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ファンドニュース

迫る全人代、騰勢強める中国「イノベーションファンド」に追い風

2020/05/19 17:50

 中国の最高意思決定機関に位置付けられる全国人民代表大会(全人代)が5月22日に開幕する。全人代開催で期待されるのは今年1−3月期にマイナス6.8%に落ち込んだ経済の立て直しだ。既に、国有銀行による中小企業向け融資の拡大や利払い延期などの対策が打ち出され、4月の鉱工業生産は前年同月比3.9%増となるなど、景気底入れの兆しは出始めている。中国株価もコロナショックによる世界的な下落の影響は比較的小さく乗り切っている。今後、全人代で発表される経済対策や今後の経済運営によっては、株価の上昇にも弾みがつくと考えられ、中国関連ファンドの活躍も期待できる。

 中国の4月の主要な経済指標は、1−2月に前年同期比マイナス13.5%、3月に1.1%減に落ち込んだ鉱工業生産が3.9%増とV字型に回復した他、輸出(米ドル建て)が3.5%増と3月の6.6%減から転換。自動車販売台数は3月の43.3%減から4.4%増へと一気にプラスに転じている。自動車販売台数がプラスになるのは22カ月ぶりのことだ。一方で、小売売上高は前年同月比7.5%減と3月の15.8%減からはマイナス幅が縮小したものの、力強さを欠く。ロックダウン(都市封鎖)によって止まっていた経済活動が企業部門から息を吹き返しているところといえるだろう。

 中国の株価は、上海総合指数がWHO(世界保健機関)のパンデミック宣言(3月11日)の後、2646.81の安値(3月19日)を付けて出直り、5月11日には2914.28まで戻った。年初来高値3127.17(1月14日)まで6.8%ビハインドしているところだ。年初来高値から安値の下落率は、上海総合は15.36%にとどまっており、NYダウの38.40%、日経平均株価の32.17%などと比較すると下落率は半分程度になっている。

 一方、中国に投資するファンドは、モーニングスター分類「国際株式・中国」(DC・SMA専用、ETF除く)に46本ある。ただ、一口に「中国株」ファンドといっても、長らくイギリスの統治下にあった香港と、メインランド(本土)と呼ばれる上海、深センの市場は上場銘柄の顔ぶれが大きく異なる。かつ、台湾など「大中華圏」を投資対象にしているファンドもあるなど、中身がそれぞれに異なるため、パフォーマンスのばらつきも大きい。

 4月末現在で過去3年のトータルリターン(年率)でランキングするとトップは16.14%の「UBS中国株式ファンド」になるが、最低は「三井住友・メインランド・チャイナ・オープン」でマイナス1.46%のパフォーマンスになる。また、過去1年間ではトップは21.64%の「深セン・イノベーション株式ファンド(1年決算型)」になるが、最低は「香港ハンセン指数ファンド」のマイナス17.75%になる。1つのカテゴリーとして一くくりに考えることができないほどバラツキがある。

 そのような中で、好パフォーマンスの銘柄には共通項がある。過去3年、過去1年のどちらでも比較的高いリターンを残している「ダイワ・チャイナ・ファンド」(過去3年の年率7.06%、過去1年10.82%)、「JPMチャイナ・アクティブ・オープン」(同12.48%、9.02%)、「JPMグレーター・チャイナ・オープン」(11.08%、7.96%)、「三井住友・A株メインラインド・チャイナ0」(6.53%、6.40%)、「野村 新中国A株投信」(10.01%、4.69%)などだ。これらは、揃って中国A株を中心に投資している。中国A株とは、中国国内(上海、深セン)で上場され、人民元建てで取引される株式のことで、基本的には中国人しか投資できないことになっていた。それが、QFII(適格海外機関投資家)として認められた一部の機関投資家が投資可能となり、近年は一部のA株については香港証券取引所(上海・深セン・香港ストックコネクト)で海外投資家も取引が可能になってきた。

 中国A株は、中国資本で、かつ、中国国内で主にビジネス展開している企業が多いという特徴がある。中国の経済成長から直接恩恵を受ける企業群といえる。中国経済は近年でも世界平均を上回る年6%台後半の成長を続けてきたため、その経済成長の恩恵を受け、中国A株も相対的に優位な成長が可能だった。全人代で決定される国内の経済復興のための様々な対策の恩恵についても直接受けられるポジションにあり、引き続き注目される投資対象といえる。

 さらに、過去1年間のパフォーマンスに注目すると、A株の中でも、「イノベーション」に着目したファンドが活躍している。過去1年のパフォーマンスでトップの「深セン・イノベーション株式ファンド(1年決算型)」は、A株の中でも創業から間もない中小型企業が多い深セン証取に上場している企業の中から、イノベーション(技術革新)によって成長が期待できる企業に投資するファンドだ。「バリュー・パートナーズ・チャイナ・イノベーター」、「チャイナ・イノベーション・オープン」など、17年〜18年に設定された中国株ファンドは、A株の中でイノベーティブな企業をピックアップして投資することを投資方針とし、過去1年でトータルリターン2ケタの成績を残している。

 中国では5G関連投資が経済対策でも重点項目の1つになっている。米中貿易摩擦の要因の1つとなった「中国製造2025」は、2025年までにロボット工学から新エネルギー車、航空宇宙に至る産業で中国企業が世界の先頭集団になろうという野心的な経済政策だ。欧米日など先進国と違って、中国は企業に国家予算を莫大に投入して成長を後押ししている。5Gなど巨額のインフラ投資が必要な分野では、米国が「不公平だ」と抗議するほど国による産業育成策が企業の成長を大きく手助けしている。

 中国のイノベーターに投資しようという動きは、今年に入って設定された「SBI 中国テクノロジー株ファンド」、「華流国潮イノベーション株式ファンド(1年決算型) 『愛称:国潮』」などにも引き継がれている。全人代を経て、経済復興策が強化される中国にあって、引き続き注目される投資対象となるだろう。(図版は、「イノベーション」に着目した中国株ファンドの過去1年のパフォーマンス)