文字サイズ

  • 小
  • 中
  • 大



アナリストの視点(国内株式)

人民元の弾力化、真の狙いは?

2010-06-28

 6月19日、中国人民銀行は「人民元の為替形成メカニズムをさらに改革し、人民元相場の弾力性を強化する」との声明を発表した。突然の人民元相場の改革は、市場関係者に大きな驚きを与えた。なぜ、中国政府は2008年から為替介入によって続けてきた1ドル=6.83元前後での固定相場を解除する動きに出たのであろうか。

 市場関係者、アナリストなどの見方として最も多かったのは、26日からカナダで開催される20カ国・地域(G20)首脳会議の先手を打って「元安批判をかわそうとしたもの」というものだ。しかし、これは主眼ではない。あれだけ権謀術数にたけた中国が、そんな見え透いたことをするはずもない。
 むしろ、ユーロ圏への輸出が全体の約2割を占める中国にとって、ギリシャの財政危機問題に端を発した急激なユーロ安により、事実上、ドルとの固定相場となっていた元は対ユーロで年初から約15%も元高にフレたことで、中国国内の輸出企業を直撃したことから、「人民元の弾力化を建前に、通貨バスケットの中身を変えることで、ドルとの固定相場を弱め、対ユーロでの人民元安を狙ったもの」との解釈の方が良い読み筋かもしれない。

アクセスランキング(過去1週間)

 しかし、本当の狙いは別のところにあるのではないか。
 中国では、元とドルを固定相場にするために行ってきた「元売りドル買い介入」により人民元が過剰供給となり物価の上昇を招き、インフレ圧力が増大するとともに、不動産バブルが発生している。事実、中国政府は2010年1月に1年7カ月ぶりに預金準備率を0.5%引き上げたのを皮切りに合計3回の預金準備率引き上げを行った。しかし、今年5月の消費者物価指数は3.1%とインフレ懸念を沈静化する効果は得られていない。
 筆者は1月の預金準備率引き上げについて当欄で、「事実上、為替相場が固定されている中国では、(1)為替相場の安定(2)自由な資本移動(3)金融政策の独立性――の三つは鼎立(ていりつ)しない(トリレンマの命題)があり、“マンデル―フレミングの法則”から考えて、金融政策は十分な効果を上げられない」と指摘した。実際に、中国はその後も預金準備率を引き上げるという追加的な金融政策を実施したものの、消費者物価指数は低下せず、金融政策の効果が非常に限定的だったと言わざるを得ない。
 つまり、今回の人民元の弾力化は、ある程度の為替相場の変動を許容することで、金融政策の効果を上げることに真の狙いがあるというのが筆者の見立てだ。もし、この読み筋が当たっているのであれば、中国は遠からず「利上げ」などの金融政策を行ってくるに違いない。

(鈴木 透)


バックナンバー

株式ニュース  一覧

ページの先頭へ戻る