アナリストの視点(ファンド)
資金フローにみる2020年の人気ファンド−ポストコロナ関連の新設ファンドが熱い
2021-01-14
コロナショックに揺れた2020年。資金フローから投資家の注目を集めたファンドを確認したところ、米国など先進国の株式に投資するファンドが優勢となり、中でも、ポストコロナ関連としての切り口を有する新設ファンドが強い存在感を示した。
大分類別では「国際株式型」がトップ、前年の流出超過から大幅な流入超過に転換
2020年の国内公募追加型株式投信(ETF除く)の純資金流出入額(12月はモーニングスター推計値、以下同じ)をモーニングスター大分類別にみると、国際株式型が3兆5,930億円の純資金流入となり、全10分類中でトップ。1,872億円の純資金流出となった前年から一転、大幅な純資金流入となった。前年トップであったバランス型は第2位となったが、純資金流入額は4,533億円と前年の1兆3,683億円から6割以上も減少。国際株式型への資金集中が際立った(図表1)。
図表1:大分類別の純資金流出入額

※2020年のうち12月はモーニングスター推計値
出所:モーニングスター作成
北米株式型が前年の純資金流出から切り返し
次に、大分類よりも細かい分類であるモーニングスターカテゴリー別に2020年の純資金流入額上位5カテゴリーをみると、1兆7,826億円の純資金流入でトップとなった「国際株式・グローバル・含む日本(為替ヘッジなし)」以下、「国際株式・北米(為替ヘッジなし)」(1兆2,664億円の純資金流入)、「国際株式・グローバル・除く日本(為替ヘッジなし)」(4,535億円の純資金流入)、「安定成長」(3,018億円の純資金流入)、「国際株式・北米(為替ヘッジあり)」(2,988億円の純資金流入)となり、前年トップであった「安定成長」以外はいずれも国際株式型が占めた。また、「国際株式・グローバル・含む日本(為替ヘッジなし)」、「国際株式・グローバル・除く日本(為替ヘッジなし)」が前年に続いて上位5位内となった一方で、「国際株式・北米」が為替ヘッジあり・なしともに前年の純資金流出から大きく切り返した(図表2)。2020年はポストコロナ関連銘柄物色を背景に、米国でナスダック総合指数が大幅に上昇。国内では、米国のグロース株を中心に投資するファンドが投資家の人気を集めた。
図表2:2020年純資金流入額上位5カテゴリー

※2020年のうち12月はモーニングスター推計値
※(F)為替ヘッジなし、(H)為替ヘッジあり
出所:モーニングスター作成
「未来の世界(ESG)」、「ゼロ・コンタクト」−設定初年度で残高上位に浮上
個別ファンドの2020年の純資金流出入をみると、純資金流入額上位5ファンドのうち4ファンドを国際株式型のファンドが占めた(図表3)。
トップは「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし)」(愛称:未来の世界(ESG))で7,905億円の純資金流入。同ファンドは、日本を含む世界の上場企業の中から、優れたESGへの取り組み等を通じて長期にわたって持続的に高い成長が期待できる企業の株式に投資する。コロナショック後の経済・社会再生において環境などESG(環境・社会・企業統治)に対する注目度が一段と高まったこともあり、2020年7月の設定から高水準の純資金流入が継続。2021年1月13日時点の純資産残高は8,897億円に達し、国内公募追加型株式投信(ETF除く)の中で第3位となっている。2020年の代表的なファンドであるだけでなく、設定初年度にして国内を代表するファンドの一つとなっている。
2020年11月末時点のポートフォリオをみると、国・地域別組入比率トップは米国で72.9%、業種別組入比率トップは情報技術で41.8%。カテゴリーは「国際株式・グローバル・含む日本(為替ヘッジなし)」であるが、米国グロース株への投資比率が高い。
図表3:2020年純資金流入額上位5ファンド
ファンド名 | 運用会社 | カテゴリー名 | 20年純資金流入額 (億円) |
純資産残高 (億円) |
---|---|---|---|---|
グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし) | アセマネOne | 国際株式・グローバル・含む日本(F) | 7,905 | 8,897 |
デジタル・トランスフォーメーション株式ファンド | 日興 | 国際株式・グローバル・含む日本(F) | 3,818 | 4,961 |
アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型 | アライアンス | 国際株式・北米(F) | 3,071 | 7,164 |
投資のソムリエ | アセマネOne | 安定 | 2,046 | 3,986 |
テトラ・エクイティ | 三井住友DS | 国際株式・北米(F) | 1,863 | 2,009 |
※2020年純資金流入額のうち12月はモーニングスター推計値
※純資産残高は2021年1月13日時点
※(F)為替ヘッジなし
出所:モーニングスター作成
第2位は「デジタル・トランスフォーメーション株式ファンド」(愛称:ゼロ・コンタクト)で3,818億円の純資金流入。同ファンドは日本を含む世界の上場企業の中から、ゼロ・コンタクト・ビジネス(非接触型ビジネス)関連企業の株式に投資する。コロナウイルスの感染が拡大する中、テレワークなど対人非接触ニーズの高まりから投資家の関心を集め、2020年7月の設定から資金流入が継続。2021年1月13日時点の純資産残高は4,961億円で、国内公募追加型株式投信(ETF除く)の中で第13位となっている。「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし)」と並んで、2020年を代表するファンドの一つであると同時に、設定初年度して国内を代表するファンドとなった。
2020年11月末時点のポートフォリオをみると、国・地域別組入比率トップは米国で63.9%、業種別組入比率トップはソフトウェア・サービスで43.8%。「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし)」と同じく、カテゴリーは「国際株式・グローバル・含む日本(為替ヘッジなし)」であるが、米国グロース株への投資比率が高い。
第3位と第5位にはカテゴリー「国際株式・北米(為替ヘッジなし)」に属するファンドが入った。「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」は米国の成長株に投資する。「テトラ・エクイティ」は、S&P500先物を機動的に活用して米国株式市場の上昇・下落両局面における収益の獲得を目指すファンド。米国株式市場において、日中に発生するトレンドを始め、月初トレンド、月中トレンド、月末トレンドという4つのトレンドに着目し、トレンドを捉える4つの戦略を組み合わせる。
なお、第4位の「投資のソムリエ」はバランス型ファンド。国内・先進国・新興国の株式と債券、及び国内・先進国のREITに分散投資する。分散投資に加えて、相場下落の危険性が高まった場合には日次で安定資産や現金等の比率を高める戦略を通じて、基準価額の下落抑制を図る。コロナショック時の2020年3月にプラスの月次リターンを確保したことで、大きな損失を抑制しながら中長期的なリターンの積み上げを狙うスタンスが改めて投資家の関心を集めた。
2021年の世界の株式市場は、米バイデン次期政権による追加経済対策への期待感などから上昇基調で始まった。一方で、コロナウイルスの世界的な感染拡大は止まらず、警戒感が拭えない状況にある。2021年も米国を中心としたポストコロナ関連企業への関心が、そしてそれらの銘柄に投資する国際株式型ファンドの人気が継続するか注目される。
※2020年12月30日配信 年末年始特集より一部加筆修正
(武石 謙作)