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ファンドニュース

毎月1万円積立を20年間で800万円、MSCIコクサイを超えたファンド36本

2021/08/20 19:00

 資産形成手段として投資信託を使った「積立投資」が推奨されているが、悲しいかな、これまでに投信積立を20年、30年と続けた人はほとんど存在せず、その積立体験談を聞くことができない。現実問題として、国内の公募投信(確定拠出年金・ファンドラップ専用除く、ETF除く)で20年以上の運用実績があるファンドそのものが338本と限られる。そこで、現存するファンドや株価指数を使って「毎月1万円の20年間の積立投資」をシミュレーションした。その結果、代表的な株価指数である「MSCIコクサイ・インデックス(配当込み、円ベース)」を使った積立投資では、毎月1万円で20年間の積立を行うと投資評価額が約800万円になる。20年以上の運用期間がある338本の中で、MSCIコクサイを上回るパフォーマンスを残しているのは36本だった。
 
 MSCIコクサイ・インデックスは、日本を除く先進国22カ国に上場する大・中型株を構成銘柄としている代表的な株価指数だ。外国株式投資の運用成績を測る際のベンチマークとして使われるケースも多く、長く日本の機関投資家の間で使われている株価指数といえる。そこで、この指数に連動するインデックスファンドを使って、毎月1万円の積立投資を行ったと仮定して、「MSCIコクサイ・インデックス(配当込み、円ベース)」に2001年8月末から毎月月末に1万円を20年間の積立投資結果を計算した。その結果得られたのが、20年間で積み立てた元本240万円に対し、積立投資の評価額は約796万円という結果だった。約3.3倍に資産が増えたことになる。

 世界の株式を対象とした株価指数には新興国も投資対象に加えた「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)」もある。公的年金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、外国株式のベンチマークとして「MSCI ACWI(除く日本、配当込み、円ベース)」を採用しているため、昨今の機関投資家は、「MSCI ACWI(除く日本、配当込み、円ベース)」を主に利用しているのかもしれない。しかし、実際のパフォーマンスと比較すると、「MSCIコクサイ(配当込み、円ベース)」と「MSCI ACWI(除く日本、配当込み、円ベース)」の間で、際立った差はない。ともに、時価総額加重平均で算出される指数であるため、主要な大型株の動きが価格変動に与える影響が大きいこと、かつ、先進国の大企業は新興国でも積極的にビジネスを展開しており、新興国経済の成長も先進国の大型企業は享受しているため、「先進国だけ」と「新興国も含めた先進国」の株価指数の間に大きな差異が出てこないと考えられる。

 さて、20年間の「MSCIコクサイ・インデックス(配当込み、円ベース)」のトータルリターンは339.61%だった。この水準を基準として、2021年7月末現在で存在する運用期間20年以上の公募投信338本について、21年7月末から過去20年間のトータルリターン(信託報酬等のコスト控除後)を調べた。そうすると、トップは「アジア製造業ファンド」で958.61%、以下、「JPM ザ・ジャパン」(919.84%)、「フィデリティ・アジア株・ファンド」(715.57%)、「日本新興株オープン」(704.70%)が続いた。「MSCIコクサイ・インデックス(配当込み、円ベース)」のパフォーマンスを超えているのは、338本の10.65%にあたる36本だった。36本は全て追加型株式投信だ。

 投資信託協会の統計データによると、2001年8月末現在の公募株式投信の本数は3606本。うち、追加型株式投信は732本だ。20年前に存在した公募追加型株式投信の中で、「MSCIコクサイ・インデックス」を上回るパフォーマンスをあげられたのは4.92%という5%にも満たない少数だった。それ以外のファンドは、既に償還(運用を終了)されて存在していないか、「MSCIコクサイ・インデックス」を下回る運用成績に止まったということになる。20本に1本という確率で、運用成績の優れたファンドを選び抜くというのは簡単ではない。

 皆様は、「20年間で投資元本が3.3倍に増えた」という「MSCIコクサイ・インデックス」のパフォーマンスの水準を、どのように受け止めるだろうか? 当然、この間に定期預金等で積立を行っていても元本はほとんど増えない。20年間を積み立てて240万円がつくれたというのが関の山だ。投信で積み立てた場合は796万円になったということは、かなり大きな運用成果といえるだろう。

 一方、20年間のトータルリターンが「MSCIコクサイ」を大きく超えたファンド群で、同様に積立投資を行った結果をみると、「アジア製造業ファンド」が約801万円、「JPM ザ・ジャパン」は約903万円、「フィデリティ・アジア株・ファンド」が約841万円、「日本新興株オープン」が約1213万円だった。積立投資については、積立期間も株価が描く軌跡がパフォーマンスを左右する。アジア株に投資する「アジア製造業ファンド」や「フィデリティ・アジア株・ファンド」より、国内株を対象とした「JPM ザ・ジャパン」や「日本新興株オープン」の方が、積立結果が良かったのは、この20年間の株価の推移の差による。アジア株は、前半に大きな山があるが、国内株は前半に弱い相場が続いて、後半になって徐々に値上がりをしてきた。「MSCIコクサイインデックス」の積立投資パフォーマンスがアジア株のアクティブファンドのパフォーマンスとそん色がないのは、国内株式同様に前半が悪く、後半に盛り返した株価推移の軌跡による効果が大きい。

 このようにパフォーマンスの実態を調べていくと、積立投資の投資対象に何を選べば良いのかということについて、明確な傾向を示すことは難しい。積立期間において、最高のパフォーマンスを挙げる見込みがあるファンドが積立投資の対象としてベストというわけではない。大事なことは、積立期間の最終段階で、徐々に値上がりする資産を対象とした方が良いということだが、これを事前に予測することは不可能といえる。

 ただ、はっきり言えるのは、預貯金で積立を行うより、投資信託を使った積立を行った方が、積立ての結果は良い成績になったということだ。実際に、20年間の運用実績がある338本のファンドの中で、20年間のトータルリターンがマイナスだったファンドは4本しかない。1本はドルマネーファンドで、1本は、「リバース型(株価指数の動きと真逆の動きをする)」、そして、2本はヘッジファンドだ。リバース型やヘッジファンドのように複雑な仕組みを備えたファンドでない限り、どのファンドを選んでもプラスのリターンで終えている。しかし、多くのファンドは、20年間の間に償還されているために、償還のおそれが少ない償還期限までの期間が長い、あるいは、償還期限のないファンドなどを選ぶことは重要といえる。

 最後に、この20年間において、「MSCIコクサイ・インデックス」に連動するインデックスファンドの成績について触れておきたい。インデックスそのもののトータルリターンは339.61%だったが、実際に投資が可能なインデっクスファンドのトータルリターンは、245%程度にとどまる。この差は手数料だ。今でこそ、「MSCIコクサイ・インデックス」に連動するインデックスファンドの信託報酬は、年0.1%台に低下しているが、20年前であれば0.8%を超えるような手数料が当たり前だった。0.1%台の信託報酬率のファンドが登場してから10年足らずの期間しかたっていない。その意味では、日本において積立投資の基礎がようやくでき始めたといえるのかもしれない。是非これからは、投資信託を活用した資産形成=積立投信の活用を検討していただきたい。(グラフは、「MSCIコクサイ・インデックス」を使った20年間の積立投資のシミュレーション結果)