アナリストの視点(ファンド)
不確実な時代でも確実なコスト、「安い」投信マネー安定流入
2020-04-23
低コストファンドへの資金流入が安定感を増している。「モーニングスター・フィーレベル」を用いて信託報酬の水準別に資金流入を集計したところ、最も低コストの「安い」となるファンドは2020年3月に1,007億円の純資金流入となり、11カ月連続の流入超を記録した。
「安い」初の4カ月連続1,000億円超え
フィーレベルはコストの水準を5段階にして一目で分かりやすくした指標だ。国内公募追加型株式投信(確定拠出年金専用、ファンドラップ専用、ETF除く)を対象に、資産ごとにアクティブ・パッシブに分けてコスト(信託報酬等)を20%ずつの5分位(安い、平均より安い、平均的、平均より高い、高い)で評価。モーニングスターでは各ファンドの信託報酬とともに、フィーレベルをホームページで公開している。参考までに「安い」ファンドの信託報酬等(税込)の平均は0.98%と、「高い」ファンドの1.84%の半分近くの水準に抑えられており、信託報酬の水準は大きく異なる。信託報酬はファンドを保有し続ける限り基準価額から日々差し引かれるため、長期で保有するほどその影響は大きい。
フィーレベルが「安い」ファンドの純資金流入額は4カ月連続で大台の1,000億円を超えた。これは2017年8月のフィーレベル算出開始以来で初めてだ(図表1参照)。一方、他のフィーレベルは「平均より高い」「高い」が直近の3月こそ流入超となったものの、2月までは「平均より高い」が22カ月連続、「高い」が6カ月連続で流出超となっていた。
図表1:フィーレベル別の純資金流出入額推移(過去1年間)
※期間:2019年4月〜2020年3月
出所:モーニングスター作成
ちなみに「高い」が久しぶりに流入超となった2020年3月についてもコロナ危機で株式市場などが大きく下落したことで逆張り狙いの資金が一時的に入った影響が大きいとみられる。実際、「高い」が過去1年間で流入超となった2019年5月、8月は国内外の株価が調整した局面で、その後株価が戻すと利益確定売りの売却が増えた。つまり、相場の変動に応じて振れやすい。対照的に「安い」は唯一、市場環境に左右されず継続的に資金が流入している。
「安い」ファンドの純資金流出入の内訳を指数への連動を目指すパッシブファンドと、指数を上回るパフォーマンスを目指すアクティブファンド別に見たところ、過去11カ月はいずれも流入超が続いていた(図表2参照)。低コストファンドを支持する動きはアクティブやパッシブといった運用スタイルにかかわらず強まっているようだ。アクティブは一般的にパッシブに比べて信託報酬が高いが、アクティブの中でも相対的にコストが「安い」ファンドは資金が流入基調にあることが分かる。
また、「安い」のうちパッシブはフィーレベル算出開始来32カ月連続で流入超が続いていたが、2020年3月は過去最大となる929億円の流入を記録した。元々コストが低いパッシブの中でもより低コストのファンドを求める動きが加速していると言えるだろう。
図表2:フィーレベル「安い」のアクティブ・パッシブ別純資金流出入額推移(過去1年間)
※期間:2019年4月〜2020年3月
出所:モーニングスター作成
アクティブはバランス、パッシブは先進国株式がけん引
具体的にフィーレベルが「安い」ファンドの過去1年間の純資金流入額トップ10を見てみよう(図表3参照)。アクティブはバランス型がけん引役で、「グローバル3倍3分法ファンド」の1年決算型・隔月分配型(計6,394億円)、「東京海上・円資産バランスファンド」の毎月決算型・年1回決算型(計3,565億円)の4本がトップ5に入った。
「グローバル3倍3分法ファンド」はレバレッジを活用するリスクの高い運用、「東京海上・円資産バランスファンド」は円資産のみに投資するリスクの低い運用と、バランス型としては異なるタイプのファンドだが、アクティブの中では相対的に低コストという点は共通している。いずれも近年の投信販売で上位をキープしたファンドだ。売れ筋の一角にも低コスト化の流れが見られる。
一方、パッシブの方では先進国株式型への流入が目立つ。第6位が「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」(625億円)、第9位が「eMAXIS Slim先進国株式インデックス」(470億円)となるなど業界最低水準の低コストを目標に掲げる「eMAXIS Slim」シリーズが比較的好調だが、第8位に「楽天・全米株式インデックス・ファンド」(496億円)があるほか、トップ10圏外を見ても第11位に「ニッセイ 外国株式インデックスファンド」(370億円)、第14位に「SBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンド」(273億円)、第23位に「たわらノーロード先進国株式」(157億円)となり、競合他社のファンドも幅広く資金を集めている。
図表3:フィーレベル「安い」の純資金流入額トップ10(過去1年間)
| 順位 | ファンド名 | フィーレベルカテゴリー | 信託報酬等 (税込・%) |
純資金流入額 (過去1年・合計) |
|---|---|---|---|---|
| 1 | グローバル3倍3分法ファンド(1年決算型) | バランス・アクティブ | 0.48 | 4,105 |
| 2 | ティー・ロウ・プライス 米国成長株式ファンド | 先進国株式・アクティブ | 1.46 | 2,718 |
| 3 | グローバル3倍3分法ファンド(隔月分配型) | バランス・アクティブ | 0.48 | 2,290 |
| 4 | 東京海上・円資産バランスファンド(毎月) | バランス・アクティブ | 0.92 | 1,971 |
| 5 | 東京海上・円資産バランスファンド(年1回) | バランス・アクティブ | 0.92 | 1,594 |
| 6 | eMAXIS Slim米国株式(S&P500) | 先進国株式・パッシブ | 0.10 | 625 |
| 7 | ひふみワールド+ | 先進国株式・アクティブ | 1.63 | 578 |
| 8 | 楽天・全米株式インデックス・ファンド | 先進国株式・パッシブ | 0.16 | 496 |
| 9 | eMAXIS Slim先進国株式インデックス | 先進国株式・パッシブ | 0.10 | 470 |
| 10 | フィデリティ・USリートB(H無) | 国際REIT・アクティブ | 1.54 | 374 |
※期間:2019年4月〜2020年3月
出所:モーニングスター作成
先進国株式はポートフォリオのコアとなる資産であり、税込ベースで0.10%を切る水準までコスト競争が過熱している。また、トップ10入りしたパッシブ3本はいずれも「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」の対象ファンドで、積立投資のニーズの高まりを反映したものと言えそうだ。
ファンドのコストはその分確実にパフォーマンスの押し下げ要因となる。良好な市場環境下ではコストを差し引く前のリターンが高いため、投資家にとってコストの負担感は少なかったかもしれないが、コロナ危機下で経済・金融市場の不確実性が高まったいまは状況が異なる。株式の先安観が根強く、また債券利回りの低下などにより期待されるリターンの水準が低下する中で、低コスト意識がいっそう高まる可能性がある。
(坂本 浩明)
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