファンドは8本あるが、その全てがETFだ(図表1参照)。ETFを除くと、これまで最も低かった信託報酬は0.10%で、同月末時点では3本あるが、そのうち「年金積立日本短期債券オープン」だけはSBI証券などの複数の金融機関で購入が可能だが、その他の2本は確定拠出年金専用、ファンドラップ専用となっており、一般的な投資家は購入できない。

図表1:低信託報酬ランキング

順位 ファンド名 運用会社 信託報酬等
(税抜、%)
純資産額
(億円)
種類 カテゴリー名
1 iシェアーズ・コア TOPIX ETF ブラックロック 0.06 2,283 ETF 国内大型ブレンド
2 NEXT FUNDS国内債券・NOMURA-BPI総合連動型上場投信 野村 0.07 10 ETF 国内債券・中長期債
3 NZAM 上場投信 TOPIX 農中全共連 0.08 237 ETF 国内大型ブレンド
4 MAXIS トピックス上場投信 三菱UFJ国際 0.08 11,663 ETF 国内大型ブレンド
4 MAXIS JPX日経インデックス400上場投信 三菱UFJ国際 0.08 3,383 ETF 国内大型ブレンド
4 One ETF トピックス アセマネOne 0.08 1,605 ETF 国内大型ブレンド
7 上場インデックスファンドTOPIX 日興 0.09 39,344 ETF 国内大型ブレンド
7 上場インデックスファンドTOPIX Ex-Financials 日興 0.09 256 ETF 国内大型ブレンド
9 上場インデックスファンドJPX日経インデックス400 日興 0.10 1,780 ETF 国内大型ブレンド
9 インデックスコレクション(国内債券) 三井住友TAM 0.10 247 DC専用 国内債券・中長期債
9 ダイワ ファンドラップオンライン 日本債券インデックス 大和 0.10 21 SMA専用 国内債券・中長期債
9 年金積立日本短期債券オープン 日興 0.10 9 - 国内債券・中長期債

※ 2019年5月末時点の国内公募追加型株式投信
※ DC専用=確定拠出年金専用ファンド、SMA専用=ファンドラップ専用ファンド
※ モーニングスターでは信託報酬に投資先ファンドに関わるコストがある場合には、それらを含めて信託報酬等として記載している
出所:モーニングスター作成

 第2に、ETFを含めた全ファンドの中でも「海外資産に投資するファンドとしては初」の信託報酬が0.10%未満になるという点だ。前記の信託報酬が0.10%未満のETF8本は、モーニングスターカテゴリーでは7本が「国内大型ブレンド」、1本が「国内債券・中長期債」となっている。つまり、これまではETFを活用したとしても、海外資産に信託報酬0.10%未満で投資する手段は提供されておらず、今回の2ファンドの引き下げにより、投資家は低コストで国内外に分散投資を行うための選択肢が広がったことになる。ちなみに、ETFを含めた全ファンドの信託報酬の単純平均は1.21%であり、100万円を10年間投資したと仮定すると投資家の負担は約12万円となるが、0.1%であれば約1万円にとどまることになる。なお、「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」と「eMAXIS Slim先進国株式インデックス」はいずれも「日本を除く」先進国株式に投資を行うファンドであり、「日本を含む」先進国株式に1本で投資を行いたい投資家にとっては「SBI・先進国株式インデックス・ファンド」の信託報酬0.11%が、最も低コストになる。

低コストファンドに資金シフト傾向強まる、パッシブならとりあえず何でも大丈夫?

 では、信託報酬の高低は、投資家の資金動向に影響を及ぼしているのだろうか。計算にあたっては、確定拠出年金及びファンドラップ専用、ETF、ブル・ベアをいずれも除外し、信託報酬を5段階(%ランクで最も低い方から上位20%以内を「1」、上位20%超40%未満を「2」等)に分けたうえで、各年の5月末を基準とした過去1年間の純資金流出入額をみてみた。2019年5月までの過去1年間では、全体では1,430億円の流出超過となっていたが、最も信託報酬が低い分類「1」に属するファンドは1兆3,362億円の流入超過となった(図表2参照)。「1」に属するファンドは、2017年が208億円、2018年が5,886億円のいずれも流入超過となっており、順調に資金流入超過額が拡大している。一方で、「4」に属するファンドは、過去3年は毎年流入超過となっているものの、2019年は3,936億円と、2018年の2兆3,808億円からは約6分の1に減少。最も信託報酬が高い「5」に属するファンドも2018年の1兆円以上の流入超過から、2019年には流出超過に転じた。個別ファンドについて、2018年5月末時点における過去1年間の純資金流入超過額ランキング上位をみると、2015年から2017年にかけて設定されたロボティクスやフィンテック株式が複数ランクインしており、その多くが「4」や「5」に属しているため、2019年にかけてはそうしたファンドの人気が離散し、流出超過に転じた影響が大きかった。

図表2:信託報酬別純資金流出入額の推移

図表2:信託報酬別純資金流出入額の推移

※ 国内公募追加型株式投信(確定拠出年金及びファンドラップ専用、ETF除く)のうち、ブル・ベア型除く
※ 信託報酬は2019年5月末時点における%ランクで5段階分類
※ 純資金流出入額は、各年の5月までの過去1年間で、2019年5月はモーニングスター推計値
出所:モーニングスター作成

 全ファンドを信託報酬で5段階に分けた場合、パッシブファンドの97%は「1」に属するため、あらためてパッシブファンドの中だけで信託報酬で5段階(最も低い方から上位20%以内を【1】等)に分類すると、5月末を基準とした過去1年間の純資金流出入額では、【1】に属するファンドは2017年が454億円、2018年が2,038億円、2019年が3,182億円のいずれも流入超過と、順調に増加しており、パッシブファンドの中でもコスト重視の傾向は一層強まっている(図表3)。一方で、【3】、【4】、【5】に属するファンドは2017年と2018年はいずれも流出超過となっていたものの、2019年は【5】に属するファンドが1,300億円の流入超過となるなど、いずれも一転して流入超過となった。こうした背景の一つとして、パッシブファンドの中では相対的に高コストであっても、2019年にかけては一部のファンドに大きな資金が集まったことが挙げられる。

図表3:パッシブファンドの信託報酬別純資金流出入額の推移

図表3:パッシブファンドの信託報酬別純資金流出入額の推移

※ 国内公募追加型株式投信(確定拠出年金及びファンドラップ専用、ETF除く)のうち、ブル・ベア型除くパッシブファンド
※ 信託報酬は2019年5月末時点におけるパッシブファンド内での%ランクで5段階分類
※ 純資金流出入額は、各年の5月までの過去1年間で、2019年5月はモーニングスター推計値
出所:モーニングスター作成

 実際に、個別のパッシブファンドについて、2019年5月末までの過去1年間の純資金流入超過額ランキングをみると、第1位は「ダイワ J−REITオープン(毎月分配型)」の666億円、第2位は「日経225ノーロードオープン」の303億円となっており、両ファンドともに【5】に属するだけでなく、各カテゴリー内に属する「東証REIT指数連動型」、「日経225連動型」の中でも信託報酬が最も高い。パッシブファンドはアクティブファンドと比較すると相対的に信託報酬が低い傾向があるが、パッシブファンドの中でも差があり、その差がリターンに反映されやすい点には注意が必要だ。例えば、「ダイワ J−REITオープン(毎月分配型)」は、設定(2004年5月)来の10年トータルリターンでは、「東証REIT指数連動型」の中では2019年5月までの過去61カ月のうち、59カ月で下位10%内となり、同種のパッシブファンドの中でも大きく劣後している。また、アクティブファンドも含めた「国内REIT」の中でも52カ月で下位20%内となっており、対アクティブファンドでも投資タイミングによっては劣後する可能性が高かった。「日経225ノーロードオープン」も、設定(1998年8月)来の10年トータルリターンをみると、「日経225連動型」の中では過去130カ月の全ての月で下位10%となり、アクティブファンドも含めた「国内大型グロース」の中でも10カ月では下位20%にとどまった。

 パッシブファンドの目的は平均的なパフォーマンスを享受することであり、アクティブファンドに対して優位となることは目指してないが、実際にはコストの低さから長期的なパフォーマンスはアクティブファンドに対しても優位となる調査結果がある中、コスト負担の重いファンドへの投資ではパッシブファンド内で劣後するだけでなく、投資タイミングによってはアクティブファンドに対しても劣後してしまうという調査結果とは逆の運用成果となる可能性がある。利用している金融機関によっては、信託報酬が「最安値」のパッシブファンドがそもそも選択肢に無い場合もあるが、少なくとも利用可能な複数の金融機関の中で、より信託報酬が低いファンドはないか、事前に比較、検討することだけは欠かさないようにしたい。

(吉田 誠)

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