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英・EUのFTA協議は前哨戦の漁業交渉で難航する見通し(上)

2020/02/21 11:54

 英国は1月31日午後11時、1973年のEU加盟以来47年ぶりにEU(欧州連合)から正式離脱した。ジョンソン英首相は首相官邸の外壁にビッグベン(国会議事堂の時計台)と英国連邦のユニオンジャック旗をイメージマッピングで映し出し、EU離脱のカウントダウンを演出した。また、50ペンスの記念硬貨も発行した。一方、英国から独立し、EU残留を主張し続けるスコットランド自治政府のスタージョン首相(スコットランド国民党党首)はツイッターで、「独立国としてEUの中心に戻る」と誓うなど悲喜こもごもの離脱日となった。

 1月23日、EUのフォンデアライエン欧州委員長とジョンソン首相は22日に英議会で成立した英EU離脱協定合意文書にそれぞれ署名。これによって1月31日の英国のEU離脱が確定した。今後、英国とEUは「EUとの将来の関係(自由貿易協定)」の大枠を示す政治宣言案に従って、3月3日からFTA(自由貿易協定)の締結に向けた第2段階協議に入る。

 ただ、FTA交渉開始の前提条件となっている新漁業協定の締結を巡る両者の主張には隔たりが大きい。また、ジョンソン首相が中国通信機器大手ファーウェイ・テクノロジーズ(華為技術)の英国の5G(第5世代移動通信システム)通信網市場への参入を容認したことを受け、英国メディアの論調は「FTA協議は難航する」との見方が大勢となっている。

 EU残留を支持していた英紙タイムズは1月31日付のEU離脱特集で、フォンデアライエン欧州委員長ら3人のEU首脳の連名による寄稿文を掲載した。内容は英国のEU離脱を嘆く一方で、FTAの締結は「人の移動の自由」に始まり、EUルールの合致(適用)を基本とした共通の土俵(貿易ルール)を要求する厳しいものとなっている。

 一方、現政権寄りの報道で知られる英紙デイリー・テレグラフは水面下で進められている漁業交渉に関するスクープ記事を1月24日付で掲載した。それによると、EUは年末までにFTAを締結するためには、7月1日までに漁業交渉で合意する必要があると主張している。

 漁業権をめぐっては、70年にEU共通漁業政策(CFP)が導入されてから英国の海域に他のEU加盟国がアクセス可能になっており、英国は事実上、自国海域の主権を喪失していた。結果、EUの排他的経済水域のうち、英国の水域が半分も占めているにもかかわらず、英国の漁船の漁獲量は全体の25%にとどまっている。英国の漁業従事者数も73年水準の半分の1万1757人にまで減り、漁獲量も73年の100万トンから現在は44万6000トンに激減していた。

 ジョンソン首相はEU離脱後、1年間だけ英国漁業専管水域(12カイリ内)でのEU加盟国による漁獲を認めるとしているが、EU理事会の下部組織である常駐代表者(コレパー)の非公開会議でフランス側が25年間はEU加盟国に全面的な専管水域へのアクセスを認めるよう求めており、早くも厳しい協議の先行きが予想されているという。

 また、同紙は1月23日付で、「オランダのルッテ首相がスイス・ダボスで開かれた世界経済フォーラムで、英テレビ局スカイニュースに対し、年内の英国とEUのFTA合意の確率は五分五分で、クリフエッジ(EU単一市場から即離脱)の可能性があると指摘した」と報じている。

(「中」へ続く)

提供:モーニングスター社