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ファンドニュース

バランス型ファンドの価格安定機能が喪失、採用には個々の運用方針の確認が重要に

2021/09/15 18:06

 「投資の基本は分散すること」といわれる。未来は予測できないから、「株式に100%投資する」ということを避け、株式や債券、リート(不動産投信)などに幅広く投資することが資産を安定させ、長期では良い運用成績に結びつくといわれる。特に、長期投資を意識する確定拠出年金(DC)の運用では分散投資の重要性が強調され、結果的に企業型DCの運用では、分散投資を実践するツールとしての「バランス型ファンド」が運用の中心になっている。DC専用ファンドの運用資産別残高は2021年8月末現在で「バランス」が2.83兆円でトップにあり、第2位の「先進国株式」の2.09兆円や第3位の「国内株式」の1.59兆円を引き離している。果たして、「長期投資はバランス型ファンドで」という、これまでの常識は正しい選択なのだろうか?

 バランス型ファンドとは、1つのファンドに集まった資金を株式や債券、リートなどに分散して投資しているファンドのことだ。モーニングスターは、バランス型ファンドを4つのカテゴリーに分けて管理している。「株式、リートの組入率が25%未満」を「安定」、「株式、リートの組入率が25%以上50%未満」を「安定成長」、「株式、リートの組入率が50%以上75%未満」を「バランス」、「株式、REITの組入率が75%以上」を「成長」と4段階に分けているが、株式とリートといったリスク資産への組入比率が高まるほどに、リスク(価格の変動率)は大きくなっていく。伝統的な資産分散ポートフォリオは、資産の60%を株式に、40%を債券に配分する「60/40戦略」だ。株式の値上がり益を十分に享受しつつ、株価下落時には債券が支えることで安定的に高いリターンが得られる投資手法として利用されてきた。

 この伝統的な「60/40戦略」に相当する「バランス」に属するファンドの値動きを表す「モーニングスターインデックス バランス・バランス型」の過去の推移を、同じ「モーニングスターインデックス」の「日経225連動型」(国内株式)、「国内債券・中長期債」(国内債券)、「MSCIコクサイ(円ベース)連動型」(先進国株式)、「国際債券・グローバル・含む日本(為替ヘッジなし)」(先進国債券)という伝統4資産に相当する4つのモーニングスターインデックスと比較した。2000年1月末を100として、2021年8月末までの21年半の間を振り返ってみると、現在のバランス型ファンドが抱える弱点がはっきりわかる結果になった。

 「現在のバランス型ファンドが抱える弱点」とは、株価が下落する時に同時に下落してしまい、分散投資で期待される安定化機能が喪失してしまっている点だ。現在のバランス型ファンドは、「安定」「安定成長」「バランス」「成長」の別なく、株価が下落する時には同時に下落するという点では変わりない。株式の組入比率の差によって、下落率が変わるだけだ。この下落率の変化は、株価の上昇時における株式ファンドへの追随率の違いにも直結している。すなわち、株式の組み入れ比率が小さい「安定」型は、株価が下落する時の下落率は小さいものの、株価が上昇する時には上昇率も小さくなる。この安定化機能の喪失は、世界的に金利が低下して債券が持っていた利子収入(インカムゲイン)が、ほとんどなくなってしまっていることが大きな要因だと考えられる。

 実際のモーニングスターインデックスで2000年1月以来の「バランス・バランス型」の推移をみると、2000年代初頭の「ITバブル崩壊」によって日米の株価が下げる中で、連動して下落し、21年8月末のボトムまで、2000年1月末の水準から30.59%下落した。この下落率は「MSCIコクサイ連動型」の35.63%とほぼ等しい。この時に、国内株式の「日経225連動型」は59.69%下落したため、この下落率よりも抑えられた結果にはなった。その後、2007年頃までに株価の回復があったが、2008年のリーマンショックで再び大きく下落した。この際に、先進国株式は61.33%、国内株式は57.63%の下落率となったが、「バランス・バランス型」も46.37%と株式の下落率に迫るような大きな下落になっている。

 2000年1月以来の推移をみると、2回の大きな株価下落局面を経験したことによって、「バランス・バランス型」のファンドがスタート地点の水準を回復するのは、2005年11月から2008年2月までの28カ月間を除くと、その後は2013年2月まで待たなければならない。2000年1月に投資を開始して13年間は投資元本をほぼ下回るような状況が続いた事になる。安定成長を求めてバランス型ファンドを購入したはずなのに、13年以上にわたって成長の果実がなかったのだ。このようなことが我慢できるだろうか?

 また、バランス型ファンドのもうひとつの弱点である上昇時の追随率の低さは、2020年3月をボトムにした株価上昇時に明瞭に表れている。この上昇局面にあって先進国株式は、21年8月末までに76.31%、国内株式も56.02%の上昇になったが、「バランス・バランス型」は33.24%の上昇にとどまる。株価が下がる時には、株式と同じように下落するくせに、株価が上昇する時には株価の上昇率に劣後するという状況は、「二兎を追うもの一兎も得ず」という、中途半端な態度がもたらす最悪の結果ではないだろうか。

 世界の金利が急に上昇するようなケースは考えにくい。むしろ、長期にわたって金利が低位に据え置かれる状況が続くというのがメインシナリオとして考えられている。2000年以降に明らかになった「バランス型ファンドの弱点」は、簡単には解消されないと考えた方が良いだろう。

 ただ、今回みたのは、バランス型ファンドの全体的な傾向に過ぎない。たとえば、「バランス・バランス型」に分類されるファンドの中でもパフォーマンスには格差がある。過去10年のトータルリターンでは、トップの「ベトナム・ASEAN・バランスファンド」は年率12.01%の成績で、最下位のファンドの6.18%とは大きな差がある。過去5年でもトップの「新ホリコ・フォーカス・ファンド」は年率20.50%だが、最下位のファンドは1.90%しかない。バランス型ファンドは、資産配分率を固定的に考えるのか、あるいは、配分比率を市場の状況に応じて変動させるのか、また、投資対象資産を何にするのかによって、性格が異なるファンドになる。それぞれの特性を理解して、現在の環境下でも十分に分散投資価値のあるバランス型ファンドになっているのか、よくよく見極めて投資するようにしたい。(グラフは、投資資産別モーニングスターインデックスの2000年1月以来の推移)