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ファンドニュース

開けるか資産運用の時代、2021年は確定拠出年金16兆円の半分が動き出す

2020/12/30 17:00

 運用して年金資産を増やす確定拠出年金の残高は2020年3月末に15兆6369億円になった。ちょうど、コロナショックで世界の株価が下落した底の時点での統計値であるため、その後の株価の戻りと、拠出金の累積によって2020年末には16兆円程度の資産が積み上がっていると考えられる。国内の確定拠出年金は、預貯金などの元本確保型商品での運用比率が高いといわれてきたが、過去の推移を振り返ると、2015年3月末に約55%だった元本確保型商品での運用比率が低下するとともに、投資信託による運用比率が着実に高まっている。長引くゼロ金利時代に、「預貯金や保険商品では年金資産を増やせない」と見限った人たちが、リスクを取った運用に切り替え始めているようだ。

 確定拠出年金制度は2001年10月から掛金の運用が始まった。主として企業年金制度の1つの形態として始まった制度だ。従来の企業年金は、将来の年金額を事前に従業員に告知できる確定給付型の制度だったが、バブル崩壊後に低迷する国内株価と低金利によって運用環境が厳しくなり、約束していた運用利回りの確保が難しくなってきたため、企業は掛金を拠出するだけとし、運用は従業員本人が行う新しい制度として導入された。2017年1月からは個人で任意に加入する個人型確定拠出年金が「iDeCo(イデコ)」の愛称とともに広く普及促進されるようになった。

 そもそも企業年金は信託銀行や生命保険会社などが企業の拠出した資金を預かって株式や債券などに広く投資して運用していた。実際に、2001年度から市場運用を開始したGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、基本ポートフォリオを国内外の株式と債券の4資産に分散投資し、2020年6月末までの20年あまりの収益率は年率3.09%だ。GPIFの運用資産額は167兆円を超えているが、これまでの運用収益額の累計は約75兆円。運用実績を公表する4半期(3カ月間)ベースでは時に大幅なマイナスを記録することもあるが、20年間という長期で均してみると、しっかり運用収益を重ねてきている。このGPIFの基本ポートフォリオに預貯金(現金)は入っていない。

 確定給付型の企業年金の運用の考え方も、GPIFに等しいものと考えて間違いない。長期に運用することを前提とすれば、現・預金に資金を置いておくとインフレ(物価上昇)によって資産価値が目減りしてしまう可能性があるため、国債などの債券や株式に投資して、経済成長の恩恵を得ることをめざす。

 確定拠出年金は、制度的に60歳までは換金できない仕組みになっている。20歳代であれば30年以上、30歳代であれば20年以上の長い運用期間がある。ただ、多くの人が、資産運用の経験がない。GPIFや企業年金を受託する信託銀行や生保のような専門家ではないので、資産運用に踏み出せない。したがって、確定拠出年金に加入していることが分かっていても、何も行動を起こしていない人が少なくないようだ。何も行動しないと、その制度で予め決められた商品(デフォルト商品)で運用が始まる。デフォルト商品は、定期預金のケースが多く、そのまま定期預金で積立が続いてしまう。これが、日本の確定拠出年金で定期預金などの元本確保型商品での運用比率が減らない大きな要因だと考えられる。

 米国の確定拠出年金制度でデフォルト商品に指定されるのは、ターゲットイヤー型やバランス型の投資信託(ファンド)だ。日本でも、デフォルト商品を規定しようという法案が出された時には、米国のように投信だけを指定するような法案だったが、国会議員の反対によって修正され、デフォルト商品として元本確保型商品が残った。そして、デフォルト商品として定期預金を指定する会社が少なくない。

 2015年3月末から2020年3月末まで、毎年3月末時点の確定拠出年金(企業型+個人型)の運用商品の分布を調べると、元本確保型商品での運用比率が減少傾向にあることが分かる、特に、生命保険商品や損害保険商品の運用比率が年を追うごとに減っている。生損保商品は、それぞれに株式や債券で運用した結果を反映する商品だが、元本確保を優先しているため、その運用利回りは低迷している。保証利率が0.003%などと預金金利並みに低下してしまうと運用商品としての魅力がないので乗り換えの対象になっているものと考えられる。

 2020年のコロナ禍によって、資産形成の重要性に気付いた人が多いとされる。ある日突然、都市封鎖(ロックダウン)が起こり、職場が強制的に閉鎖される経験をした。その際には、国がマスクを配ったり、現金を支給してくれたりしたが、それが手元にくるまでは時間がかかり、しかも、その量は小さかった。国ができることには限界がある。自らの生活は、自ら守る必要があるのだ。日頃の生活費の蓄えを充実するためには「つみたてNISA」を使った積立投資もある。将来の年金を確保したい場合は「iDeCo」だ。ともに、運用益非課税で資金を積み立てられる(iDeCoは掛金が税控除の対象となるメリットもある)。

 iDeCoには手が出せなくても、会社の確定拠出年金の運用の状況を改めて見直した人は少なくないと考えられる。年金資金が、定期預金で運用されている状態であれば、それを投資信託に切り替えることは、専用サイトで簡単に実行できる。これまで投資をした経験のない人が、会社が用意した確定拠出年金で「初めての投資をする」ということもあるだろうが、その経験は貴重な経験になる。確定拠出年金の資金は60歳まで引き出すことができない。退職しても、その口座の資金を出すことはできないのだ。60歳まで、いかに資金を有効に運用するのかを考えて運用指示するしかない。せっかく会社に確定拠出年金があるのであれば、何もしないで放置しているのではなく、運用商品を指定してほしい。その指定商品を使って、毎月の給料に応じて掛金が拠出され、定時定額の積立投資が行われることになる。

 2020年3月末現在、企業型と個人型を合わせた確定拠出年金で5兆6387億円が預貯金に眠っている。生損保商品も含めると、元本確保型商品の資金規模は8兆1238億円にもなる。国内のDC専用ファンド(確定拠出年金制度向けに設定・運用されているファンド)全体の残高約6兆8942億円を上回る規模だ。2021年は、この預貯金や保険商品に眠る資金の動きが注目される。(グラフは、確定拠出年金の年金資産の資産配分比率の変化。2015年3月末〜2020年3月末)