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ファンドニュース

フィデリティ投信の「テンバガー・ハンター」が設定1周年で基準価額は約2倍、残高は2000億円に到達

2021/03/30 11:27

 フィデリティ投信が設定・運用する「フィデリティ・世界割安成長株投信(愛称:テンバガー・ハンター)」が3月23日に設定から1周年を迎えた。1年間のトータルリターンは約90%となり、為替ヘッジありの「Aコース」とヘッジなしの「Bコース」を合わせた純資産総額も2000億円の大台に達した。フィデリティ投信のシニアプロダクト・ストラテジストの藤原嘉人氏に、ファンドの過去1年の運用の実際と今後の展望について聞いた。

 ――ファンドは2020年3月23日に設定され、設定から1年が経過した3月23日に、「Aコース」は基準価額が1万8817円、「Bコース」が1万9024円と1年でほぼ2倍になりました。このパフォーマンスの背景について教えてください。

 ファンドは、「成長力が高いにもかかわらず割安」な投資先を選別して投資しています。2020年のパフォーマンスへの寄与度としては、たとえば、最新の月次運用レポートの組入上位10銘柄(2月末現在)の筆頭である「シンクロニー・ファイナンシャル」は、ファンド設定後に株価が約2.4倍に上昇し、ファンドのパフォーマンスに寄与しました。同社は、GE(ゼネラル・エレクトリック)社のクレジットカード部門が分離独立した企業ですが、クレジットや決済、ローンの各部門を成長させ、アマゾンやウォルマートといった大手小売り企業のプライベートブランドのクレジットカードの発行で強みを持っています。財務の健全性にも優れ、株価も割安でしたので投資しました。現在でもPERは8倍程度で割安感があります。

 また、組入第9位の「アレクシオン・ファーマシューティカルズ」は希少で重篤化する恐れのある疾患の治療薬を開発するバイオ医薬品メーカーで、ニッチな分野ながら確実な需要が見込まれ、財務内容も健全であったために投資をしました。ファンドの設定時に80ドル程度の株価だったのですが、2020年12月にイギリスのアストラゼネカが買収すると発表し、株価が150ドルを超えました。同業の有力企業が、その成長性と株価の割安さを評価して買収を決断した銘柄を、その発表以前に購入して保有していました。当ファンドがめざす投資パフォーマンスの代表例といえます。

 同様に、有力な投資家が当ファンドの組入銘柄に投資したという事例では、組入上位4位の「伊藤忠商事」があります。「投資の神様」とも言われるウォーレン・バフェット氏が昨年8月に日本の商社株を購入したことが話題になりましたが、当ファンドではそれよりも早く、同社に注目して組み入れていました。

 そして、組入上位10銘柄には入っていない銘柄では、米国のスポーツ用品販売の「ヒベットスポーツ」は、店頭とオンラインのオムニチャネルで販売を伸ばすユニークな企業として注目して購入した銘柄ですが、ファンド設定時に10ドル程度だった株価が50ドル以上に上昇しました。また、自動車販売の「リシアモーターズ」は、新車と中古車とメンテナンスサービスの3部門をバランスよく成長させている割安な企業として注目して保有をしていますが、昨年、同社の株価は4倍以上に値上がりしました。

 ファンドの設定時が3月23日と、ちょうどコロナショックで最安値を付けたタイミングと重なったこともあって、その当時に組み入れた銘柄に株価が大きく値上がりした銘柄が多数存在します。結果的に、先進国を代表する株価指数である「MSCIワールドインデックス(配当込み、円ベース)」を基準価額は1年間で15%程度アウトパフォームする結果になっていますが、これらはほとんどが銘柄の選択効果によるものです。組入上位銘柄には、テスラやアマゾンなどの華やかな銘柄は入っていませんが、中小型で地味な企業であっても、その企業の変化を捉えた投資をしっかり実践すれば、パフォーマンスという結果はついてくるということが昨年の運用に良く表れていると思います。

 ――ファンドの投資哲学として「忍耐強く、合理的に投資する」「流行に左右されたり、他社と似たり寄ったりの事業に投資してはならない」「割安な銘柄に投資しなければならない」など、当たり前のような心得を掲げていますが、それが際立ったパフォーマンスにつながっているのはなぜですか?

 当ファンドは、ジョエル・ティリングハストが主担当となり、共同運用担当としてサリム・ハート、モーガン・ペック、サム・シャモビッツの3人が支える体制をとっています。ジョエル・ティリングハストは、フィデリティを代表するファンドマネージャーであるピーター・リンチから「歴史を通じて最も偉大、かつ、成功したストック・ピッカーの1人」と太鼓判を押してもらったほどの実績があります。ティリングハストが当ファンドと同じ投資方針で運用しているファンド「フィデリティ・ロープライス・ストック・ファンド」は、設定(1989年12月)から30年を超える歴史があり、基準価額は設定来(約31年)で50倍超になっています。このファンドの運用を通じてITバブルやリーマンショックなどの危機を乗り越えてきた経験なども当ファンドには活きています。

 また、チームが作り上げているポートフォリオは、きっちりと掲げた運用方針を実践しています。3つの投資哲学については、一見すると当たり前ですが、これを実践してブレないということは、非常に難しいことでもあります。

 そして、当ファンドを支えているのが、フィデリティの全世界に拠点を置いたボトムアップの調査力です。世界に約380名のプロフェッショナルが配置され、小型株も含めて成長期待のある銘柄は、きめ細かく調査して報告してきます。ティリングハストに加えて3人の共同運用担当がしっかり連携することで数百銘柄のポートフォリオをメンテナンスし、常に最良の状態に保つことができます。

 ――ポートフォリオの組入れ銘柄は、設定当初は約380銘柄でしたが、月を追って増加して、今年は515銘柄前後で安定してきています。ポートフォリオは、ほぼ完成したと考えて良いのでしょうか?

 ファンドを設定した当初は、コロナショックの直下でしたので、コロナがもたらす社会変化にあっても生き残れる企業を厳選するという態度で、慎重に投資銘柄を選定しポートフォリオを組んでいました。その後、コロナの影響やその対策が確認されるとともに、ワクチン開発への期待も高まって、市場は経済の正常化を期待して上昇に転じました。その過程にあって、当ファンドでは、経済が正常化する中で活躍が期待される企業なども徐々に組み入れていきました。先ほど紹介した自動車販売の「リシアモーターズ」などは、経済の正常化への道筋が見えてくる中で新たに組み入れた銘柄です。

 一方、ファンドの残高が増えていったことも組入銘柄増に関係しています。設定当初は150億円程度の規模でしたが、徐々に残高が増えて、現在ではマザーファンドベース(AコースとBコースの合算)で2000億円になっています。組入銘柄には小型株もありますので、流動性を確保する観点からも適正なポートフォリオを考えています。たとえば、このファンドと同様の運用を行っている「フィデリティ・ロープライス・ストック・ファンド」は、残高が約3兆円で、約800銘柄でポートフォリオを構築しています。当ファンドも、今後残高が拡大する中で、組入銘柄数も徐々に増大すると考えていただきたいと思います。

 ――「テンバガー・ハンター」という名前から、大きく値上がりすると期待される銘柄を厳選して集中投資した方が、より良いパフォーマンスが期待できそうですが、数百銘柄に分散している理由は?

 リスク管理の観点が大きいです。確かに、10倍になる銘柄を1つ見つけて、それだけに集中投資すれば、短期間に10倍にできる可能性もありますが、残念ながら、フィデリティが総力を挙げて調査しても、「これから確実に株価が10倍になる」という銘柄を特定することはできません。より着実なリターンをめざすために、複数の銘柄に分散していますし、分散することによって、株価の下落時に下落率を抑える効果も期待されます。

 実際に、当ファンドのマーケットへの追随率をみると、市場が上昇している時には市場に概ね100%連動して上昇し、下落する時には、概ね市場の下落率の2分の1程度に抑えられています。このように、1歩進んで半歩下がるようなパフォーマンスを重ねることで、30年間で50倍以上のパフォーマンスを稼ぎ出したのが「フィデリティ・ロープライス・ストック・ファンド」です。

 ――今年に入って米国の長期金利が上昇することなどで、テクノロジー株が下落するなど、昨年とは異なる市場になっているようです。この市場環境は、当ファンドに、どのような影響がありますか?

 米国の長期金利の上昇は2つの面で市場に影響を与えていると考えています。1つは、経済が正常化に向かって進展しているということです。このことによって、従来は「ウィズ・コロナ」として非接触経済の発展を期待したテクノロジー株が集中して買われるという市場から、より幅広い業種に物色が広がっています。また、金利が上がることによって、同じ成長率であれば現在価値が下がってくるという現象が起きます。割引率がより大きくなるのですから、成長株に対する評価がより厳しくなります。

 したがって、昨年よりも、成長力が強い銘柄、かつ、割安な銘柄に投資することが現在の市場に対応するカギになります。実際に過去の金利上昇局面で株価が値上がりしたのは「小型株」であり、「バリュー(割安)株」でした。この経験則が活きると思います。もちろん、市場の全体の潮流を見るだけではなく、個々の企業に対して、業績が予想通りに伸びているか、新しい市場に対して適切にカジ取りをしているかということを、ひとつひとつチェックする必要があります。簡単に勝てる市場ではありませんが、当ファンドは、この市場にもしっかりフィットしていくことができると思います。

 ――ファンドは設定から1周年を迎えました。受益者の方、また、ファンドの購入を検討されている投資家の方にメッセージはありますか?

 昨年3月に市場が大きく下落する難しい中で、当ファンドに勇気をもって投資してくださった投資家の方々には、心より感謝しています。その資金があればこそ、当ファンドは結果的に良いタイミングで最初の投資ができ、その後のパフォーマンスにつなげることができました。また、同様に、困難な環境の中で、当ファンドの魅力を伝え、投資家の方々に届けていただいた販売会社の方々にも、そのご努力に深く感謝いたします。

 また、このファンドに注目していただいている投資家の皆様には、成長株に割安な水準で投資をするという当ファンドの長期投資の考え方を、ぜひ、運用に取り入れていただきたいと思います。DX(デジタルトランスフォーメーション)やAI(人工知能)、あるいは、ESG(環境・社会・ガバナンス)などといったテーマに注目したファンドではありません。見た目の華やかさには欠けるかもしれませんが、フィデリティが世界の上場企業を地道に調査して、成長性に確信を持てる銘柄を集め、目利きに定評のあるベテランのファンドマネージャーがそれらを組み合わせて長期に成長が期待できるポートフォリオをつくります。ファンドのシャープレシオが高い、質の高いリターンをお戻しできるファンドとして、当ファンドをご検討ください。(グラフは、「フィデリティ・世界割安成長株投信」の過去1年間のトータルリターンの推移)