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アナリストの視点(国内株式)

公募、MBO、自社株買い−低迷相場下での企業行動

2011-09-16

 欧州債務問題への危機感から欧米株安、ユーロ安・円高が進み、東京株式市場も下値模索の展開が続いている。株価を1株純資産で割ったPBR(株価純資産倍率)は東証1部の平均で0.9倍台と“解散価値”以下の水準にまで低下、東証2部に至っては0.6倍台と異常値が出現している。1株純資産は企業が解散したと仮定した場合の株主の取り分に相当。株価がこれ以下に下落している状態が続いている現状は、投資家心理がいかに冷え込んでいるかの象徴ともいえる。

 こうした低迷相場にあって、企業行動が市場の関心を集めている。一つは公募増資の増加。過去1カ月程度を見ても、日本冶金工業<5480>、太平洋セメント<5233>、日本カーバイド工業<4064>などのいわゆるオールドエコノミーの増資発表が相次いだ。もちろん、公募増資による資金調達は株式市場が本来持つ機能であり、何ら非難の対象となることはない。新株発行による需給・希薄化の懸念は、公募増資におのずとついて回る株価の圧迫要因である。

 ただ、ポイントとして押さえたいのは、株価の水準や調達資金の使途だろう。PBR1倍割れ水準での新株発行は、既存の株主からすれば批判の対象となり得る。また、調達資金が成長の源泉となるならともかく、弱った財務体質の改善のみが目的ならマーケットでの評価は得られにくい。今後、季節的にも増資が増える公算があり、この点が銘柄選別の焦点となろう。

 第2の傾向は、企業が株式市場から自主退場を選ぶMBO(経営陣による自社株買収)の増加。7月以降の主だったものでもマスプロ電工<6749、監理>、立飛企業<8821・(2)、監理>と新立川航空機<5996・(2)、監理>、さらにバルス<2738、監理>とユニーク企業の退場表明が続いた。

 上場費用の負担などもあろうが、多くの企業はMBOの理由として、事業の構造改革を掲げる。立飛企と新立川航のように、その保有する経営資源を十分に生かし切れていなかった企業もあろう。多くのケースでは買い付け価格にプレミアムが付いており、MBO発表は株価上昇となるパターンが多い。投資家としてみればMBOによる上場廃止は、銘柄の選択肢が減ることになるが、低迷する市場からの撤退を選択する経営者が増える公算はある。

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 第3は自社株買い。株主還元の一環として、割安に放置された自社株を市場から取得する例が増えてきた。しかし、PBR1倍割れが長期化する日本株は、海外投資家の目からも割安に映るはず。ブランドや技術力のある有力企業は、それこそ海外からのM&A(企業の合併・買収)の候補ともなり得る。外部環境の落ち着きを待って、こうした銘柄を選別する局面とみたい。

(田代 哲哉)


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