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ファンドニュース



723万人の企業型DCに運用商品見直しが急務、同一分類で信託報酬が年0.5%以上の差

2020/01/14 20:30

 企業型確定拠出年金(DC)の加入者は、19年10月時点で約723万人にのぼる。同時期のiDeCo(個人型DC)の加入者数約141万人の5倍以上の人数が加入している。加入者の資産規模も企業型は約12.5兆円(19年3月末)と個人型の約1.9兆円(同)の約6.6倍に達している。米国の企業型DCである401kは、19年9月末現在で資産残高が約5.9兆ドル(約649兆円)の大きな市場になっており、国内でも企業型DCの活性化が課題として意識されている。様々な改革が進んでいるものの、その変化のスピードは決して速くはない。令和時代の重要な施策として企業型DCの改革に関係者は力を合わせて取り組みたい。

 国内の企業型DC改革として、19年7月から運営管理機関が企業型DCに提供している運用商品の一覧をWebで公開するようになった。これは、18年5月に施行された「事業主による運営管理機関の評価(少なくとも5年ごとに、サービス内容の評価を行い必要に応じて運営管理機関の変更などを行うよう努める)」を具体的に後押しするための施策のひとつ。運営管理機関が開示している運用商品のリストと、各事業主が従業員に提示している運用商品リストを比較して、運用商品の内容があまりに見劣りする場合、より良い運用商品に入れ替えることを促すことが期待されている。

◆運営管理機関の企業型DC取扱商品の全開示で見えたこと

 19年12月末現在で主要な運営管理機関の公開データを調べた結果が添付の表だ。元本確保型以外の商品(投資信託と信託商品)を100本以上取り扱っている大手の運営管理機関は、国内外の株式・債券、そして、各種バランス型ファンドを一通り品ぞろえしているため、運営管理機関ごとのラインナップに差異は見極めにくい。

 あえて各社の品ぞろえの差を突き詰めていくと、カテゴリーごとの取扱商品について投資信託の信託報酬率で最低料率に違いがあることだ。たとえば、国内株式のパッシブ型運用商品の手数料率は、最低水準が年0.15%(税込み)になっているが、大手の運営管理機関でも0.17%(東京海上日動)や0.18%(三井住友信託銀、住友生命)など最低水準に届いていない会社がある。同様に先進国株式では、最低手数料率が0.11%だが、0.15%(三井住友銀、三菱UFJ信託、日本生命、住友生命、大和証券、野村證券)、0.22%(東京海上日動、明治安田生命)、0.27%(三井住友信託)など比較的高い手数料率のところがある。

 パッシブ型の運用商品(インデックスファンド)には、パフォーマンスには大きな優劣が付きにくく、信託報酬率の差が運用成績の差に直結する。たとえば、同じように先進国株式インデックス(代表インデックスは、MSCIコクサイ)に連動するファンドでも年率0.11%の信託報酬率と0.27%では1年間で0.16%の格差が広がり続けるという結果になる。たとえば、毎月1万円を30年間積み立てた場合、1年間に0.16%の差があれば、30年後には約8.8万円の差、投資元本360万円に対し2.4%の差ができる計算になる。

 運営管理機関を評価する立場にある事業主にとって、もっと重要なことは、同じ運営管理機関であっても取扱商品によって、同一カテゴリーで大きな手数料格差があることだ。たとえば、最も品ぞろえが多いみずほ銀行の場合、国内株式のパッシブ運用ファンドで最低手数料率年0.15%のファンドがあるが、国内株式パッシブファンドで最も高い手数料率のファンドは0.72%になっている。同じような運用成績をめざすファンドの中で、1年間で0.57%の差異が生じてしまう。先ほどと同じように、毎月1万円を30年間積み立てることを考えると、30年後の差は32.6万円。投資元本の9.1%に相当する。これは無視できない差ではないだろうか。

◆商品入れ替えの手間を惜しまず、加入者第一の対応を

 各企業にあって確定拠出年金を担当している担当者の方は、ぜひ一度、目を皿のようにして自社の従業員に提供している運用商品リストと業務を委託している運営管理機関が公表している運用商品一覧表を見比べてほしい。特にインデックスファンドにおいては、同一カテゴリーにあるファンドの手数料率を比較したい。現状では、国内株式の業界最低水準は年0.15%、先進国株式は0.11%、先進国債券は0.15%だ。この水準より高い場合は、「なぜ高いのか?」納得のいく説明が受けられるかを試してほしい。

 もちろん、具体的に運用商品を入れ替えることになると、まずは手数料率が高いファンドを保有している加入者に対し、運用商品から除外しても良いか意向を聞くなど、面倒な手続きが必要になる。ただ、面倒だからと言って、何もアクションを起こさないでいると、それは、企業型DCのガバナンスの面で問題があるとみなされることになってしまうだろう。

 厚生労働省や金融庁など監督当局は、「企業型DCについて、DB(確定給付企業年金)並みのガバナンス」を求めている。特に、DBからDCに移行した企業においては、ガバナンスの徹底を厳しく見ている。「DCに移行したからと言って、掛金を拠出するだけで良いというものではない。制度の運営にあたっては、もっぱら加入者の利益になるように取り組むこと。そして、加入者が自らの意思で、資産運用ができるよう、継続投資教育に努めて取り組まなければならない」という考えだ。

 企業型DCのガバナンスで、運用商品のラインナップの見直しは、もっとも効果が分かりやすいことのひとつだ。継続投資教育に一生懸命に取り組んだとしても、加入者の運用成績が継続的に年0.5%も上がることは難しいだろう。ところが、年0.7%の信託報酬の商品を、年0.2%の商品に入れ替えるだけで、自動的に年0.5%のプラスの効果が得られる。既に、0.2%の信託報酬の商品がラインナップされているのであれば問題ないものの、年0.7%の信託報酬の商品しかない場合、何もしないのであれば、企業側の怠慢を責められても仕方がないといえよう。

 企業型DCは、公的年金を補完する重要な私的年金に位置付けられる。月を追うごとに導入企業も増大し、加入者も増えている。掛け金は企業が拠出し、加入者である従業員は運用する商品を選ぶだけだが、従業員が選べる商品は企業が選定した商品のみになってしまう。DCを導入している企業は、ぜひ、この機会に運用商品ラインナップの見直しに取り組んでいただきたい。(図表は、代表的な運営管理機関の取り扱い株式ファンドの最低信託報酬率一覧=2019年12月末現在。モーニングスター調べ)