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アナリストの視点(ファンド)

DC専用で目立つパッシブ・バランス・低コスト、口座はDCを含めた総合的な管理が重要

2021-08-12

DC経由での投資信託の純資産残高が10兆円越えの可能性

 2021年には確定拠出年金(DC)における投資信託の純資産残高が10兆円を超える可能性がある。企業年金連合会の公表資料によると、DCの2020年3月末時点における投資信託の純資産残高は「企業型」が6.5兆円、「個人型(ideco)」が1.0兆円となっており、2017年3月末時点との比較では「企業型」は3割、「個人型」は約2倍のいずれも大幅増加となっている。

 そのDCの投資信託には「専用」と「共通」のいずれかの経由で投資を行うことになるが、モーニングスターの調べでは2020年3月末時点における「専用」の純資産残高は5.6兆円と、全体の7割強を占めており、2017年以降の3月末時点ではいずれも7割以上の比率で推移している(図表1参照)。2021年3月末時点における「専用」の純資産残高が7.7兆円で、「共通」の比率が過去と同水準だと仮定すると2兆円を大きく上回ることになり、両者の合計は2021年で10兆円の大台を超えたものと推測される。

図表1:確定拠出年金における投資信託等の純資産残高の推移

図表1:確定拠出年金における投資信託等の純資産残高の推移<

※ 「全体(合計値)」は企業年金連合会公表の「確定拠出年金統計資料(2020年3月)」のうち、投資信託等の企業型と個人型の合計値(投資信託等には金銭信託及びMMF等も含む)
※ 「DC専用」はモーニングスターによる国内公募追加型株式投資信託のDC専用の集計値、「共通」は「全体」から「DC専用」を引いた概算値
※ 期間:2017年月〜2021年(各3月末時点)
出所:モーニングスター作成

 なお、「共通」とは、例えば『セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド』などのように、DC経由であってもなくても投資家は同一の投資信託を購入するもの、「専用」とは『ひふみ年金』などのDC専用の投資信託を指す。『ひふみ年金』は『ひふみプラス』と同一のマザーファンドに投資を行っており、運用の中身は実質的には同一だが、『ひふみ年金』の方が信託報酬は低く設定されている点で異なる。「共通」の投資信託の純資産残高のうち、どの程度がDC経由なのかは外部からは分からないため、以下の集計にあたっては「専用」のみを対象としている。

DC専用のパッシブ比率は7割弱、海外株式・債券を中心にコスト面での優位性も目立つ

 では、DC全体の7割以上を占める「専用」の投資信託には具体的にどのような特徴があるだろうか。全ての国内公募投資信託の中から、DC専用のほか、ファンドラップ専用、ETFを除いた一般的な投資家が購入可能な投資信託を「一般」と定義して比較すると、2021年3月末時点における純資産額比率では、パッシブの割合は「一般」の13%に対し、「専用」は66%となっていた。

 大分類別では、「一般」では海外株式が44.1%と突出して高く、バランスが15.6%、海外債券が13.9%などとなっているのに対し、「専用」ではバランスが35.7%と最も高く、海外株式は24.3%、国内株式は19.9%などとなっている(図表2参照)。DCでは、一本の投資信託で分散投資が行え、投資比率の変更・リバランスなどのメンテナンスの必要が無いバランスを選ぶ投資家が目立つのも特徴的だ。

図表2:大分類別純資産残高比率

図表2:大分類別純資産残高比率

※ 一般=国内公募追加型株式投信(DC及びファンドラップ専用、ETF等除く)
※ 2021年3月末時点
出所:モーニングスター作成

 「専用」はコスト面での優位性も高い。2021年3月末時点における大分類別の信託報酬等(税込)平均をみると、海外債券では0.79%、海外株式では0.67%いずれも「専用」が「一般」を下回り、他の5つの大分類のいずれも「専用」が下回っていた(図表3参照)。個別の投信信託の信託報酬等をみても、例えばアクティブでは前記の『ひふみプラス』の1.08%に対し、『ひふみ年金』は0.84%となっている。パッシブである『DIAM外国株式パッシブ・ファンド』と『DIAM外国株式インデックスファンド <DC年金>』は同じマザーファンドに投資を行うが、信託報酬等は「一般」である前者の0.39%に対し、「専用」である後者は0.28%となっており、DC経由の方がコストを抑えて投資を行うことができる。

図表3:大分類別信託報酬等平均比較

図表3:大分類別信託報酬等平均比較

※ 一般=国内公募追加型株式投信(DC及びファンドラップ専用、ETF等除く)
※ 信託報酬等は税込、単純平均
※ 2021年3月末時点
出所:モーニングスター作成

バランスの配分比率変更型と長期実績を有するパッシブのコストの確認を

 以上のように、「専用」はパッシブ、バランス、低コストという傾向を示しているが、実際にDC経由で投資信託を選択する際には2つの点に注意したい。第1に、人気のバランス内でのファンドの選択だ。DCのバランスでは市場環境の変化に応じて配分比率を変更するタイプ(配分比率変更型)が資金を集めている。配分比率変更型を選択する投資家が多いのは、できるだけ大きな損失を抱えこみたくないという意識が影響していると推測されるが、仮に株式の比率を下げて下落局面をうまく乗り切ったとしても、その後も低比率を維持したために大きな反発局面を取り逃すこともあり、長期的には思ったほどの投資成果を得られない場合も少なくない。また、配分比率変更型は、固定型よりもコストが高い傾向にあり、中長期的に運用成績の大きな押し下げ要因となる点にも注意が必要だ。

 第2に、DC内で選択可能な投資信託が必ずしも低コストとは限らない点だ。「専用」の6割以上は2010年までに設定されており、信託報酬等のコストは当時としては低かったし、現在の「平均」も低いことから低コストの投資信託を選びやすい傾向にはある。ただし、近年はパッシブ全体の低コスト化が急速に進む中、あらたに低コストの投資信託を追加していない場合、資産によってはDC内で選択できる投資信託のコストは現在の水準では高い可能性もある。実際、「専用」の中には日本を除いた先進国株式指数連動型で信託報酬等が1%前後で、かつ純資産残高が100億円をこえるのも複数あるが、現在は同指数連動型で最も低いのは0.1%台で、両者の年間のコスト負担差は8〜9倍に及ぶ。こうした場合、例えばDC経由ではTOPIX連動型、その他の口座では日本を除いた先進国株式指数連動型といった使い分けを行うことで、自らのポートフォリオ内では低コストの日本を含めた先進国株式指数連動型とすることができる。

 その他にも、先進国と新興国、株式と債券など様々な組み合わせが考えられ、必ずしもDC内だけ、その他の口座内だけそれぞれ完結させる必要はない。あくまでも自己のポートフォリオ全体の中ではどうか、という視点で考えてみるとこと重要だ。なお、コストの低さや分かりやすさだけを重視するあまり、どの口座でもS&P500指数連動型や日経平均連動型だけに集中して投資をしたり、とにかく分散をしようと様々な種類のバランスに投資を行い、最終的には自らのポートフォリオ内での国内株式、海外株式、債券の構成比率がどの程度になっているかは分からない、といったことは避けるべきだ。

(吉田 誠)

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