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ファンドニュース

進化するESG投資、欧州で登場した「第9条」「ダーク・グリーン」の区分も意識

2021/07/27 14:36

 「第9条ファンド」や「ダーク・グリーン」という言い方が、これからESG(環境・社会・企業統治)を話題にする時には当たり前に使われるようになるかもしれない。これは、欧州で今年から始まったSFDR(Sustainable Finance Disclosure Regulation)という情報開示基準で定められた金融商品区分を指す。欧州を中心に、余裕資金がESGファンドに大きく流れ込む中で、「グリーン・ウォッシング」(似非環境ファンド)が多く出てきたことへの対応として、従来よりも厳しい基準を設けた。日本国内でもESGファンドへの資金流入は拡大傾向にあり、それぞれのファンドがESGについて、どの程度の配慮を行っているのかが問われるようになりそうだ。

 SFDRにおける金融商品分類で「第9条」とは「サステナブルな投資目的を持つ商品」とされ、インパクト投資など社会的な目的に寄与する経済活動への投資などを行う商品が分類される。ESGに最も深く関与している商品群といえる。また、「第8条」は「環境や社会の特性を促進する商品」とされ、ESGの評価項目を銘柄選択の中に加えて投資先の投資判断をするESGインテグレーションなどを投資プロセスに加えた商品になる。そして、この2つの分類に相当しない一般的な金融商品を「第6条」に分類している。第6条に分類された商品は、一般的な金融商品でESGファンドではない。

 そして、サステナブルな社会の実現への貢献度をイメージして、「第8条」に分類される商品を「ライト・グリーン」(うす緑)と呼び、「第9条」の分類商品を「ダーク・グリーン」(深緑)と通称している。

 このような商品区分を信頼できる機関が仕分けして区分けするようになると、投資家にとっては、投資先を判断する上での目安として有効だ。また、「第8条」に区分されるESGファンドについては、いわゆる「ESGインテグレーション」について、外部のESG評価機関から評価情報を購入し、それをポイント化して財務評価などのポイントに加えることで総合的に企業を評価する手法が多いように見受けられる。この場合は、「銘柄評価にESG要素を加えている」という事実に相違はないのだが、「(経営陣との対話等を通じて)投資先企業の行動をESGに配慮するよう促す」という効果はほとんどないといえ、「第8条」の区分では現実的な効果を見極めるところに限界がある。その点、「第9条」に区分される商品は、社会的な効果について数値化して発表するところまで求められているため、より明確に「投資によって持続的な社会の発展に寄与する」というESG投資の目的に適う投資が可能になる。それだけに、「第9条ファンド」や「ダーク・グリーン・ファンド」への投資ニーズは高まろう。

 一方で、欧州の運用会社を中心に、ESGの調査機能を拡充する動きが目立っている。ESG調査関連の陣容を拡大する他、有力な調査機関と資本提携をして調査機能を拡張している。たとえば、HSBCアセットマネジメントは7月1日、ESGならびにダイバーシティ&インクルージョン(多様性と受容性)を専門分野とする米国の投資コンサルタント会社のラディアントESG(Radiant ESG)に出資することを発表。ラディアントESGは、HSBCアセットの支援の下で、「ラディアントESGグローバル・インベスターズ」に社名変更し、ESGファンドを提供していくという。また、シュローダーは7月7日、世界の自然資本を評価するナチュラル・キャピタル・リサーチ(NCR)に投資し、NCRが行うオンライン・プラットフォームの開発を加速すると発表した。NCRは、ESG、生物多様性、炭素排出量ネットゼロ戦略の発展に資する科学的に精度の高いサービスを提供している。

 ESG調査機関への投資は、すぐに運用会社の運用力を高めることにはつながらないが、最先端の調査機関との関係を強化することで、運用会社自身のESG関連調査力を高める効果が期待できる。ESG投資については、単に「環境にやさしい」「社会と融合している」というイメージではなく、企業活動がCO2削減や貧困克服などに対して、どの程度の効果があったのか、検証可能な数値を明らかにすることが求められるようになっている。これらを運用プロセスに組み入れ、かつ、運用報告できるようにするためには、ESG調査にも一段と専門的な知識やノウハウが必要になっている。

 従来の市場調査や企業調査に加えて、新たに、ESGの専門部隊を抱え、それぞれの分野において専門性を一段と磨いていくことは、運用会社にとって経営上の負担が大きい。しかし、投資家のニーズが明確にESGを志向していることから、ESG分野での調査力を磨かざるを得ないのが現状だ。日本の運用会社は、欧米と比べると規模の点で劣後しているため資本力を活かした動きには限界がある。投資家に対して自社のESG対応をどのようにして説明していくのかということは、直面する課題の1つといえよう。(イメージ写真提供:123RF)