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アナリストの視点(ファンド)

3月の米国では「ファンド売り・MMF買い」が過去最高レベルに、今後の金利動向次第では大転換の可能性も

2020-05-21

3月はMMFへの流入額が過去最高の2倍、ファンドからの流出額は3倍に

 2020年3月にはS&P500指数(米ドルベース)が月間で▲12.5%の急落となり、1990年以降では2008年10月の▲16.9%、1998年8月の▲14.6%に次ぐ、過去3番目の下落率の高さとなったが、米国の投資家にリスク回避先として選好されたのがMMFだ。米国籍MMFの月次純資金流出入額をみると、2020年3月は6,846億ドル(約75兆円)の流入超過となっており、過去最高の流入超過額(当時)であった1999年9月の3,077億ドルの2倍以上に及んだ(図表1参照)。金融危機下にあった2008年10月から2009年1月にかけては、4カ月連続の流入超過となったものの、いずれの月も流入超過額は1千億円台にとどまっており、2020年3月の6千億円を超える流入超過額は単月としては極めて異例の規模だ。その後の2020年4月にはS&P500指数が月間で12.7%上昇しており、株式市場はV字回復を遂げたものの、同月のMMFは過去2番目の大きさとなる3,882億ドルの流入超過となっており、ファンドの投資家の安全性重視、様子見姿勢は継続している。

図表1:米国籍MMFの月間純資金流入超過額トップ5

図表1:米国籍MMFの月間純資金流入超過額トップ5

※純資金流出入額は米国モーニングスター推計値
※データ参照期間:1993年2月〜2020年4月(月次)
出所:モーニングスター作成

 対照的に、歴史的な資金流出に見舞われたのがMMF以外のファンドだ。ETFを含む米国籍ファンドの月次の純資金流出入額をみると、2020年3月は3,260億ドルの流出超過となり、過去最高の流出超過額(当時)であった2008年10月の1,037億ドルを3倍以上上回った(図表2参照)。つまり、2020年3月は、リスク資産を投資対象とするファンドから、安全性の高いMMFへの資金シフトが、「100年に一度」と言われた金融危機時を大幅に上回る規模で、かつ極めて短期間に起きたことになる。

図表2:米国籍ファンド(ETF含む)の月間純資金流出超過額トップ5

図表2:米国籍ファンド(ETF含む)の月間純資金流出超過額トップ5

※純資金流出入額は米国モーニングスター推計値
※データ参照期間:1993年2月〜2020年4月(月次)
出所:モーニングスター作成

急落局面でも米国株ETFは資金流入継続、債券は持続的な金利低下で米国株に迫る残高に

 一方で、歴史的な資金シフトとなった2020年3月でも、その中身をみると継続した点と大きな変化を示した点の双方があった。まず、継続した点は、ETFへの資金流入であり、2020年3月は90億ドルの流入超過と、2019年9月から7カ月連続の流入超過となった。2020年3月の内訳をみると、債券は208億ドル、海外株式は105億ドルのいずれも流出超過となる一方で、米国株式は322億ドルの流入超過となっており、米国株の急落局面でもETF経由では資金投入を継続した投資家が少なからずいたことになる。

 大きな変化を示したのは、ETFを除いたファンドでみた場合で、債券から流出が極めて大きくなった点だ。2020年3月の純資金流出入額を、分類では米国株式、海外株式、債券、その他の4つについて、さらにアクティブ・パッシブに分けてみると、パッシブ・海外株式が119億ドル、パッシブ・米国株式が93億ドルの小幅ながらもいずれも流入超過となる一方で、アクティブ・債券が2,122億ドル、パッシブ・債券が516億ドルのいずれも大幅な流出超過となった(図表3参照)。特にアクティブ・債券は、2019年1月以降連続していた流入超過が14カ月で途切れ、過去最高の流出超過額(当時)であった2013年6月の618億ドルを3倍以上上回った。

図表3:米国籍ファンド(ETF除く)の純資金流出入額の内訳(2020年3月)

図表3:米国籍ファンド(ETF除く)の純資金流出入額の内訳(2020年3月)

※純資金流出入超過額は米国モーニングスター推計値
※米国籍オープンエンドファンド(MMF、ETF等除く)の大分類(USカテゴリー)に基づく
出所:モーニングスター作成

 3月の米国市場では、株式が急落する過程で、10年国債利回りが前半には一時0.5%台まで低下したものの、中旬には一転して1.1%台まで急上昇したことなどを受けて、2020年3月末時点では9割以上の米国籍債券ファンドの1カ月トータルリターンがマイナスとなる一方で、1年トータルリターンでは6割弱、3年では8割強が依然としてプラスとなっていたこともあり、利益確定の解約が出やすかったものと推測される。ちなみに、2000年3月末時点のETFを除いた米国籍ファンドの純資産額は、債券は0.8兆ドル、米国株式は2.8兆ドル、債券に対する米国株式の比率は3.7倍と、かなりの開きがあったが、2020年3月末時点では債券が4.1兆ドルと、2000年3月末比では5倍に増加する一方で、米国株式は5.6兆ドルと、2倍程度の増加にとどまっており、債券に対する米国株式の比率も1.4倍にまで縮まった(図表4参照)。2000年代には4〜6%で推移していた米国の10年国債利回りが、2010年以降には概ね3%を上限としたボックス圏での推移、もしくはさらなる低下傾向が続いたことで、投資家は債券ファンドでは大きな損失を抱え込むことを想定しづらくなったことが、最高値を更新続けた米国株を上回るペースでの残高増となった。

図表4:米国の10年国債利回りと米国株式・債券ファンド比率の推移

図表4:米国の10年国債利回りと米国株式・債券ファンド比率の推移

※米国籍オープンエンドファンド(MMF、ETF等除く)の大分類(USカテゴリー)に基づく
※期間:2000年3月〜2020年3月(月次)
出所:モーニングスター作成

 以上の点からすると、2020年3月の米国籍ファンドは全体としてはリスク回避傾向が強まり、歴史的な資金シフトとなったが、その中身をみると、米国株ETFを中心に株式ファンドの一角へは資金流入がみられる一方で、金利低下局面で膨張し続けた債券ファンドの解約が急速に膨らみ、安全性を求めた資金がかつてない規模でMMFへと向かった。今後は、金利が上昇(債券価格が下落)した場合には、以前として過去最高水準に近く、かつ米国株に匹敵するほどの残高となった債券ファンドのパフォーマンスの悪化が懸念される一方で、万が一マイナス金利が導入されるようなことがあればMMFは一転して換金され、債券ファンドは解約がさらに膨らむことも予想され、米国市場の金利変化は資金動向に大きな影響を与えるターニングポイントとなる可能性が高い。

(吉田 誠)

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