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新興国ニュース



<新興国eye>ブラジル型民主主義の進化と旧態然とした政治家たち

2015-03-23 18:43:00.0

 3月15日の日曜日、そぼ降る雨の中、ジルマ・ルセフ大統領および労働者党(PT)に対する史上最大規模の抗議デモがブラジル全土で行われた。サンパウロだけでも100万人以上を動員し、全土約160都市で200万人近くが参加したようだ。
 今回のデモの中心地であったサンパウロのパウリスタ大通りのデモに参加したが、確かに1992年のコロル大統領罷免を求めた集会や、13年6月のコンフェデレーションカップの際のデモに比べても、圧倒的に参加者数は多かった。まるで、ワールドカップ決勝でブラジルを応援するように、多くがブラジルセレソン(代表チーム)のユニフォームに身を包み、国旗をまとったり、顔にペインティングをしたりしながら、ブブゼラを大きな音で吹き鳴らして行進し、時に「ジルマ出て行け」「PT出て行け」と声を合わせて叫んでいた。
 これに先んじて2日前に行われた、ペトロブラス(ブラジル国営石油会社)および労働者党を応援する中央統一労組のデモは、参加者をバスで迎えに行き、パウリスタ大通りに約1万5000人が集まった(一説によると1人当たり1500−3000円のアルバイト代と弁当が支給されたらしいが…)。しかし、その効果は日曜日の大規模デモで消し飛んでしまった。独断専横気味のジルマ・ルセフ大統領もさすがにこたえたようで、翌日の記者会見では珍しく、第1期政権における反省ともとれる神妙な発言があった。
 赤ちゃんから80歳、90歳の老人まで一家総出で平和裡に行進をしたデモで、政権に対して暴力ではなく集会と言論を通じて異議を唱え、それを踏まえて政府が政策転換で応えるという、ある意味先進的なブラジル型の民主主義といえるかもしれない。

 一方で、与党は内輪もめを繰り返しており、あまりのひどさに国民も呆れ始めている。日本では労働者党(PT)が政権を担っているように報道されることもあるようだが、実際は約10党近くの連立政権である。しかも、民主運動党(PMDB)の上院・下院合わせた議員数は労働者党と同数であり、日本における自民党と公明党の関係とは大きく異なる。
 それにも関わらず、ジルマ・ルセフ大統領が議会や連立与党に相談もなしに、何でも自分と腹心だけで政策を決めてしまうため、大統領のやり方を快く思わないPMDBが上下院議長のポストを手に入れると、政府の提案にことごとく反対をしたり、自分たちを批判している気に入らない閣僚の罷免を、連立離脱を匂わせて大統領に迫ったりと国民不在もいいところである。
 さらに、ブラジルのソブリン格付が下がるのを防ぐために、財務大臣が必死に緊縮財政を行おうとしている矢先に、議会側は1人当たり約7億円もの議員活動で使う割当金を真っ先に決議し、自らの権益確保に余念がない。

 ペトロブラスの大型贈収賄事件の捜査を行っている連邦検察庁から連邦最高裁に対して、今月初めにそのような上下院議長を含め、議員の1割近い54名もの政治家の捜査開始を求める依頼書が提出されている。また、4月12日に再び反政府のデモが予定されており、それまでに汚職捜査の進展や、ムーディーズなどのソブリン格付下落などが重なれば、さらに大規模なものになり、政権を揺さぶるかもしれない。

【筆者:株式会社クォンタム/輿石信男】
株式会社クォンタムは91年より20年以上、日本とブラジルに関するマーケティングおよびビジネスコンサルティングを手掛ける。市場調査、市場視察のプランニング、フィージビリティスタディ、進出戦略・事業計画の策定から、現地代理店開拓、会社設立、販促活動、工場用地選定、工場建設・立ち上げ支援まで、現地に密着したコンサルテーションには定評がある。11年からはJTB法人東京と組んでブラジルビジネス情報センター(BRABIC)を立ち上げ、ブラジルに関する正確な情報提供とよりきめ細かい進出支援を行なっている。

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提供:モーニングスター社

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