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ファンドニュース



積立投資の新潮流 レバレッジバランスファンドへの資金流入が加速

2019/11/19 10:00

 投資信託市場に「レバレッジバランスファンド」という新しい大きな波が押し寄せている。分散投資を実行し、その上で先物取引等を使って実際の投資金額(ファンドの純資産)の数倍の投資した状態をつくる運用手法で、昨年10月に日興アセットマネジメントが「グローバル3倍3分法ファンド」を設定し、約1年間で「1年決算型」「隔月分配型」の2コースで合計残高4250億円を超える大ヒット商品となった。今年になってアストマックス投信投資顧問「ウルトラバランス世界株式」(設定日:8月23日)、大和投資信託「米国3倍4資産リスク分散ファンド」(同:10月15日)、楽天投信投資顧問「楽天・米国レバレッジバランス・ファンド」(同:11月5日)など、レバレッジを効かせたバランスファンドの設定が続いている。

◆投信に新たな価値をもたらした「グローバル3倍3分法ファンド」

 嚆矢となった「グローバル3倍3分法ファンド」の開発を主導した日興アセットマネジメントの商品開発第一部長の有賀潤一郎氏は、「分散投資は儲からないという投資家のイメージを覆したいと考えた。分散された効率的なポートフォリオのままで、レバレッジをかけて大きなエクスポージャーを取ることで、現代ポートフォリオ理論で説明される有効フロンティアよりも高いリスク当たりリターンを得ることが理論上は可能だ。これを誰もが利用できる公募投信の形で実現したいと考えた」という。2003年に設定された「財産3分法ファンド」から15年余りの歳月を経て、「グローバル3倍3分法ファンド」は設定された。

 従来のレバレッジファンドとは、「日本株ブル型」など株価の値動きを2倍、3倍に増幅することに使われ、短期のトレード目的に利用されてきた。ところが、「効率的な分散状態」を維持したままで、ファンド純資産の3倍のポジションを取る「グローバル3倍3分法ファンド」は、「株式よりも低いリスクで、より高いリターンをめざす、積立投資向きのファンドなっている」という。

 実際に、日興アセットが行った2003年3月末〜2018年9月末までの約15年間のシミュレーションによると、この間、日本株式のリスクは年率17.8%、先進国株式が同18.4%、先進国REITが同21.6%だったことに対し、「グローバル3倍3分法ファンド」は同16.0%とリスクの水準が低く、リターンについては、日本株式が年率8.7%、先進国株式11.2%、先進国REIT11.6%に対し、ファンドは同16.8%と株式やREITを上回るリターンが確認できた。

 もちろん、同ファンドの運用成績が、常に優れた成績を残しているわけではない。シミュレーションによる暦年の騰落率では、2008年にはマイナス38.4%と大きく落ち込んだ年もあり、2014年のようにプラス49.7%と大きなリターンをあげた年もある。2018年10月の設定来の実際のパフォーマンスを月次で見ると、2018年12月は月間マイナス5.52%になった。それでも、2019年10月末までの1年間のトータルリターンはプラス28.74%とバランス(安定成長)にカテゴライズされる331本中でトップの成績を残している。

 有賀氏は、投資する各資産の過去15年間の相関係数を示して、「株式とREITは相関係数がプラス1に近く、同じ方向を向いて動いているが、先物で投資する先進国(日本・米国・ドイツ・英国・豪州)の国債は、株式・REITに対して見事な逆相関の関係にある。海外株式と豪州国債(先物)はマイナス0.5の逆相関関係にあり、このような組み合わせの妙が、分散効果となって高いリターンとして返ってきている」と解説する。

 シミュレーション結果は、過去の振り返りであり、組み入れ資産の相関係数が今後も継続するものではない。この点では、有賀氏も「組み入れる資産の組み合わせ、また、レバレッジ倍率については他の可能性を否定しない。『グローバル3倍3分法ファンド』が絶対唯一の仕組みというわけではない」とする。ファンドの仕組みとしてのシンプルな分かりやすさ、また、レバレッジのリスク水準についても「株式を下回る」ことを念頭に「3倍」に設定したという。

 新たに設定されているレバレッジバランスファンドの仕組みは、「ウルトラバランス世界株式」が世界株式80%、米国金先物35%、債券175%で、レバレッジ比率290%(2.9倍)。「米国3倍4資産リスク分散ファンド」は米国株式と米国債券、米国金先物、米国REITで300%、そして、「楽天・米国レバレッジバランス・ファンド」は米国株式90%と米国国債270%でレバレッジ比率360%(3.6倍)で運用するなど、それぞれに特徴のある資産を組み入れてポートフォリオを作っている。どの組み合わせ、どの倍率が最も良いのかということは、各資産の相関関係が事前には予測できないだけに、各ファンドの運用結果を待つしかない。

◆資産の組み合わせと倍率で運用成績は様々

 資産の組み合わせだけを検証すると、同じ日興アセットが運用する「財産3分法ファンド(不動産・債券・株式)資産成長型」(レバレッジ1倍)と「スマート・ファイブ(1年決算型)」(日本国債・海外債券・グローバル株式・グローバルREIT・金)」と「グローバル3倍3分法ファンド」の比較で、過去1年間のシャープレシオは、1.64対2.38対2.50という関係だ(2019年10月末基準)。不動産・株式・債券の3資産より、金を加えた「スマート・ファイブ」の方が運用効率が良く、さらにレバレッジで3倍にした「グローバル3倍3分法ファンド」の方が良い効果があった。トータルリターン(1年)では、12.46%対8.98%対28.74%になっている。最も良い成績を上げたのは「グローバル3倍3分法ファンド」だが、資産のブレ幅が最も小さかったのは「スマート・ファイブ」だった。各商品の特性を見て、運用に取り入れることを考えたい。

 有賀氏は、「グローバル3倍3分法ファンド」の設計にあたって、「積立て投資で活用してもらうことを念頭に置いた」という。積立投資は、投資資産の価格が下落する局面では投資量が大きくなり、継続することによって、いわゆるドルコスト平均法の効果が得られる。しかし、積立終了後に価格が大きく下落すると、せっかくの積み立て資産の価値が大きく崩れてしまう。「したがって、どんな時にでも大きく価格が崩れないようなリスク分散の手法を取り入れることが重要。『グローバル3倍3分法ファンド』は、組み入れ資産の3分の2を債券にすることで、株式・REITの価格下落に耐えられる仕組みとした。また、債券の下落(金利上昇)が急速に進む局面でも過去の債券下落率や株式・REITとの逆相関の関係から大きな崩れにはつながらないと考えている」と、大きな崩れのないファンドこそ、積立投資の有効な手段になり得るという。

 「グローバル3倍3分法ファンド」は、ネット販社、対面販社を問わず幅広いチャネルから資金が入っているという。同ファンドが広い層から支持を得ていることは、すなわち、史上最高値を更新し続ける米国株式など株式やREITの運用環境が良い現在においても、投資家の間には拭い去れない不安があるともいえるだろう。投資リスクを考慮しつつ、長期の資産形成を実現する――レバレッジバランスファンドの広がりは、資産形成の考え方を次のステップに持ち上げるきっかけになるかもしれない。(図版は「3倍3分法ファンド」の販売用資料より、現代ポートフォリオ理論を説明するイメージ図。提供:日興アセットマネジメント)