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ファンドニュース

東証市場改革でTOPIXの魅力回復は進むのか? 気になるNT倍率の行方

2021/04/27 18:09

 東京証券取引所が進めている市場改革は、国内株式市場の復興を促すきっかけになると期待される。現行の「市場第一部」「市場第二部」「マザーズ」「ジャスダック」の4市場区分が2022年4月4日から、「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場区分に移行する。今年6月30日を基準として「新市場区分における上場維持基準への適合状況の通知」が出され、現在は東証一部に上場している企業から「プライム」に残れない企業の選別が本格化するだろう。昨年のコロナショック以降のテクノロジー株式の上昇は、日経平均株価とTOPIX(東証株価指数)の格差を拡大させた。日経平均株価をTOPIXで割ったNT倍率は今年2月には過去最高の15.6倍台にまで上昇した。東証市場改革は、TOPIX改革に直結する。日経平均株価に対して長らく劣後してきたTOPIXは復調するだろうか?

 日経平均株価とTOPIXは、ともに日本を代表する株価指数だが、その算出方法の違いから、その指数の値動きには、明確な個性がある。すなわち、日経平均株価は日本を代表する225社の株価の単純平均を基本として算出する指数であるため、株価が高い値嵩(ねがさ)株の変動の影響を受けやすい。日経平均株価の月次ファクトシート(21年3月末)によると、指数の構成銘柄上位のウエートは、ファーストリテイリングが10.88%、ソフトバンクグループが6.91%、東京エレクトロンが5.77%、ファナックが3.23%、ダイキン工業が2.75%などとなっていて、ハイテク主導の輸出関連企業が上位を占める。

 一方、TOPIXは、東証一部全銘柄(21年3月末で2164銘柄)の浮動株時価総額加重平均で算出し、組入上位のウエートは、トヨタ自動車が3.67%、ソニーが2.06%、日本電信電話が1.71%、キーエンスが1.60%、ソフトバンクグループが1.49%などとなっている。日経平均株価と比較すると組入上位銘柄の1銘柄当たりの配分比率が小さく、広く分散したポートフォリオになっている。指数の性格上、大型株の比重が高く、日経平均株価と比較して内需関連の影響を強く受ける指数といわれる。

 2000年1月末を100として、日経平均株価連動型のインデックスファンドとTOPIX連動型インデックスファンドのトータルリターンを比較してみると、リーマンショックでボトムをつける2009年2月頃までは、TOPIX連動型インデックスファンドの優位が続いていた。NT倍率は、1900年代は13倍程度が平均だったが、2000年代初頭に一気に下落してリーマンショックによって10倍割れになった。しかし、10倍割れをボトムに2010年以降は徐々に上昇に転じ、2019年に13倍台に乗せると上昇が加速し、2020年末に15倍台に乗せた。つまり、リーマンショック以降は10年以上にわたって、TOPIXは日経平均株価に劣後してきたことになる。

 TOPIXが日経平均株価に劣後する理由にあげられるのが、東証一部全銘柄を対象とする指数であるだけに、時代に取り残されて成長が期待し難い企業にも幅広く投資をせざるを得ない指数であるという点だ。その点、日経平均株価は採用銘柄が225と限定され、銘柄の入れ替えも定期的に実施されて構成銘柄の品質を保ちやすいメリットがある。

 TOPIXは東証の市場改革の後には、原則として「プライム」市場に上場する企業で構成される株価指数になる見通しだ。ただ、TOPIXは主として機関投資家がパッシブ運用のベンチマーク(基準)として採用していることから、指数の連続性を保つような緩やかな指数改革が予定されている。現在の東証一部上場企業の99%以上が新TOPIXに残り、その後、「プライム」の上場基準を満たさない企業は、2022年10月以降に10段階に分けてTOPIX組入比率の逓減を行うとされている。その際の足切り基準は「流通株式時価総額100億円以上」という基準だ。市場改革によってTOPIXの構成銘柄がいきなり高品質の銘柄に変わるというわけではない。

 一方、日銀が市場への流動性供給の手段として行っているETFの購入は、4月以降はTOPIX連動型に限定されることになっている。また、バリュー投資家として著名なウォーレン・バフェット氏が率いる投資会社バークシャー・ハサウェイ社が2020年には日本の5大商社の株式を各社それぞれ5%超所有する投資判断をしたことが注目された。バフェット氏の投資は、国内の大型株に対する出遅れの是正を促すものと目され、この4月にもバークシャー・ハサウェイ社は新たに1600億円の円建て社債を発行したことも注目されている。日経平均に対して出遅れ感が強まったTOPIXが見直される機運は生まれているといえるだろう。

 TOPIXの魅力向上は、日本株式の魅力の向上につながる。日本株式の魅力アップについては、企業統治のあり方を示すコーポレートガバナンスコードの導入や、機関投資家との対話を促すスチュワードシップコードなどによって、企業内部からの改革と、投資家という外部の意見によって様々な経営改革が進められてきている。欧米企業と比較して低いといわれてきた日本企業の生産性の改善、また、株主還元の充実などは、依然として道半ばではあるが、ESG投資の世界的な潮流によって、価値向上に努めない企業に対する市場からの退出圧力は強まっていく方向にある。日本の投資家にとっては、国内株式の見直しが進むことは、投資環境がより良くなることで歓迎できる変化になる。東証の市場改革の行方も含めて、TOPIXと日経平均株価の関係の変化などにも注目していきたい。(グラフは、日経平均株価連動型インデックスファンドとTOPIX連動型インデックスファンドのトータルリターン相対比較チャート)