youtube fund_beginer fund_search fund_look



アナリストの視点(ファンド)

日経平均は配当込みではすでにバブル越え、海外指数では込みは除くの2倍のリターンでファンドの表示にも注目

2020-12-10

配当除くなら、日経平均もTOPIX史上最高値をまだ3割以上下回っているが…

 日経平均は11月には1991年以来、約29年ぶりに26,000円台を回復した。12月に入っても上昇基調は続き、2日と3日は2日連続で26,800円を上回っているものの、1989年12月29日につけた史上最高値の38,915円との比較では、いまだに3割以上下回った水準にある(図表1参照)。日経平均の知名度は高いものの、配当を考慮していない「配当除く(無し)」指数であるため、「配当込み(有り)」指数である日経平均トータルリターンインデックスをみると、1989年12月29日の43,200円に対し、2020年11月25日には43,404円と、すでに約31年ぶりに史上最高値を更新しており、12月には44,000円台を維持する場面もあった。

図表1:日経平均の推移

図表1:日経平均の推移

※ 期間:1989年12月末〜2020年11月末(月次)
出所:モーニングスター作成

 ちなみに、TOPIXが史上最高値をつけたのは、日経平均より約2週間早い1989年12月18日で、2020年11月末時点ではいまだ4割程度下回っている。ただし、この場合のTOPIXも「配当除く」であり、「配当込み」指数でみた場合には、2020年11月末時点では史上最高値にあと6%まで迫った。つまり、日経平均、TOPIXのいずれでみても、「配当除く」と「配当込み」の指数は、約30年間の累積では3割以上、年率換算では1%以上の差がついたことになる。

海外株式では配当除く・込みの指数差は年率2%越え

 では、海外の株式指数では、同じ様な差がついているのだろうか。2020年11月末までの過去30年間の米ドルベースの年率換算リターンをみると、「配当込み」の株式指数の全世界は8.3%、先進国(除く日本)は9.6%、新興国は9.3%、米国は10.7%となり、いずれも「配当除く」を2%以上上回っていた(図表2参照)。日本の差よりは大きいものの、年間で2%程度の差ならそれほど大きくないと感じるかもしれないが、過去30年の累積リターンでは、例えば全世界は「配当込み」では10倍以上に上昇したのに対し、「配当除く」では5倍以下の上昇にとどまっており、両者の差は2倍以上に開いた。

図表2:海外株式指数の30年リターン比較(米ドルベース)

図表2:海外株式指数の30年リターン比較(米ドルベース)

※ 2020年11月末時点
※ 全世界=MSCIオールカントリー・ワールド・インデックス、先進国=MSCIコクサイ・インデックス、新興国=MSCIエマージング・インデックス、米国=S&P 500
※ 「配当込み」は、MSCIのオールカントリー・ワールドやエマージングなどのネット(課税後)リターンの基準日が2000年のため、グロス(課税前)リターンを使用
出所:モーニングスター作成

 また、全世界、先進国、米国は「配当除く」の「配当込み」のいずれもが、新興国株は「配当込み」が月末ベースでは2020年11月が史上最高値となっているものの、新興国の「配当除く」だけは2007年11月がいまだ史上最高値となっており、2020年11月末時点では1割程度下回る。ただし、「配当除く」指数が10年以上にわたり高値を更新できないことをとらえて、新興国を「失われた…」と表現することはほとんどない。長期での2倍に及ぶリターン差や、株式を保有していれば配当を受け取れることからすれば、「配当込み」の方で評価すべきだろう。

純資産額ランキング上位の海外株ファンドのうち、「配当込み」との比較は1本のみ

 では、実際のファンドの運用では、大きな差となる「配当除く」と「配当込み」は比較対象としてどの程度意識され、設定・開示されているのだろうか。2020年11月末時点の純資産額ランキング上位10ファンドをみると、7本が海外株式、2本が海外REIT、1本がバランスとなったが、直近の月報をみると、海外REITの2本はいずれも「配当込み」指数がベンチマークとして記載されていたものの、海外株では7本中6本がベンチマーク、参考指数のいずれも記載がなかった(図表3参照)。ベンチマーク等を設定、記載しない理由としては、(特定の指数を上回ることではなく)安定した分配金の支払いを重視している、もしくは特定のテーマに限定していることなどから比較対象として適切な指数がない、などとされることもある。ただし、分配金の支払いはREITも株式も同様であり、また、特定のテーマに限定して投資を行うのは幅広く分散するよりも優位な運用成績が期待されるため、と考えるのであれば、比較対象を設定、記載しない理由としては十分とは言い難い。

図表3:純資産額ランキングトップ10

順位 ファンド名 運用会社 カテゴリー 純資産額
(百万円)
ベンチマーク/参考指数
1 ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型) ピクテ 国際株式・グローバル・含む日本(F) 992,364
2 グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし) アセマネOne 国際株式・グローバル・含む日本(F) 779,688
3 グローバル・プロスペクティブ・ファンド 日興 国際株式・北米(F) 699,311
4 アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース
毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型
アライアンス 国際株式・北米(F) 659,778 S&P500(配当込み、円ベース)
5 グローバル・ハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし) アセマネOne 国際株式・グローバル・含む日本(F) 650,317
6 東京海上・円資産バランスファンド(毎月決算型) 東京海上 安定成長 646,375
7 netWIN GSテクノロジー株式ファンド Bコース(為替ヘッジなし) ゴールドマン 国際株式・北米(F) 624,649
8 次世代通信関連 世界株式戦略ファンド 三井住友TAM 国際株式・グローバル・含む日本(F) 620,335
9 ダイワ・US-REIT・オープン(毎月決算型)Bコース(為替ヘッジなし) 大和 国際REIT・特定地域(F) 540,519 FTSE NAREIT エクイティREIT・
インデックス(配当込み、円ベース)
10 フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし) フィデリティ 国際REIT・特定地域(F) 526,673 FTSE NAREIT エクイティREIT・
インデックス(配当込み、円ベース)

※ 2020年11月末時点
※ 国内公募追加型株式投信(確定拠出年金及びファンドラップ専用、ETF等除く)
出所:モーニングスター作成

 投資家にとっては、ファンドの運用成績の巧拙を判断する材料の一つとしてベンチマークや参考指数は重要だ。ベンチマークを設定・記載しない場合はもちろんのこと、長期では倍以上のリターン差がつく可能性がある「配当除く」を使用している場合には、その理由を含めてもっと明確に、分かりやすい開示を心掛けるべきだろう(「配当込み」が多くの指数で計算されるようになった近年に設定されたファンドは特に)。なお、参考として米国籍の米国株アクティブファンドをみると、2020年11月末時点では1,800本以上が運用されているが、米国モーニングスターのデータベースでは目論見書には9割以上のファンドに何かしらのベンチマークが記載されていることが確認でき、そのほぼ全てが「配当込み」指数となっている。

(吉田 誠)

「アナリストの視点」よく読まれている記事(過去1週間)

アナリストの視点はRSSでも配信しています

バックナンバー