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ファンドニュース

確定拠出年金20周年で企業年金に4倍以上の差、運用の長期化で運用商品の選択による格差が拡大

2021/11/09 15:30

 2001年10月に企業型の確定拠出年金制度(DC)の掛金運用が始まってから20年が経過した。運用期間が長期化してきたことで、投資対象による運用評価額の格差が大きくなっている。毎月の掛金は、現在の企業型DC制度の平均掛金(年額16万円)を基に毎月1.3万円として、投資対象別の運用をシミュレーションしてみると、もっとも運用成績が良かったのは、外国株式アクティブファンド「大和住銀DC外国株式ファンド」を使った場合で、元本(313万円)の4.3倍の成績になった。同じ企業年金ながら、運用商品の選択によって年金原資が大きく異なることが明らかだ。

 DCは、それまでの企業年金(確定給付型企業年金)が年金原資の運用を企業側の責任で行っていたことに対し、企業は掛金を拠出するだけとなり、運用は年金の受給者となる従業員が自身で行う仕組みの企業年金だ。米国では1981年に企業年金に「401k」制度が導入されているので、米国に遅れること20年で日本にもDC制度が導入されたことになるが、実際には、確定給付型企業年金の提供が企業にとって財務リスクとして意識されたため、そのリスク回避の手段としてDCの提供が始まったという経緯がある。1989年末をピークにして「バブル崩壊」といわれる国内株価の低迷期を迎え、企業側が運用の責任を負っていた確定給付型の企業年金の運用が大幅に悪化し、従業員に約束していた企業年金の原資を準備するため、年金原資を追加負担する事態に直面したのだ。

 DC制度導入後の企業年金は、確定給付型企業年金では極めて保守的な運用に転換し、DCとの併用や、DCへの一本化などが進み、新たに企業年金を導入する企業では最初からDCだけを提供するという企業が多く現れた。確定給付型企業年金の加入者数は現在約940万人、企業型DC加入者数は約750万人だが、徐々に企業型DCの加入者が増えている。また、2018年10月からは、従業員のiDeCo(個人型確定拠出年金)に企業がマッチング拠出する「iDeCo+(イデコプラス)」の制度も始まった。2021年9月末までに対象従業員数は約2.3万人になり、こちらも徐々に増加している。

 一方、企業型DCの掛金拠出が開始された2001年10月時点でDC専用ファンドは57本だった(現存ファンドに限る。償還されたファンドがある場合は、その分だけ本数は増える)。DC制度には、DC専用ファンド以外のファンドも採用できるが、一般的な公募ファンドよりも運用に関わる報酬(信託報酬)を低く抑えたDC専用ファンドを採用するケースが多い。現存するDC専用ファンドは、国内と先進国の株式、および、債券のインデックスファンドと配分比率固定型のバランスファンド(株式の組入れ比率が、30・50・70%の3段階のバランスファンドが典型)だった。アクティブファンドは少なく、ラインナップにアクティブファンドを加える場合は、公募投信を採用していたようだ。現在までに、DC専用ファンドは499本にまで増えた。

 そこで、この制度発足当時に存在した57本のファンドを使って、毎月月末に一定額の掛金を継続して投資し続けたと仮定して、2021年10月末時点での運用資金評価額をファンドごとに計算した。その結果、もっとも運用成績が良かったのは、日本を除く先進国株式でアクティブ運用する「大和住銀DC外国株式ファンド」だった。現在の企業型DCでの平均掛金月間1.3万円を20年間にわたって毎月末に拠出し続けた場合、21年10月末の評価額は約1365万円になった。この間、ファンドを選ばずに、いわゆる「元本確保型商品(定期預金や利率保証型の保険商品)」を選んだ場合は、利率はゼロ%台であるため、評価額は元本と同じ313万円程度にとどまるため、その差は4.36倍になっている。実は、制度開始から10年間は2008年に起こった「リーマンショック」の影響が残って株式ファンドへの投資は元本を下回る状態だった。そこから後半の10年間で先進国株式ファンドは、急速な値上がりを実現した。

 この成績に対し、先進国株式のインデックスファンドである「ダイワ投信倶楽部外国株式インデックス」を選んだ場合は評価額が約939万円。国内株式のアクティブファンド「年金積立ジャパンオープン(愛称:DCジパング)」は約790万円。国内株式インデックスの日経平均株価に連動する「大同DC 225インデックスファンド」は約772万円だった。国内株式を投資対象に選んだ場合でも2.3倍以上の運用成績になった。一方、先進国債券に投資する「三菱UFJ<DC>海外債券オープン」の場合は約417万円だった。株式に投資した場合と比較すると、運用成績は良いとは言えないが、それでも元本に対しては1.3倍であり、100万円以上の差がある。

 実際に、制度発足当時に「大和住銀DC外国株式ファンド」を採用した企業型DC制度は、それほど多くはなかったと考えられる。その中で、実際に同ファンドを選択し、その後も20年間、継続して同ファンドで積立投資を行った加入者はほとんどいないだろう。制度発足当時から、現在に至るまで、企業型DC加入者の過半数は「元本確保型商品」を選択している。企業型DCで運用商品の選択をしない場合は、自動的に割り当てられる商品が「元本確保型商品」になっているケースも多い。また、ファンドを選択している加入者でも、「外国株式型」を選択しているのは8.3%(20年3月末時点)に過ぎない。「外国株式型」を選択している人の中で、アクティブ型を選んでいるのは23.3%の少数派なので、掛金の全額を外国株式アクティブファンドに投資し続ける人は稀有の存在といえるわけだ。

 このシミュレーションは企業型DCの平均拠出額で行ったが、ここに企業の掛金に従業員が給与天引きで追加拠出するマッチング拠出の平均金額7000円を上乗せして毎月2万円を20年間にわたって投資したと仮定すると(実際にはマッチング拠出の導入は制度発足から10年後)、20年後の評価額は約2100万円になっている(この場合の元本は480万円)。これが実現できれば、「年金2000万円問題」は、もはや問題ではなくなってしまう。大企業の場合は、この企業型DCの他に確定給付型年金、または、退職金制度を併設しているケースもある。企業型DCの運用が好調だった場合の老後の年金原資がいかに豊かなものになるかが想像できると思う。

 これは、企業型DCで株式ファンドを選択した場合にいえることだ。もし、元本確保型商品で運用し、マッチング拠出も行っていなかった場合は、企業型DCで得られる年金原資は20年間加入していたとしても313万円程度にとどまる。いくら大企業で確定給付型企業年金が併設されていたとしても、その合計金額はいかほどのものだろうか。せっかく企業型DC制度があるにもかかわらず、いまだ元本確保型商品で運用している人は、ぜひこの機会に運用商品の見直しを検討することをすすめたい。過ぎ去った時間は取り戻せないが、現在、定期預金で運用されている資金を株式ファンドに切り替えることはすぐにできる。また、来月から元本確保型ではなく株式ファンドで積立投資をスタートすることが可能だ。その決断が、老後の生活を大きく変えるきっかけになるかもしれない。(グラフは確定拠出年金の制度発足以来のファンド別積立投資効果)