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ファンドニュース

投信のコスト比較の新次元、「隠れコスト」も含めた「総経費率」で確認を

2021/11/19 14:09

 投資信託(投信)の積立投資による資産形成が広がる中で、長期の運用コストを低減するため、ノーロード(購入時手数料無料)、かつ、運用手数料が低いインデックスファンドの利用が拡大している。また、インデックスファンドについては、運用コストを引き下げ、0.001%でも低いコストの商品を提供する競争が激化している。業界最低水準の運用コストをめざす「SBI・V」シリーズの旗艦ファンドといえる「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」の運用報告書が11月19日に発行されたが、その報告書で同ファンドの「総経費率」が0.10%と、かつてない低水準になっていることが確認された。投信の運用コストが年率0.1%台に低下したことで、従来は話題にならなかった「その他費用」が「隠れコスト」などと言われて問題視されるようになっている。これからは「隠れコスト」も含めた「総経費率」で運用コストを確認することが重要視されるようになるだろう。

 投信の運用コストとして一般的に意識されるのは「信託報酬」といわれる運用管理費用だ。この費用は、商品パンフレットである「目論見書」に年率%で示されているが、毎日の基準価額の計算時に当日分が控除される仕組みになっており、その投信を保有し続ける限りかかり続ける費用だ。投信ごとに数値として明記されることから、運用コストを比較する上で基準になる数値になっている。これに対して「その他費用・手数料」は、「監査報酬、有価証券売買時の売買委託手数料、先物取引・オプション取引等に要する費用、資産を外国で保管する場合の費用等」などとされているが、この費用は信託報酬と比べると小さく、また、投信が保有する株式や債券の売買委託手数料などは予め確定させることはできないので、目論見書などでは費用を明示していないため「隠れコスト」という言われ方をする場合がある。

 なお、投信に関わるコストで、購入時に販売会社に支払う「購入時手数料」があるが、これは「つみたてNISA」の対象になっている投信は「無料」と決められている。また、一般口座でも積立投信で利用する場合は無料としている販売会社が多い。購入時手数料は、1%〜3%(税抜)で徴収されるケースが多いが、積立投資をする場合は、ノーロード投信を選ぶことが鉄則といえる。運用会社が出している低コストのインデックスファンドシリーズはノーロードが基本になっている。

 そして、目論見書の段階では明示されていない「その他費用」が明らかになるのが、投信の決算ごとに発行される「運用報告書」だ。運用報告書では、その投信を運用するにあたって生じた費用等を1円単位まで情報開示している。

 たとえば、11月19日に公開された「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」の運用報告書では、「1万口あたりの費用明細」(期中の平均基準価額は1万3423円)として、「信託報酬」が9円(0.064%)、「その他費用」が1円(0.011%)で合計10円(0.075%)の費用がかかっていることが明らかになっている。「その他費用」の内訳は、「保管費用」という海外における保管銀行等に支払う有価証券等の保管および資金の送金・資産の移転等に要する費用が1円、そして、開示資料等の作成・印刷費用等がごくわずかにかかっていることまで開示されている。また、同投信は、バンガード社のETF(上場投信)に投資しているが、その投資先のETFの運用管理費用が0.03%であり、当期中の運用・管理にかかった費用の総額を期中の平均受益権口数に平均基準価額(1口当たり)を乗じた数で除した「総経費率(年率)」(原則として募集手数料、売買委託手数料および有価証券取引税を除く)は、0.10%になった。

 同じように、S&P500を対象とした「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」が発表している2021年4月26日決算の運用報告書を見ると、同投信の1万口あたり(期中の平均基準価額は1万2840円)の「信託報酬」は13円(0.098%)、「その他費用」は2円(0.019%)である。同投信は、「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」がバンガード社のETFに投資していることと違って、自らがインデックスに連動するマザーファンドを運用している。このため、「売買委託手数料」が1円(0.007%)かかっている。合計の費用は16円(0.124%)だ。総経費率は0.12%であり、「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」と比較すると、0.02%高いという実績になった。

 「その他費用」は、「保管費用」や「監査報酬」など、運用資産の規模が大きくなるほど相対的に費用負担が小さくなる傾向がある項目もあり、ファンドごとに決算期が違う以上、個々のファンドの総経費率を横並びで比較することは難しい。しかし、「信託報酬」では変わらなくとも「その他費用」も含めた総経費では違いが出てくる場合がある。また、「業界最安値」を標ぼうする競合では、「その他費用」も含めて1万口当たり1円という水準を巡って、運用費用を競うような競争が行われているのも事実だ。

 もちろん、このようなギリギリのコストカット競争を全てのインデックスファンドが行っているわけではないが、より安いコストは、それだけファンド受益者の収益メリットになる。このギリギリの競争の結果として、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は残高が8000億円を超え、「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」は4000億円に迫っている。今後も切磋琢磨して低い運用コストを維持し、投資家への利益還元を続けてほしいところだ。また、このような競争が他の資産クラスのインデックスファンドでも起こってくることが期待される。(図表は、「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」と「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の1万口当たりの費用明細と総経費率)