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アナリストの視点(国内株式)

市場の誤解

2008-10-23

 相場の先行きを考える際に、「方向性」と同時に季節習性的な需給の流れを考えるようにしている。もちろん、すべての需給主体の動きを知ることは不可能だから、主だった国内外の機関投資家の動きに注目することになる。月末だと投信設定が多いから「月初の投信買いが増える」といった類のことだ。
 この季節習性的な需給の流れの中で、市場関係者に誤って認識されているものがある。欧米ヘッジファンドの決算だ。しばしば「5月、11月はヘッジファンドの決算月だから、4月や10月には決算対策売りが出やすい」という話がまことしやかに流れる。知人のヘッジファンド・アナリスト(ヘッジファンドの動向を調べるアナリストのことで、ヘッジファンドの運用のために企業動向や経済動向を調査するリサーチ・アナリストとは異なる)によれば、これは「誤り」だ。


 「ヘッジファンドは5月、11月決算」という“誤解”の発信源がどこなのか、不明だが、“誤解”の背景には、一つには会社としての決算、もう一つはファンドとしての決算を混同していることがある。国内投信を例に考えてみれば分かりやすい。例えば、XYZアセットマネジメントの会社としての決算は9月、3月だが、運用している100本のファンドは設定月の関係から、毎月どれかのファンドが決算を迎える。ヘッジファンドの場合も同様だ。会社としての欧米ヘッジファンドの決算月は、5月、11月のものもあるが、必ずしも集中しているわけではない。一方、ファンドとしては国内ファンドと同様に毎月のように決算を迎える。「ヘッジファンドの決算月が5月、11月というのは、売り方の“ためにする”うわさ」(ヘッジファンド・アナリスト)だ。


 ただ、「4月、10月にヘッジファンドの換金売りが出やすい」という経験則はある。顧客の欧米の金融機関や年金、企業の決算は主に6、12月。ヘッジファンドの場合、顧客に対して、「解約する場合、45日前までに解約の通知を行う」という「45日ルール」を採用していることが多い(「30日ルール」を採用しているところもある)。顧客が12月末の決算に間に合わせようとすれば、45日前の10月15日以前に解約の通知を行うことになる。当然、運用サイドのヘッジファンドも解約通知に合わせて、換金売りを行うことになる。4月前半、10月前半にヘッジファンドの換金売りが多いのは、このルールのためだ。4月前半、10月前半に集中するヘッジファンドの換金売りから、いつしか「ヘッジファンドの決算月は5月、11月」という“うそ”がまかり通ることになったというわけだ。


 作為・不作為、意識的・無意識的にかかわらず、“うそ”とまでは言わないが、「市場の誤解」は多い。こうした「市場の誤解」が独り歩きすると、実際の需給そのものに影響を与えてしまう。「ヘッジファンドの5月・11月決算を前にした換金売りが、4月・10月に出るから先回りして売っておこう」「ヘッジファンドの売りが出る4月・10月に、ヘッジファンドとタイミングを合わせてカラ売りしよう」という投資家や運用担当者が出てくることになる。


 今回の「10月暴落」の中では、このヘッジファンドの換金売りが「市場の誤解」によって増幅された可能性が高い。「うそ」や「誤解」も行き過ぎると、「本物」になってしまう……。ここにも相場の持つ「怖さ」が潜んでいる。




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