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アナリストの視点(国内株式)

課題残る災害医療

2011-05-23

 東日本大震災のような災害のたびに、その重要性が指摘されるのが「災害医療」。

 1995年の阪神・淡路大震災では、通常の救急医療が受けられれば救命できたとみられる“避けられた災害死”が約500件発生したと推計されている。

 この反省から政府は、災害拠点病院と災害派遣医療チーム(DMAT)の整備を進めてきた。災害拠点病院は、「基幹災害医療センター」と「地域災害医療センター」からなり、災害時には重症傷病者への緊急対応、応急用資器材の貸出、DMATの派遣・受け入れ、患者の広域搬送などを行う。

 DMATは、医師、看護師、業務調整員(救急救命士、薬剤師、放射線技師など)を含む5人で構成される自己完結型医療チーム。災害後48時間以内に被災地に駆けつけ、消防機関などと連携し、傷病の重症度により治療優先度を決めるトリアージや緊急治療などの現場活動、被災地病院の支援、消防ヘリや救急車による後方搬送時の医療支援、広域搬送などを行う。

 東日本大震災では、200チーム以上のDMATが派遣されたが、津波被害が大きかったことで被災者は死亡か軽症という両極端で、加えて原発事故の影響などで、現場活動が制限されたことなどから、外科的救急医療に対するニーズは小さかった。しかし、一方では医療施設の被災やライフラインの断絶、物流のまひによる医薬品不足などで、人工透析や糖尿病などの慢性病疾患の患者対応、要介護者などへの支援といったニーズが増大した。

 こうした災害医療は災害直後だけではなく、その後の避難所生活でも重要性を増している。長期間の避難生活が続くと、持病の悪化や過労で死亡する“震災関連死”の増加が懸念される。阪神・淡路大震災では、約900人が震災関連死したとされ、今回の東日本大震災では震災後1カ月で約300人に震災関連死の疑いがあり、今後、さらに増加が予想されている。

 特に、阪神・淡路大震災では要介護者などの災害関連死が指摘され、その支援体制の不足が明らかになったことで、対策が進められてきた。具体的には各市町村が老人福祉施設などと協定を結び、高齢者や障害者など一般の避難所で生活が困難な被災者のための福祉避難所の整備が図られてきた。しかし、実際には福祉避難所を指定している市町村は2010年3月現在、全国で全体の34%にとどまっている。

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 このように、災害医療は、体制整備はもとより、さまざまな被災者に適応した施設の拡充あるいは、被災者の状況に応じた災害医療用の医薬品・機器の開発・拡充の重要度が増している。

(鈴木 透)


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