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アナリストの視点(ファンド)

投資信託選びに重要な「為替ヘッジ」とは?

2020-09-24

 為替相場は様々な要因が複雑に絡み合い、専門家でも予想が難しいといわれている。たとえ投資している資産が順調に値上がりしても、為替レートの変動の影響を受け最終的に利益が出なくなることもありうる。そのような為替変動リスクを減らすことのできる仕組みが「為替ヘッジ」だ。投資信託では、多くのファンド名称で「為替ヘッジあり」、「為替ヘッジなし」といった文言が含まれている。今回は、このよく見聞きする「為替ヘッジ」について改めて説明し、為替ヘッジの有無によってファンドのパフォーマンスや特徴にどのような違いが出てくるのか考えてみたい。

為替ヘッジのコストは金利差?

 為替ヘッジとは、”将来の為替レート”をあらかじめ決めておき、為替による価格変動リスクを低減することである。例えば、以前1ドル=100円で購入していた米資産を売却し、ドルを円に戻す際に為替レートが大きく変動した場合でも1ドル=100円で交換する“約束”を最初にしておくことで、そのレートで円に戻すことができる。しかし、この約束ではあることを考慮しなければならない。それが「通貨間の金利差」だ。日本円とドルの金利(年利)それぞれ1%、3%だとすると、1年後には、100円は101円に、1ドルは1.03ドルに増える計算になる。「金利で将来もらえる利益分」も考慮されることで、最終的に将来の為替レートは1.03ドル=101円(1ドル≒98円)と決まり、結果的に日本円の資産価値は目減りしてしまう(図表1参照)。このように、金利差を考慮したうえで、将来と現在の為替レートにできる差は「為替ヘッジコスト」と呼ばれており、日本円の金利の方が高い場合には、この差は「為替ヘッジプレミアム」となり、日本円の資産価値は増えることになる。低金利である日本円を軸に為替ヘッジを行う場合は金利が相対的に低くなる場合が多く、為替変動の影響を低減できる代わりに、金利差が資産価値を引き下げる一定のコストになっていることには留意したい。

図表1:為替ヘッジコストの算出方法

図表1:為替ヘッジコストの算出方法

※為替ヘッジコストは、将来と現在の為替レートの差だが、通貨間の金利差に近似している
出所:モーニングスター作成

北米株式・北米債券で為替ヘッジの影響を確認。実際のパフォーマンスに差は出たのか

 為替ヘッジが投資信託でどのような影響を与えているのか確かめるため、2020年8月末までの過去20年間のモーニングスターカテゴリー「国際株式・北米」平均、「国際債券・北米」平均において、「為替ヘッジなし」から「為替ヘッジあり」を差し引いた差を、「円/米ドル」レートの推移とともにみてみると、円安下では、北米株式、北米債券ともに価格差が拡大していることが分かる。一方、リーマンショック前後で円高が進んだ際には、「為替ヘッジあり」が「為替ヘッジなし」の価格を超えることはなかったものの、北米株式、北米債券ともに価格差は縮小している。2020年8月末時点での差は、北米株式では32%、北米債券では51%となっており、為替の有無によってカテゴリー平均には大きなパフォーマンスの差がみられた。円安下では、(1)為替差益を受け取ることができ、(2)為替ヘッジコストが発生しない「為替ヘッジなし」が有利となり、価格差が拡大する。一方で円高下では、(1)為替差損を被らないため、「為替ヘッジあり」が有利であるものの、(2)為替ヘッジコストが発生するため、円安下ほど価格差は拡大しない可能性が高い点には注意しておきたい。

図表2:「為替ヘッジなし」と「為替ヘッジあり」の価格差

図表2:「為替ヘッジなし」と「為替ヘッジあり」の価格差

※期間:2000年9月〜2020年8月末(月次)
※円/米ドル = 「円/米国ドル(三菱UFJ銀行 外国為替TTMレート)」
※北米株式の差 = モーニングスターインデックス「国際株式・北米(為替ヘッジなし)(単純)」からモーニングスターインデックス「国際株式・北米(為替ヘッジあり)(単純)」を割り引いた値
※北米債券の差 = モーニングスターインデックス「国際債券・北米(為替ヘッジなし)(単純)」からモーニングスターインデックス「国際債券・北米(為替ヘッジあり)(単純)」を割り引いた値
出所:モーニングスター作成

 次に、標準偏差(価格変動のブレ幅)についてみてみると、ほぼ全ての期間で、北米株式、北米債券ともに「為替ヘッジあり」の方が低リスクになっていることが分かる。これは、為替ヘッジによって価格変動リスクが抑えられていることが影響している。また、長期間になるにつれ「為替ヘッジあり」と「為替ヘッジなし」の差は拡大しており、為替ヘッジが長期的なリスク抑制に作用していることが分かる。

図表3:「為替ヘッジなし」と「為替ヘッジあり」の標準偏差の差

図表3:「為替ヘッジなし」と「為替ヘッジあり」の標準偏差の差

※2020年8月末時点
※国際株式・北米「為替ヘッジなし」 = モーニングスターインデックス「国際株式・北米(為替ヘッジなし)(単純)」の過去1,3,5,10年間の標準偏差(年率)
※国際株式・北米「為替ヘッジあり」 = モーニングスターインデックス「国際株式・北米(為替ヘッジあり)(単純)」の過去1,3,5,10年間の標準偏差(年率)
※国際債券・北米「為替ヘッジなし」 = モーニングスターインデックス「国際債券・北米(為替ヘッジなし)(単純)」の過去1,3,5,10年間の標準偏差(年率)
※国際債券・北米「為替ヘッジあり」 = モーニングスターインデックス「国際債券・北米(為替ヘッジあり)(単純)」の過去1,3,5,10年間の標準偏差(年率)
出所:モーニングスター作成

国際株式型、国際債券型ファンドの本数分布は?

 国際株式型ファンド(※1)と国際債券型ファンド(※2)について、各モーニングスターカテゴリーの為替ヘッジ別に本数分布をみると、国際株式型全体に対して「為替ヘッジなし」の比率が85%となり、先進国カテゴリーで「為替ヘッジあり」が一定数ある一方で、新興国カテゴリーの「為替ヘッジあり」の少なさが目立った。これは、新興国通貨では日本円との金利差が大きく、高い為替ヘッジコストによって期待されるリターンを獲得できなくなることが一因であろう。株式による価格変動に加え、為替変動の大きい新興国資産を組み入れる場合、「為替ヘッジなし」のリスクはさらに高い水準となってしまう点は留意したい。

※1 国内公募追加型株式投信(確定拠出年金及びファンドラップ専用、ETF等含む)のうち、国際株式型に属するファンド
※2 国内公募追加型株式投信(確定拠出年金及びファンドラップ専用、ETF等含む)のうち、国際債券型に属するファンド

図表4:国際株式型ファンドの為替ヘッジの有無による本数分布

図表4:国際株式型ファンドの為替ヘッジの有無による本数分布

※2020年8月末時点
※国際株式型に属する各モーニングスターカテゴリー内のファンド本数を為替ヘッジ別に集計
出所:モーニングスター作成

 国際債券型全体に対して「為替ヘッジなし」の比率が75%となった。新興国カテゴリーでは、「エマージング・複数国」を除き、「為替ヘッジあり」の本数が少ない。一方で、先進国カテゴリーでは「為替ヘッジあり」の割合が高くなっている。国際株式型にくらべると、「為替ヘッジあり」の割合が高くなっているのは、分散投資ではポートフォリオ全体のリスクを下げるため債券を組み入れることが多く、債券ファンドを組み入れる際に低リスクの「為替ヘッジあり」が好まれていることが一因であろう。

図表5:国際債券型ファンドの為替ヘッジの有無による本数分布

図表5:国際債券型ファンドの為替ヘッジの有無による本数分布

※2020年8月末時点
※国際債券型に属する各モーニングスターカテゴリー内のファンド本数を為替ヘッジ別に集計
出所:モーニングスター作成

 ある投資信託を買うことまでは決まったが、「為替ヘッジなし」、「為替ヘッジあり」のどちらを選べばいいか分からない場合には、これまで述べた為替ヘッジの特性と自身の許容リスクなどと照らし合わせて、最適なファンドを選べるようにしたい。

(金子 勇大)

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