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ファンドニュース

「テーパリング」に動揺する株式市場、経験が教える株式への継続投資のメリット

2021/05/28 19:00

 世界の株式市場に「テーパリング」という名の魔物が徘徊し、株価の動きが神経質になっている。「テーパリング」はコロナ・パンデミックのショックを和らげるために緊急避難的に実施された利下げと量的金融緩和が元に戻る合図といえるものだ。ワクチン接種の拡大によってコロナ禍の克服が近づいた今、どこかのタイミングで市場に供給し続けているマネーの流量を絞る(テーパリング)ことは避けられない。特に、現在の量的緩和の水準が「緩和の上に輪をかけて緩和を重ねた」未曽有の緩和状態だけに、想定を超えた変化が起こりかねないという不安感が強まっている。このような不透明な環境下こそ、アクティブファンドマネージャーの腕の見せ所だ。金融緩和によって実力以上に値上がりした株価を回避して、実力通りの評価を得ている株式を選り抜く眼力が問われる局面といえよう。また、運用の現状についての情報発信もしっかり行い、投資家の不安を和らげる対応が求められる。

 コロナ・ショックで株価が下落した2020年3月を底にした株価の値上がりは異例のスピードだった。たとえば、先進国の株価指数である「MSCIワールド(配当込み、円ベース)」は、2021年3月末現在の過去10年の平均年率トータルリターン13.67%に対し、1年間のトータルリターンは55.57%に達した。平年の4倍もの上昇率を示したのだから、そのスピード感は凄まじいものだった。そして、この株価急上昇の背景にあったのが、日米欧をはじめとした各国の中央銀行による足並みを揃えた金融緩和だった。

 たとえば、米国の中央銀行にあたるFRBは、2020年3月に政策金利をゼロ%に引き下げるとともに、米国債などを買い入れて市場に資金を供給する量的緩和を行って保有資産を4兆ドル程度から、2倍近い約7兆9000億ドルに膨らませた。加えて、米政権は20年3月に1人当たり1200ドル、同年12月に600ドル、そして、21年になって1人あたり最大1400ドルの「現金給付」を行い、文字通り「お金をばらまいた」。似たようなことは、日本でも欧州でも規模の大小はあっても実施され、かつてない大盤振る舞いで市場にマネーが大量に投じられた。株価をはじめ、ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)、貴金属など様々な流動資産が大きく値上がりした。これら値上がりした資産の中には、溢れるほどのマネーの流入によって実力以上の価格がついてしまったものも少なくないだろう。

 これまで、水道の蛇口を目いっぱいに開いて、どんどん水量を増して供給を続けたマネーの流れを絞り始める「テーパリング」が実施されると、当然、マネーの流入によって支えられてきた価格は崩れ始める。アメリカのインフレ率が異様に高い数字になったりすると、アメリカの株価がストンと下げてしまうのは、いよいよ「テーパリングの実施が迫った」、「ジャブジャブに溢れているマネーが引き揚げられる」という考えが強まるためだ。

 ただ、「100年に1度の経済危機」といわれた2008年の「リーマン・ショック」の時にも、今回同様に世界各国の中央銀行が足並み揃えて金融緩和を実施し、市場に大量の資金を流し込む量的緩和を実施した。そして、いち早く、リーマン・ショックの痛手から抜け出したアメリカは、「テーパリング」、「金利引き上げ」、「資産規模の縮小」という金融正常化に向けた対応を実施したことがある。

 米国の金融正常化に向けた動きは、当然、株価の暴落など経済的なインパクトが大きく出ないように慎重に進められたこともあって、「テーパリング」によって株価が大きく下落したというようなことは起こらなかった。2017年10月に、いよいよ中央銀行の膨れ上がった資産規模を縮小する作業が始まった時から、新興国株式のパフォーマンスがやや下落基調となったが、先進国株式が横ばいで、米国株式は緩やかな上昇を続けることができた。

 市場に流通する資金が徐々に少なくなっていくため、「選別投資」が起こることは容易に考えられる。2017年〜18年にかけて「米国株式が買われ、新興国株式が売られる」という対比ができたのは、米国の強い企業が選ばれ、基盤の弱い新興国の企業が選択されなかったというような動きが少なからず起きたためだろう。ただ、新興国全体は値下がりするような市場であっても、個々のファンドのパフォーマンスの中には、新興国株式を投資対象にしていても米国株ファンドと変わらないような優れた成績を残したファンドもある。

 資金縮小が続いている最中の2018年12月末現在では、過去1年間のトータルリターンでは、米国S&P500や日経平均株価などの株価指数がマイナス成長となる中、個別ファンドのトータルリターンランキングを見ると、上位には「ノーロード 明治安田 J−REITアクティブ」、「DIAM ストラテジックJ−REITファンド」など国内REITファンドが年12%程度のパフォーマンスで好成績を残し、J−REITインデックスファンドは年10%程度のパフォーマンスだった。総じて株式ファンドのパフォーマンスが厳しい1年だったが、2019年、2020年とその後は株式ファンドのパフォーマンスが向上する市場に変わっていく。

 このように振り返ってみると、「テーパリング」を過度に恐れる必要はなさそうだ。むしろ、「金融緩和が逆転する」と恐れて、せっかく始めた投資を中断・中止することが、かえってリスクになるかもしれない。実際に、「テーパリング」など金融正常化に向けた動きがあっても、世界の株価の上昇は中長期的には継続した。もっとも、リスク商品であれば何でもよいというわけではない。投資対象を見極めるという作業は、常に忘れてはならないが、「テーパリング」という言葉に右往左往させられることなく、長期の資産形成をめざして、長期投資を継続したい。(グラフは、米国の金融政策と世界株式のパフォーマンスの推移)