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ファンドニュース

ESG投資にパフォーマンスの裏付け、GPIFが活動報告で過去3年のデータ検証

2020/09/09 18:54

 環境(E)・社会(S)・企業統治(G)といった数字には表れない情報を企業の価値として評価しようという「ESG投資」が提唱され、日本の個人投資家の間でも投資に取り入れようという動きが広がっている。ESGの先駆けともいえる2000年代前半にブームになった「エコファンド」は、環境に優しい企業を応援するという側面が強く、パフォーマンスは二の次だったが、近年の「ESGファンド」は「社会の持続的な成長に貢献する企業群は長期的にはパフォーマンスも優位になるはず」という観点で設定されている。実際に、国内のESG投資をリードするGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が選定したESG指数は、2017年4月から2020年3月までの年率リターンでTOPIX(東証株価指数)を凌駕する成績を残している。ESGがパフォーマンスを引き上げる要素にもなっていることが認知されると、個人の投資行動にも影響を与えそうだ。

 GPIFが2015年9月に国連の責任投資原則(PRI)に署名して以来、国内でも年金基金などの運用を担う機関投資家を中心に、「投資の基本原則としてESGを評価する」という動きが出てきた。持続可能な開発目標(SDGs)の採択(2015年9月)やパリ協定(15年12月)、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言(2017年6月)など、国際的な取り組みとして事業会社の行動を規制し、投資家にはESG投資をサポートする論議が近年ますます活発になっている。

 ただ、日銀が今年7月にまとめたレポート「ESG投資を巡るわが国の機関投資家の動向について」でも指摘されているように、(1)ESG投資に利用可能な情報が限られている、(2)ESG要素と金銭的リターンの関係性に確信が持てない、(3)先行きのリスクなどを検討するにあたり、考慮すべき要素(政治・政策、科学技術、気候変動の影響度など)にかかる不確実性が大きい、(4)最新の科学技術などの専門知識を活用できる体制を整備する必要がある――などの理由によって、国内でのESG投資の伸びは限定的といえる。日銀レポートではこの4つの実務的な課題に取り組んでいくことが、「ESG投資が経済合理性に基づいて機能していくためのいわば“産みの苦しみ”」と評価している。

 GPIFは2019年度「ESG活動報告」の中で、2017年7月に選定したESG指数の2017年4月から2020年3月までの3年間のパフォーマンスを検証し、TOPIX(東証株価指数)やMSCI ACWI(除く日本)などの代表的な株価指数よりも、ESG指数が高いパフォーマンスになっていることを報告している。

 まず、総合型の「FTSE Blossom Japan Index」は、2017年4月から20年3月までの年平均収益率が0.10%で、同期間のTOPIXのマイナス0.14%に対して0.24%の超過収益率になった。同様に、総合型の「MSCI ジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」は年平均収益率が1.99%であり、TOPIXに対し2.13%の超過収益率となった。社会(S)のうち女性活躍に着目した「MSCI 日本株女性活躍指数(WIN)」は、年平均2.24%の収益率でTOPIXに対して2.38%の超過収益率がある。これら3つの指数については、大和アセットマネジメントが2017年9月25日にETFを設定しており、これらETFとTOPIXのトータルリターンを相対比較したのが添付のグラフになる(設定来、2020年9月8日まで3年弱)。運用期間が長くなるにつれ、TOPIXに対して大きくアウトパフォームしている様子が確認できる。

 また、GPIFが2018年9月に選定した環境株式指数「S&P/JPXカーボン・ エフィシエント指数」は、2017年4月から2020年3月までの年平均収益率は0.10%で、同期間のTOPIXに対し0.24%の超過収益率。グローバル環境株式指数「S&Pグローバル・カーボン・エフィシエント大中型株指数(除く日本)」は、1.28%でMSCI ACWI(除く日本)の同0.92%に対し0.36%の超過収益率になっている。GPIFはこれらの結果を踏まえ、「これは3年間という短期間の結果にすぎません。ESG投資は長期にわたるほど、リスク調整後のリターンを改善する効果が期待されるとGPIFは考えており、長期的な検証が必要であると考えています」としている。

 ただ、この同じ指数を日経平均株価と比較すると、TOPIXほどの優位性は見いだせない。たとえば、大和アセットマネジメントのETF3本と比較すると、2020年8月末までの過去1年間で日経平均株価のトータルリターンは11.76%だが、「ダイワ上場投信−FTSE Blossom Japan Index」は同8.88%、「ダイワ上場投信−MSCIジャパンESGセレクト・R指数」は同10.94%と劣後し、「ダイワ上場投信−MSCI日本株女性活躍指数(WIN)」のみが同11.87%とわずかな優位性を示すだけにとどまる。

 もちろん、これらの比較は、ESG指数と株価指数を比較したもので、国内の公募投信で様々に設定されているESGファンドの中には、日経平均などの株価指数を上回る成績を残しているアクティブファンドもある。アクティブファンドの評価は、1−3年程度では難しい側面もあるため、ESG要素とパフォーマンスの関係は早々には結論が出ないと考えられる。ただ、ESG指数でも代表的な株価指数を凌駕するとは言えないまでも、それと同等のパフォーマンスを残していることは事実だ。近年、積立投資などを使って長期で資産形成する手段に投信を活用する動きが広がっており、ESG要素を加えることによって「その投資が、地球温暖化対策にも役立っている」という付加価値がつくことは大きい。それが投資を始めるインセンティブとして、新たな投資家の参加を促す呼び水にもなりそうだ。(グラフは、GPIFが選定したESG指数に連動するETFとTOPIXのトータルリターン相対比較)