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ファンドニュース

株価の大きな変動時にこそ噛みしめたい、年金運用のGPIFの長期の運用成績

2021/07/20 18:27

 東京オリンピック・パラリンピックの開催を控え、いわゆるコロナ変異株の猛威が嫌気されて世界の株価が大きな下落局面を迎えている。4度目の緊急事態宣言を発出し、オリンピックも無観客で開催せざるを得ない日本は、1週間で日経平均株価が1000円超、4.5%超の下落相場となった。わずかな期間で、株価がドスンと下げると、「どこまで下げるのか?」と不安が募ってしまうところだが、結果的に、長期で投資を継続した方が良い結果に結びついていることが多い。日本の公的年金の運用を行っているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用は、長期投資の手本ともいわれるので、その運用成績を振り返って運用の基本姿勢を確認しておきたい。

 2020年度(20年4月〜21年3月)のGPIFの運用収益は37.8兆円、収益率は25.15%という、2001年度に市場運用を開始して以来の最高を記録する歴史的な好成績になった。一般の新聞報道などでは、GPIFの運用が不調な時を取り上げて「年金が破たんする」などとセンセーショナルな見出しをつけるが、GPIFの運用は、「目標とする運用収益を最も低いリスクで実現する」という極めて保守的な運用を信条にしている。厚生労働大臣から示された現在の中期的な目標運用収益は「年率で賃金上昇率に対してプラス1.7%」であり、これを実現するために、国内債券25%、国内株式25%、外国債券25%、外国株式25%という基本ポートフォリオで運用している。

 この基本ポートフォリオを採用したのは2020年4月からだが、2014年10月以来、債券50%(国内35%、外国15%)と株式50%(国内25%、外国25%)の基本ポートフォリオで運用を続けている。2014年度以降の運用成績は、14年度が収益率12.27%、15年度はマイナス3.81%、16年度は5.86%、17年度は6.9%、18年度が1.52%、19年度がマイナス5.2%だった。19年度末にあたる20年3月末がコロナショックの底値であり、20年度の運用成績はコロナショック後の株価の戻りの恩恵を強く受けた結果になっている。

 長期運用でポイントになるのは、コロナショックのような大きな下落に見舞われた時の対処の仕方にある。GPIFのように巨額の運用資産を運用し、監視も厳しい運用組織にあっては、今日決めたことを明日に覆すといった短期的な運用方針の転換はできないため、予想外の市況変動があった場合でも、淡々と配分比率変更などを行う。このような目の前の変化に振り回されないことが、組織的に運用する上での強みにもなっている。実際に、自分で配分方針等を決められる個人の立場になると、コロナショック時のように日経平均株価が2カ月間で約30%も下落するような急落を目の当たりにして冷静ではいられないだろう。リーマンショック時のように40%を超えるような下落になる可能性も考えるだろうし、数年かけて蓄えた投資収益を一気に吐き出してしまったようになって、「このまま投資を続けるべきなのか」について悩む人も少なくなかったと思う。

 しかし、もし、20年3月末の時点で投資を止めてしまったらどうなっていただろうか。その後の株価上昇による収益機会を失ってしまったことになる。GPIFは運用の継続が前提になっているので、運用を止めることはあり得ないのだが、もし20年3月末で運用を止めていたら、37.8兆円という運用収益は入らなかったことになる。GPIFは20年間にわたって運用を続けているが、その累積の運用収益が95.3兆円であり、その40%に当たる金額を、わずか1年間で稼ぎ出しているのだ。当然ながら、大きな下落の後に、大きな上昇がある。ただし、その下落の底を予知することは誰にもできないことなのだ。下落後の上昇を手に入れたい場合は、下落に最後まで付き合って、投資を止めずに継続するしか方法がないといえる。

 GPIFは20年にわたって運用を継続し、この20年間を均すと年率3.61%の運用実績を残している。直近10年間(2011〜2020年度)に限ると年率6.07%という高い収益率になる。2011年度からの運用は、日本では2012年12月に始まった第二次安倍政権によるアベノミクス相場が株価を押し上げて、12年度から14年度までは3期連続で2ケタ前後の高い運用収益率を残した期間を含んでいるが、2014年10月に株式での運用比率を大幅に高めたことの効果も大きい。年金運用が政争の道具に使われる時には、「国民の年金を株式に投資して危険にさらすなどとんでもないことだ」という意見が必ず出てくるが、株式を組み入れるかどうかの判断は、実際の運用成績を客観的に評価することが大事だろう。

 GPIFの運用に見られるように、株式にも債券にも幅広く分散投資した運用(これを公募投信に置き換えると主要なバランスファンドの運用になる)は、市場の上下動に影響されて時にマイナスのリターンになることもあるが、10年、20年という長期の運用期間でみれば、年率3%を超える運用収益を獲得することができている。目の前の株価の変動率が大きくなっている時には、長期の目線で運用を振り返って冷静さを取り戻したい。ゼロ金利が続いている今、資産形成のために株式を組み入れた投信を購入して保有していることは、決して間違いとはいえない。長期に成長する資産に投資をし、投資をし続けることに努めたい。(図版は、GPIFの市場運用開始以来の年度別の運用収益と収益率、基本ポートフォリオの推移)