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アナリストの視点(ファンド)

増加するノーロード投信、国内株式ファンドの購入時手数料控除後リターンで検証

2021-10-14

 証券取引にかかる手数料等の高さを見直す動きがあり、投資信託の証券会社での対面販売や銀行窓販等において購入時手数料が0のいわゆる「ノーロード投信」が近年増えている。購入時の手数料の低さは、投資信託に対する敷居を低くし、購入時手数料0というお得感を与えると思うが、実際にノーロード投信は「お得」といえるのか、購入時手数料がかかるファンドと比べたときの優劣を見ていきたい。

注目されるノーロード投信、20年で25倍の本数に

 まず、2000年以降の投資信託全体の中でノーロード投信の本数の推移を確認してみる。2000年末時点のノーロード投信は、インデックスファンドでは「しんきん インデックスファンド225」など5本しかなく、その他は公社債投信やバランスファンドが主に占めていた。その後2000年代後半から「eMAXIS 先進国株式インデックス」などの外国株式インデックスを参照とするパッシブファンドが急激に増加した。アクティブファンドでは2000年代の初めは債券ファンドやバランスファンドが多かったが、2010年過ぎから株式ファンドでもノーロード投信の本数が増加した。

 2020年末にはアクティブファンド233本、パッシブファンド245本の計478本となっており、2000年末と比較すると約25倍に増加している。特にパッシブファンドは同期間で49倍に増加しており、その注目度の高さ、需要の高まりが伺われる。

図表1:ノーロード投信の本数推移

図表1:ノーロード投信の本数推移

※ 国内公募追加型株式投信(DC及びファンドラップ専用、ETF等除く)
※ 期間:2000年〜2020年(年次)
出所:モーニングスター作成

 購入時手数料が証券会社や銀行によって税込みで3%を超える投資信託が手数料0で購入できれば、投資信託を購入しようとしている人にとって、とても魅力的に聞こえるだろう。ただ、ご承知のように、投資信託によってそれぞれ運用成績は異なり、信託報酬等の基準価額に反映されている運用コストがかかっていることは念頭に置いておきたい。

国内株式ファンドで検証、優位性を発揮するものの、リターンへの影響は限定的

 次に、主に国内株式に投資する投資信託を、アクティブファンド、パッシブファンドに分け、トータルリターンの平均(単純平均)の購入時手数料控除後のリターンを1年、3年、5年、10年の期間で比較する。「購入時手数料控除後」は、便宜的にトータルリターン(年率)から、保有年数で割った購入時手数料を差し引いて算出している。例えば5年の購入時手数料控除後のリターンは「5年トータルリターン(年率)−購入時手数料(税込)/5」となる。前述の算出の式からも分かるように、長期保有するほど購入時手数料はリターンに対して逓減していくため、リターンに与える影響は小さくなっていく。

図表2:トータルリターンの平均と購入時手数料控除後のリターンの平均の比較

トータルリターン 購入時手数料
(税込)
信託報酬等
(税込)
1年 3年
(年率)
5年
(年率)
10年
(年率)
アクティブ ノーロード投信 24.45% 5.52% 12.01% 13.63% 1.12%
ノーロード投信以外
購入時手数料控除後
24.80% 5.54% 11.88% 13.54% 3.20% 1.57%
-0.34% -0.03% 0.13% 0.09% -0.45%
パッシブ ノーロード投信 27.39% 7.17% 12.21% 13.38% 0.35%
ノーロード投信以外
購入時手数料控除後
25.21% 6.11% 11.59% 13.14% 2.09% 0.61%
2.18% 1.06% 0.63% 0.24% -0.25%

※ モーニングスターで「国内株式」に分類される国内公募追加型株式投信(DC及びファンドラップ専用、ETF等除く)
※ 「購入時手数料控除後」=トータルリターン(年率)−購入時手数料/各期間(年)
※ 「差」=ノーロード投信リターン平均−ノーロード投信以外購入時手数料控除後リターン平均
※ 購入時手数料及び、信託報酬等は該当ファンドの平均
※ 購入時手数料は目論見書記載の上限手数料
※ 2021年9月末時点
出所:モーニングスター作成

 購入時手数料控除後で比較すると、パッシブファンドでは「ノーロード投信」の方がいずれの期間も優位となっており、短期ではその傾向が顕著となった。アクティブファンドでは、いずれの期間も「ノーロード投信」と「ノーロード投信以外」の差は±0.5%未満に収まっており、さほど大差がない。また、運用成績の悪いファンドもあれば、極めて良いファンドもあるため、長期で運用成績の極めて良いファンドを保有する場合は購入時手数料の有無はあまり影響がないだろう。

購入時には購入時手数料よりも運用成績やレーティングなどの確認を

 最後に、「ノーロード投信」であればより購入時手数料0の恩恵をより多く受けられる相対的に購入時手数料の高いアクティブファンドの個別ファンドを確認してみる。アクティブファンドの中で10年トータルリターン(年率)から購入時手数料を控除したリターンが高かった上位10ファンドをピックアップすると、上位10本中1本「マネックス・日本成長株ファンド」のみが「ノーロード投信」となり、長期で保有する場合ノーロード投信であることのメリットは目立たない。スタイル別では、中小型株を主な投資対象とするファンドが目立つ。2021年9月末時点の純資産額をみると10本中5本が100億円以上の純資産額があり、モーニングスターレーティングは10本中4本が5ツ星、5本が4ツ星とレーティングの高いファンドが並んだ。

図表3:購入時手数料控除後の10年トータルリターン(年率)上位10ファンド(アクティブファンド)

順位 ファンド名 運用会社 購入時手数料
(税込)
信託報酬等
(税込)
リターン
(年率)
購入時手数料
控除後
リターン
純資産額
(億円)
MS
レーティング
1 DIAM 新興市場日本株ファンド アセマネOne 3.30% 1.67% 34.34% 34.01% 186.69 ★★★★★
2 日本新興株オープン 日興 3.30% 1.67% 24.81% 24.48% 142.95 ★★★★
3 SBI 中小型成長株ファンド ジェイネクスト SBIアセット 3.30% 1.65% 24.30% 23.97% 84.81 ★★★★★
4 MHAM 新興成長株オープン アセマネOne 3.30% 1.87% 23.83% 23.50% 387.91 ★★★★
5 マネックス・日本成長株ファンド アセマネOne 0.00% 1.62% 23.48% 23.48% 55.37 ★★★★
6 新成長株ファンド 明治安田 3.30% 1.87% 23.56% 23.23% 383.99 ★★★★★
7 情報エレクトロニクスファンド 野村 2.20% 1.56% 22.90% 22.68% 174.64 ★★★★★
8 SBI 中小型割安成長株ファンドジェイリバイブ SBIアセット 3.30% 1.87% 22.46% 22.13% 66.61 ★★★★
9 きらめきジャパン アセマネOne 3.30% 1.76% 22.30% 21.97% 12.02 ★★★
10 ジャパニーズ・ドリーム・オープン 三菱UFJ国際 3.30% 1.87% 22.19% 21.86% 65.92 ★★★★

※ モーニングスターで「国内株式」に分類される国内公募追加型株式投信(DC及びファンドラップ専用、ETF等除く)
※ 2021年9月末時点
出所:モーニングスター作成

 アクティブファンドの醍醐味はその運用プロセスやファンドマネジャーの手腕によって大きなリターンを得られる可能性があることかと思う。一方、過去に良い成績を出しているファンドでも将来の成績が約束されているわけではないため、インデックスファンドでコストを抑えた資産運用を行うことも選択肢の一つかと思う。ただ、いずれの場合も、購入時の手数料だけに注目するのではなく、ファンド自体の運用成績や運用プロセス、信託報酬等の諸費用なども総合的に確認したうえで購入したい。

(村上 瑞季)

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