youtube fund_beginer fund_search fund_look

ファンドニュース

資金流出が止まらない「グローバル3倍3分法ファンド」、長期・分散投資家の定着は道遠し

2021/04/28 19:45

 2019年に市場の人気が集中した「グローバル3倍3分法ファンド」から資金流出が止まらない事態になっている。2018年10月に設定された同ファンドは、「1年決算型」と「隔月分配型」の2コースがあり、コロナショック直前の2020年2月には2コース合計の純資産残高が約6763億円に達する大規模ファンドになっていた。ところが、2020年5月以降に資金流出に転じてから、2021年3月まで資金流出が止まらない。2コース合計の純資産残高は4月26日現在で約3637億円でピーク比で概ね半減してしまった。ただ、同ファンドの運用成績はしっかりしている。コロナショック時には株式ファンド並みに基準価額が下落したものの、すでにコロナショック前の高値を更新していて類似ファンド分類を大きく上回る成績になっている。このような動きには、日本の投資家の「短期志向」が依然として根強い残念な傾向がみてとれる。

 「グローバル3倍3分法ファンド」は、実質的に世界の株式、REIT(不動産投資信託)、および、債券などに分散投資を行って、債券やREITのインカム収益を得つつ、株式やREITの値上がり益の獲得も同時に狙っていくバランス運用型のファンドだ。最大の特徴は、先物取引等を活用することによって、実質的な投資資産額を信託財産の純資産総額の3倍程度に拡大して運用することだ。純資産総額では、株式20%、REIT13.3%、債券66.7%という資産配分のポートフォリオを作り、実質的には純資産総額に対して株式60%、REIT40%、債券200%のポジションで運用している。

 この運用の仕組みでも明らかなように、株式やREITといったリスク資産への配分比率は、合計で概ね100%となっているため、コロナショックで株式市場等が大幅に下落した際には、同ファンドの基準価額も株式ファンド並みにピークからボトムまでの下落率が37.1%になってしまった。この下落が、同ファンドにとっては転機になったようだ。

 分配金を払い出していない「1年決算型」の基準価額は、2020年5月時点では11000円前後だった。その後、基準価額はどんどん上昇し、20年12月には設定来の最高を更新して13000円を超えるが、この基準価額の上昇過程で月間で数百億円規模の大規模な資金流出が起こってしまう。20年12月の「1年決算型」の資金流出額は約384億円で、「隔月分配型」と合わせると1カ月間で約565億円の資金流出になってしまった。20年5月から21年3月まで継続している資金流出額の累計額は2コース合算で約3195億円に達する。

 なぜ、このようなことが起こるのだろうか? 同ファンドは基本的にパッシブ運用のファンドを組み合わせて分散投資ポートフォリオを作り、それを、先物等を使ってレバレッジ3倍にしているだけなので、同社の投資判断で運用成績が良くなったり、悪くなったりするものではない。同ファンドは先物等を使って「運用の仕組みを提供している」というもので、その運用の仕組みは設定来、何ら変更は加わっていない。期待された機能を、期待されたように発揮しているファンドだ。

 むしろ、20年12月24日には、従来は2028年9月までの期限付きだったファンドの信託終了期間を「無期限」に変更し、永続的なファンドとして運用を継続することを表明している。それは、このファンドで提供している運用の仕組みが、超長期にわたって継続可能であることの宣言にも等しく、同ファンドの運用の仕組みを評価して購入した投資家にとっては、喜ばしい変化だったと考えられる。それでも、同ファンドを解約する動きは止まることはなかった。

 ファンドの基準価額は21年に入ると14000円台に一段と上昇している。残高が急増した2019年4月以降の20年2月までの基準価額の水準は11000円から12500円で、現在の基準価額の水準は、当時の水準を20%以上上回っている水準になる。購入時の価額から2割以上の投資収益が得られるという水準は、ファンドの保有者にとっては「利益確定の誘惑」にかられる水準なのだろうか? 同ファンドの設定来のトータルリターンは21年3月末現在で年率16.28%と、素晴らしい運用成績を残している。ところが投資家の投資収益率を示すインベスターリターンは同8.50%で、同ファンドが稼ぎ出したリターンの半分程度にとどまっている。

 投信業界では「長期投資による資産形成」が叫ばれて久しいが、未だ、長期投資が定着したとはいえない状況だ。確かに、投信市場を良く勉強している投資家にとってみれば、毎月のように新規で設定される投資信託は、魅力に富んだものが多く、目移りしてしまう気持ちはわかる。「グローバル3倍3分法ファンド」に投資した投資家は、この仕組みを理解する一歩進んだ投資家が中心だったと考えられる。しかし、せっかく手に入れた優れた成績を残しているファンドと比較して、新しいファンドは同等以上の成績を残すことが可能なのだろうか? 「グローバル3倍3分法ファンド」のパフォーマンスは、米国株式の代表的な指数「S&P500」と比較してもそん色のない成績を残している。

 一時期は、時代の寵児のようにもてはやされた「グローバル3倍3分法ファンド」が、人気の面では大きな逆風を受けているのには、改めて、日本の投資信託市場の現状に対して考えさせられる要素があるように思う。(グラフは、「グローバル3倍3分法ファンド」のトータルリターンと同シリーズの純資金流出入額の推移。設定来、2021年3月末まで、月次)