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アナリストの視点(ファンド)

ベストの12カ月を取りこぼすとリターンは3分の1以下に低下、長期では上下動を抑えるメリットも限定的

2020-07-16

2020年上半期はパッシブへの流入超過額が過去最高を更新

 2020年上半期の一般投資家が購入可能なファンド(※)への純資金流出入額では、アクティブは1,294億円、パッシブは6,979億円のいずれも流入超過となり、特にパッシブは半期ベースではこれまで過去最高の流入超過額だった2018年下半期の4,851億円を大きく更新した(図表1参照)。月間の流入超過額でみると、2020年3月に過去最高となる3,203億円を記録したことが大きく寄与したものの、同月を含めて2020年上半期は6カ月中5カ月で流入超過となっている。過去には日経平均やTOPIXの下落局面では各指数の連動型ファンドを中心に資金が流入するものの、逆に上昇局面では流出するといった傾向が強かったが、そうした傾向にもやや変化の兆しが見え始めている。そこで今回は、改めて長期的な指数の変動についてみてみた。

(※)国内公募追加型株式投信(確定拠出年金及びファンドラップ専用、ETF等除く)、以下文章、図表内同一基準

図表1:パッシブファンドへの純資金流出入額(半期ベース)

図表1:パッシブファンドへの純資金流出入額(半期ベース)

※ 期間:2011年上期〜2020年上半期(半期)
出所:モーニングスター作成

先進国株式が23倍に上昇する過程でも、月別リターンは4割弱で下落

 具体的には、日本を含めた先進国株式に分散投資を行う代表的な指数の一つである「MSCIワールド(配当込み、円ベース)」(以下、先進国株式指数)について、1973年以降、2020年6月までの月次リターン(計569カ月)を参照したところ、主に2つの点が注目された。第一に、月次リターンがマイナスとなった月が全体の4割弱(216カ月)を占めた点だ(図表2参照)。先進国株式指数は47年かけて23倍に上昇したが、その過程では前月末よりも下落した月が、平均的には1年のうち4~5カ月程度はあったということになる。また、最も下落が続いた期間は9カ月連続、逆に最も上昇が続いた期間も16カ月連続にとどまっており、一方向の上昇・下落が続く方がむしろ珍しい。つまり、どこかの1年程度の期間を切り出せば、その多くはジグザグと上下動を繰り返しており、まれには上昇・下落の一方向のトレンドを描いているようにみえる場合があるものの、10年、20年、さらにもっと長期の変化という視点でとらえるならば、その切り出した1年は大きな右肩上がりの上昇トレンドの一場面にすぎない。

図表2:先進国株式指数の月次リターン分布

図表2:先進国株式指数の月次リターン分布

※ 先進国株式指数=MSCIワールド(配当込み、米ドルベース)の月末インデックス値×月末ドル・円レート
※ ドル・円レートは、1989年12月までは東京市場ドル・円スポットレート(17時、月末時点)、1990年1月以降は三菱UFJ銀行TTM
※ 期間:1973年1月〜2020年6月(月次)
出所:モーニングスター作成

 第二に、月次のリターンが±10%を超えた月は全体の4%(25カ月)にとどまっている点だ。先進国株式指数は2020年3月には▲13.64%と、過去7番目の下落率の高さとなったが、過去47年間で月間の下落率が15%を超えたのは1987年10月のブラックマンデー、世界的な金融危機下の2008年9月及び10月の計3カ月のみで、10%超の下落まで範囲を拡大してもわずか13カ月にとどまる。逆に、過去47年間で月次リターンが15%を超えて上昇したことは一度もなく、最も高かった1975年1月の13.53%を含めて、10%超の上昇となったのは12カ月にとどまった。平均的には4年間投資をしていれば、±10%の上昇、下落がそれぞれ1月ぐらいは訪れることになる。

わずか3カ月の取りこぼしでリターンは3割減、急騰・急落を全て避ける投資も長期のメリット乏しく

 では、47年間で2%しか発生していない月間リターンが10%を超える上昇局面を取り逃したとしたら、最終的に享受できるリターンにはどの程度の影響が出るだろうか。投資に関わるコストや税金などは考慮していないものの、先進国株式指数に1973年1月末に100万円を投資したと仮定し、2020年6月末時点での評価額を計算すると、47年間一貫して保有し続けていた場合には2,324万円(約23倍)となった。一方で、月次リターンの上昇率が高かった(11%を超えた)上位3カ月に投資を行わなかっただけで1,628万円(約16倍)の3割減となり、さらに10%を超える上昇となった12カ月の全てで投資を行わなかった場合には667万円(約7倍)と、3分の1以下にとどまった(図表3参照)。

図表3:先進国株式指数の累積リターン

図表3:先進国株式指数の累積リターン

※ 計算基準、期間は(図表2)と同じ
※ 「%超除外」は該当月のリターンがゼロ%であったと仮定して計算
出所:モーニングスター作成

 もっとも、急騰局面を取り逃したとしても、同時に急落局面を避けることができたしたらどうか。例えば、月次リターンが±5%を超えた月の全てを避けて投資を行えたと仮定し、同様に計算すると、2020年6月末時点では1,832万円(約18倍)となった。47年間一貫して保有し続けた場合と比較すると、最終的なリターンでは2割以上見劣りするものの、全期間中の2割弱の月(569カ月中102カ月)では±5%の月を避けた投資の方が上回っており、両者のリターン差は過度な変動を避けたがゆえの「安心料」ともみられないか。しかし、±5%の月を避けた投資の方が優位だった月の8割以上が、実は投資を開始した直後の7年以内に集中しており、その後は2008年のような極端な急落局面を除けば大きな上昇局面の取り逃しを繰り返すことで劣後する傾向が強まった。つまり、「安心料」を支払うメリットを享受しやすいのは投資の初期段階に集中しやすく、長期投資を前提とする投資家であれば大きな基準価額の変動を避けようとするメリットは乏しい。

 なお、実際に運用されているファンドでは、基準価額の変動率を定められた水準以下に抑えたり、一定の基準価額を下回ったりしないなどのコントロールを行うことで、過度な変動を抑えようとする運用が行われているものが一定の人気を集めているが、過度な変動を避けようとすることで結果的には上昇局面を取り逃すことになるという点では上記の計算結果と類似する部分がある。また、リスクを避けるコントロールを行う仕組みを維持するためには、投資家には一定のコスト負担が求められるため、長期のパフォーマンスの確実な押し下げ要因となる。大きな変動に対する不安や損失を避けたいという気持ちから「安心料」は仕方がないと考えることもあるかもしれないが、投資期間や損失の制限などの制約がない投資家であれば、そもそもの投資金額を下げておく、ポートフォリオ全体の中で考えて現金を一定以上保有しておく、投資時期や資産を分散するなどの対応でリスクを下げることも可能なほか、分かりやすいシンプルな投資で市場にとどまり続けることで大きな上昇局面を取り逃さずに成果を積み重ねておくことが、下落局面での心理的な安心感や余裕につながる場合も少なくない。

(吉田 誠)

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