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アナリストの視点(国内株式)

TOKYO AIMが厳しい船出、主役が割りを食う羽目に

2011-08-01

 7月15日、TOKYO AIM市場にIPO(新規上場)したメビオファーム<=MBP、4580、医薬品>が散々たる状況に陥っている。初値が形成されたのは上場から5営業日後の22日で、初値は基準値の四分の一以下に相当する286円。華々しく登場するはずだった第1号案件のIPOに何があったのか。

 TOKYO AIMは東証がロンドン証券取引所と共同で、アーリーステージにあるベンチャー企業に対し資金調達の場を提供することを目的に2009年1月に設立した新市場。日本だけにとどまらず、アジア地域のベンチャー企業も誘致する構想を明らかにしていた。対象となる企業が既存の新興市場に上場するものより若いことから、参加は機関投資家などプロ投資家に限り「プロ向け市場」との看板を掲げている。

 市場開設から2年半が経過してやっと登場した第1号案件だが、上場までは茨の道だった。メビオファムは通常のIPO銘柄と同じようにブックビルディングを経て上場するはずだったが、ブックビルディングの終了直前に公募の中止を発表した。表向きの理由は中国の特定企業に対するライセンスアウト契約に合意したため。これが公開価格の決定に及ぼす影響を考慮したという。

 ファイナンス期間中は、価格形成に影響を与える可能性のある契約締結や意思決定を控えるのが株式市場の常識。契約締結を強行した上に、資金需要が大きいはずのバイオベンチャーが、若い企業に資金調達の場を与えるための新市場で資金調達を行わないという、理解不能な状況となった。ブックビルディングで想定以上の不人気で買い手が見つからず、困った末に適当な理由を付けて公募を中止し、それでも上場は強行したことが容易に想像できよう。

 メビオファムは当初から売り出しを行わない予定だったため公募中止で「公開株式数」がゼロになり、既存株主が放出する株式だけが市場に流通する状況となった。結局は既存株の出口戦略のためのIPOであったと言わざるを得ない。

 メビオファムは当初、調達資金の多くを研究開発費に充当する予定だった。会社側では資金調達を中止する際、運転資金は十分にあるとコメントしているが、現預金は2億円弱(前3月期末)しかない。早くIPOの実績を作りたい取引所、上場させることによって手数料収入などを得る主幹事証券、保有株を売却したい株主。それぞれの事情に振り回されて主役のはずの発行体が割を食う羽目になってしまったようだ。

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 メビオファムは上場当日の記者会見で他市場への早期上場を目指す旨のコメントを出していた。今回の資金調達の失敗が今後の経営に大きな影響を与えないことを祈る。中・長期的には取引所にもマイナスの影響は出てこよう。発行体の意向を無視したIPOが行われるような市場へ上場したいベンチャー企業はない。第2号案件の上場は、あったとしてもまた数年後になりそうだ。

(小泉 健太)


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