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ファンドニュース

ティー・ロウ・プライスの米国バリュー株式運用戦略を採用したファンドが日本初上陸、ファンド・マネージャーに投資戦略を聞く

2021/08/23 11:06

 ティー・ロウ・プライス・ジャパンは、同社のバリュー株(割安株)ファンドの旗艦ともいえる「ティー・ロウ・プライス 米国割安優良株式ファンド」を9月7日に新規設定する。同ファンドはティー・ロウ・プライスとして日本で4本目となる公募投信だ。米国では、過去15年にわたって続いてきた「グロース株(成長株)」優位の市場が、「バリュー株」に転換しつつあるとの見方も台頭している。バリュー株投資戦略の中でも、他のファンドに勝るパフォーマンスを長期にわたって実現してきた同ファンドに対する米国での評価は高い。同ファンドの運用責任者であるマーク・フィン氏(写真)に、同ファンドの運用戦略について聞いた。
 
 ――新しく設定されるファンドの運用戦略は1994年9月に設定され、すでに27年近い歴史があります。ファンドは設定来、米国のバリュー株式指数を上回る成績を残していますが、フィンさんが運用責任者に就任された2009年12月以降に、ファンドのパフォーマンスが一段と良くなっています。運用で特に意識していることは何ですか?

 私自身は優良株に対して強いバイアスを持っています。会社のブランド自体は強く、キャッシュフローの創出力も強いけれども、問題点が指摘されて論争が起こっているような会社を常に探しています。その論争を分析し、それが対応可能なものかを検討します。対応可能であれば、良いファンダメンタルズに支えられている企業を割安な価格で投資できることになります。ハイクオリティな銘柄にフォーカスしていることが、結果的に良いパフォーマンスにつながっています。

 また、ハイクオリティ銘柄を選好している結果、割安な株価にありながら長期にわたって株価が上昇しない「バリュートラップ(バリュー投資の罠)」に陥ることも避けることが出来ています。

 クオリティは、例えば強いブランドを有しているかが1つの条件です。また、バランスシートが強い、フリーキャッシュフローを生み出す強い力がある、それから、経営チームがしっかりしているなど、定性的なことを見ています。特定の条件があるわけではなく、総合的に判断しています。また、バリューについては、過去と比べてどうか、同業他社やマーケットと比較して割安感があるかということから判断し、このクオリティとバリューのバランスを取るようにしています。

 ――バリュー株式投資の特徴について教えてください。例えば、米国籍の代表ファンドで投資しているマイクロソフトやアルファベットは、貴社が運用するグロース株ファンドにも組入上位に入っています。なぜ、投資スタイルが違うにも関わらず、同じ銘柄に投資するということが起きるのでしょうか?

 「バリュー株投資」は、企業の「現在の価値」に焦点を当て、「グロース株投資」は、企業の「将来の成長」に重点を置く投資と考えると分かりやすいと思います。「バリュー株投資」は、何らかの理由があって割安な株価で取引されているため、グロース株と比較して株価が大きく下落するリスクが低いといえます。

 株式市場では景気や金利のサイクルや金融・財政政策の変化等によって市場のけん引役が、「グロース株」と「バリュー株」の間で移り変わる傾向があります。ティー・ロウ・プライスは、創業者が「成長株投資の祖」といわれ、グロース株投資で評価された会社ですが、会社が設立されて間もなくグロース株を補完する存在としてのバリュー株の重要性に気付き、最初のバリュー株ファンドを1985年に立ち上げました。私たちはグロース株とバリュー株の双方への投資が投資家の皆様の資産全体を強化するために必要だと考えています。

 ご質問で挙げられたマイクロソフトについては、私が2009年に運用責任者となる以前から代表ファンドで保有し続けています。当時は「Windows10」が出る前で、株価は20ドル程度で低迷していました。Windows10の発売を控え、パソコンの買い替え需要をもたらすかどうかで議論が分かれていました。そうした中、アナリストからAzure(クラウド事業)がマイクロソフトの中にあまり注目されず存在しているとの報告を受け、それが追加的な理由となって保有を継続しました。マイクロソフトの株価は290ドルを超えましたが、他のソフトウエア会社と比較して未だに割安であると考えています。

 アルファベットは、プライバシーや検索市場を独占していると問題視され、株価が1000ドル台で低迷していた時に投資を始めました。分割すべきだとの議論もあり、投資家が同社の株価上昇について懸念をしていた時でした。その当時は、アルファベットはバリュー株式インデックスの構成銘柄には入っていませんでしたが、現在では採用されています。株価は2700ドルを超えていますが、通信関連分野には伝統的なテレコム会社が多数存在し、それら会社と比較して、アルファベットは依然として割安だと考えています。

 一方、当社の典型的なグロース株型ファンドでは「金融」は少ないですし、「公共事業」、「素材」などもほとんど保有していません。グロース型と私が運用するバリュー型のファンドの間で、一部重複している銘柄はありますが、バリュー型ファンドでは金融セクター、素材セクターをかなり多く保有するなど、グロース株型ファンドでは投資しないような企業が多く含まれます。これが、グロース株型ファンドに投資している人がバリュー株型ファンドにも投資するメリットの1つです。

 ――売買回転率が2020年は114.6%と比較的高いように感じます。銘柄を売買する際のきっかけは?

 2020年の売買回転率は、エネルギー関連と金融関連銘柄の売買が多かったことがあげられます。エネルギーについては、脱炭素化、代替エネルギー化が進んでおり、エネルギー需要が減っていく方向にあります。新エネルギーは技術革新によって、より効率が良くなり、コストも下がっていって既存のエネルギーを代替するでしょう。ですから、一部のエネルギー関連銘柄を手放すことにしました。また、金融も、景気の不透明性が高まった時期にかなり売却しましたが、2020年春に割安感が強くなったので追加投資しました。

 このように市場環境の変化などに対応し、リスクを回避するための行動、あるいは、リターンを最大化するための逆張り的な買い出動など、躊躇せず柔軟に動くようにしています。

 もちろん、基本的な投資態度は、質の高いバリュー株を探して割安な水準で購入することです。しかし、今のマーケット、それから、世界には、破壊的な変化が非常に多く存在する環境ですので、投資期間は過去に比べると短くなる傾向にあります。

 投資するに値しないところには投資しないことが、ポートフォリオの特徴になっています。米国籍の代表ファンドでは、エネルギー関連銘柄は、長期的に見てもリスクが増大すると考えて多くは保有していません。。これは公共事業などと比較してあまりにも割高だからです。投資をしないセクターには2つの理由があります。一つは質が低い銘柄が多く、長期的なリスクが大きいからであり、もう一つはバリエーションが魅力的ではないからです。

 ――バリュー株の投資機会を判断するときに使っているという3つの視点とは?

 バリュー株の見極めには、通常3つの視点を基に銘柄を選別しています。一つ目は、景気回復局面において業績回復が期待される銘柄です。たとえば、コロナのパンデミックが始まった時にコンテナ会社などが大きく売られました。会社自体は業界再編が進んでキャッシュフローを生み出すことができる強い会社であるにも関わらずです。ここに投資妙味があると考えました。

 2つ目に、個別の問題を抱えていることで、一時的に株価が低迷している優良企業も注目しています。代表的な過去の成功事例がゼネラル・エレクトリック(GE)です。過去の経営者の下では、拙速な買収が目立ち、資本配分も非効率だったため、株価も低迷していました。ところが、2018年に就任したラリー・カルプ最高経営責任者(CEO)の下で事業リストラと財務体質の改善を進めて、劇的な変化が期待されたため投資しました。GEは航空機エンジン、ガスタービン、医療・診断機器などの分野では大変素晴らしいブランドです。経営がうまくいっていなかっただけなのです。

 3つ目に、業界自体が長年うまくいっていない中で、再編等の変化が起こっている業界なども注視しています。例えば、コンテナ業界は、M&Aが数多く行われ、再編や合理化が進んでいます。現在は、パンデミックで業績が大幅に悪化した企業にチャンスがあると思っています。

 ――当面のアメリカの景気の見通しをどのように考えていますか?

 アメリカ経済は、まだ改善が続いていると考えています。デルタ変異株についても、景気回復を一時的に鈍化させる可能性はありますが、医療によって十分に対応できると信じています。そして、景気回復を背景に、FRB(米国の中央銀行にあたる連邦準備制度理事会)はテーパリング(金融量的緩和の縮小)をそれほど遠くない将来に検討し始めるとみています。

 昨年秋からのバリュー株なら何でも上がるといったラリーから今後は選別色が強まっていくと見ています。FRBがテーパリングを開始すると市場の景気見通しが神経質になり、景気変動に敏感なバリュー銘柄は頭が重くなる可能性を見据え、シクリカル銘柄の保有比率を下げるなどの調整を行っています。

 ――この戦略は、アメリカ以外では初めて日本で提供される商品だと聞いています。日本の投資家の方々にメッセージをお願いします。

 日本の投資家の皆様にお伝えしたいのは、このファンドは、「レラティブ・バリュー戦略(相対価値投資戦略)」であるということです。クオリティの高いバリュー戦略として、質の高い企業を割安で購入することを追求しています。また、銘柄選択に非常にフォーカスしたファンドでもあります。

 運用実績として過去1年、3年、5年、10年を見ていただきますと、どの期間をとっても、類似ファンドの運用成績をアウトパフォームしています。その要因のほとんどが銘柄選択によるものでした。ティー・ロウ・プライスの優れたリサーチプラットフォームを活用して、レラティブ・バリューを追求し、優れた銘柄を組み入れたファンドであるとご理解いただきたいと思います。ぜひ、当ファンドを資産運用の一助にご活用ください。